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【僕とKさんのエシカルな日常 #2】今ドキの若人が、昭和のノリを欲する循環型社会!?編



最近、オシャレなタンブラーをよく見かけるようになった。
そもそも「タンブラー」という呼び名からしてオシャレだ。
僕の小さい頃は、「水筒」とか「魔法瓶」なんて名前しかなかったのに。
というか「魔法瓶」って、よくよく考えるとすごいネーミング。
魔法の瓶。英語にしたらマジックボトル。
なんか、ワクワク感がすごい。


でも水筒とか魔法瓶って、子どもの頃はワクワクしていたけど、思春期の頃になると、ちょっとどこかで「ダサい」と思ったり。それで社会人になって、またタンブラー(水筒)に戻っていくのが、どうにも不思議な感じ。

「時代が変わった」と言えばそれまでではあるけれど・・・

そういえば、同じフットサルチームの40代の人たちは、「水とかお茶なんて、昔は買うものじゃなかったよなぁ」とゲーム後に、ミネラルウォーターをがぶ飲みしながらよく昔話に花を咲かせている。

「とにかく水道水をがぶ飲みだったよ」
「しかも、ジュースはビンのやつしかなかったし」
「そうそう、ビンをお店に戻すと何十円かもらえるんだよね」
「いやぁ、懐かしいねぇ」

20代の僕からすると、こういう話を聞くと、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」みたいなノスタルジックな世界を想像してしまうのだけど、それも実は、ほんの数十年前のことなんだよなぁ。


「いやぁ、ペットボトルってすごい発明だよ」
そんな40代メンバーの何気ない一言に、ほんの少しだけ、Kさんが困ったような表情をした。

Kさんは、僕がひそかに憧れを抱いている人物だ。

(僕がKさんに興味を抱くきっかけになった話はこちら)


どうしたんだろう?
Kさんの一瞬のリアクションがどうにも気になって、僕は、Kさんの近くにあるゴミ箱にペットボトルを捨てに行きながら声をかけてみた。

「Kさんのタンブラー、オシャレですねー」

そう、何を隠そうKさんは、いつもマイタンブラーを持ち歩いているのだ。

「ありがとう。お気に入りのやつなんだ」

「僕もタンブラーを買おうかなぁ」と何気なく口にすると、

「それがいいと思うよ。ペットボトルも便利だけどね」とKさん。

僕はペットボトルをゴミ箱に入れながら聞いてみた。

「やっぱりペットボトルってダメなんですかね」

「ダメじゃないけど・・・」と
Kさんは少し口ごもりながら続けた。

「そのペットボトルが、またペットボトルにリサイクルされるのって、10%くらいしかないから」

えっ?

僕は思わず、自販機の脇にあるゴミ箱を見つめた。

「ペットボトル」「缶」と分けられている赤い箱。
どことなく、それだけで分別している気になって、僕は、捨てたペットボトルは、またペットボトルになるものだと思い込んでいた

「じゃあ、残りの90%って・・・?」

「プラスチックごみになるんだよね。それを資源として燃料にすることもあるけど、それって燃やした熱をエネルギーにすることだから、ゴミとして燃やすのと同じように、温暖化につながるし・・・」

そう言ってKさんは、遠い目をした。

その日の夜、僕は早速ペットボトルについて調べてみた。
すると、こんなに身近な飲み物なのに、自分が何も知らなかったことに気付かされた。

ペットボトルが、海洋ごみの問題で注目を集めているプラスチックごみの元凶であること。

プラスチックは、自然の中で分解されることなく、半永久的に残ること。

しかも日本は、プラごみの一部を中国などの海外に輸出していて、
その輸出量は世界第3位であること。

つまり、ゴミの処理を海外に押し付けている見方もできてしまう。


しかも中国は現在、プラごみの輸入を禁止していて、今後、世界中に行き場のないプラごみが出てくる可能性があるようだ。

日本のペットボトル回収率は約9割とかなりの高水準だけど、その回収した先を見ていくと、海外に輸出したり、Kさんの言うように、ゴミとして燃やしたり、燃料として燃やしたり。
燃やせば、もちろん地球温暖化に影響を与えてしまう。

僕は急いで、おしゃれなタンブラーをネットでポチッた。

このプラごみ問題を知っているKさんにとって、フットサルのとき、自販機でペットボトルを買いまくる人たちはどう見えていたのだろう。

Kさんの性格からして、自分の理想を他人に押し付けることはないし、「人は人」なんだけど、心のどこかに違和感は感じていると思う。

そんなKさんに、「同志がここにいますよ!」と僕は伝えたかった。
だから次の週のフットサルのとき、オシャレなマイタンブラーをこれみよがしに持っていった。


そしてゲームが終わり、いつもの休憩タイム。
僕はカバンからタンブラーを取り出し、Kさんの見える位置に置いた、つもりだった。

でも、Kさんは僕の想像を超えていた。

「もし良かったら、これどうぞー」

自販機の近くから、Kさんの大きな声が聞こえた。

そこにあったのは、部活や運動会でよく見たアレ。

ウォータージャグ。


麦茶とか、粉ポカリを溶かしたやつを、みんなで飲むアレ。
コックをひねって、冷たーいやつが出てくる、デカ魔法瓶。

「お、いいねー!」

懐かしさに駆られた40代メンバーが、ルンルンな表情で、ウォータージャグに集まっている。


あぁ、なんかこの光景、テレビで見る、稲刈りのひと休みのようだ。
なんか、いいなぁ。


青春時代、グラウンドの片隅にあったウォータージャグは、野暮ったいビジュアルでダサい感じもしていたけれど、今や一周まわってカッコよくさえ見えてくる。

僕は、オシャレなタンブラーをカバンに戻し、みんなと一緒に、冷たーい麦茶を飲んだ。
うまかった。

そして、フットサル場から帰るとき、Kさんは、どことなく恥ずかしかったのか、大きなウォータージャグをそのままではなく、ストールのような布をかぶせて、自転車の前のカゴに置いた。

その姿を見て、40代のメンバーたちが、「E.Tか!」とつっこんだ。


でも、Kさんも、僕も、映画「E.T」を見たことがなく、僕は「昭和か!」と当たり障りのないツッコミを返した。

時代は変わっていく。
だけど、どこかでまた一周するのも、時代なのかもしれない。

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