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シンガポール旅行⑧ 三日目 狂気の山ハウパーヴィラ


 セントーサ島でのマリンアクティビティを十二分に満喫した私と友人は地下鉄で次なる目的地、ハウパーヴィラに辿り着いた。

 ハウパーヴィラとはシンガポールで有名な万能軟骨、タイガーバームの創設社が山一帯に建設したテーマパークであるらしく、驚くべき事に入場料やら何から何まで無料という。連日シンガポールの物価高に喘ぎ、水代だけで困窮している我々にはうってつけのスポットだ。初日からガイドブックを4冊携行し今朝からずっと「腰に針が刺さったみたいに痛い…」と呟き続けている友人には多少酷な山登りだが、ここはもう行くしかない。

 そしてもう先に謝っておくがこの先ハウパーヴィラの内容について説明する文章はろくにない。なにせ山に登って降りるまでの間、私も友人も絶え間なく「なんなんこれ?」と言い続けていたのだ。下山し帰国した現在になってもなお「なんなんこれ?」の気持ちが変わることはなく、自分自身が何も理解できていないので説明することは諦めた。とにかくもう見て、感じてもらうしかないので現地の写真を貼り続けたい。

入り口の山門に書かれているでかい絵。この先に待ち構えるものを予感させる、体育祭の応援幕のようなクオリティ。


同じく山門のでかい絵。
変面を被った人間かと思いきや手は猿としか思えないくらい毛深く見る者を惑わせる。切れ長の目が異様に澄んでいて嫌だ。


山門から入った直後にある波打つコンクリートの山と若干ハリウッド風の看板。
人間の脳みたいな色合い。


コンクリート山横のなんか英雄っぽい像。

 この辺りまで来て気付いたのだが、このハウパーヴィラの像や肖像画は全てがでかい。そして多い。 
 人形はほとんどが等身大〜等身大×2倍ほどの大きさで、それがちょっと栄えた村くらいの人口密度でちょっと栄えた村くらいの量がある。つまりもう村だ。
 一夜にして灰に呑まれたポンペイの街、それを極彩色にしてトンチキにしたもの、それがハウパーヴィラ。高熱の時に見る悪夢、それがハウパーヴィラだ。
 そして由来や解説などはほぼない。たまにあっても中国語である為意味がわからない。
 恐らく大半のキャラクターが桃太郎や一寸法師的な、現地ではわざわざ言うまでもない有名人なのだろうが一見の観光客には何も分かることはなく、風采と表情のみでどんな奴かを判断するしかないのが実情だ。

こいつは戦国BASARAにいた。


ドスケベ和尚とその手下。だが『皆大歓喜』と書かれているので福の神の可能性もある。

 だいたいこの辺りから、私と友人はこの「私達以外誰も歩いていないのでは?」というガラガラテーマパーク、ハウパーヴィラでの楽しみ方を見出した。すばり『この像たちの物語の登場人物になりきり第3の像として写真にうつる』だ。
 ちょうどほとんどの像が等身大以上の大きさであることだし、勝手に像の説話の意味を推測しその説話に出てくる人間の像となり物語を補完する、これこそがこの巨大なテーマパークでの楽しみ方の最適解といえるだろう。というかここにはアトラクションなどは皆無なので、それをする他やることはないのだ。

スポンサーであるはずのタイガーバームのイメージキャラクターと思われる虎たち。悲哀。


石碑の文字は「罪を犯した者は果てしない苦海に落ちたかのようであるが,悔い改めさえすれば陸地を見つけてはい上がることができる」という意味らしいが、既に全員が斬首されている。中国という国の強さを感じる。


『一見大吉』という意味深な文字が書かれた帽子を被るおじさん。
顔立ち的に閻魔の血縁っぽい。


たぶん十殿閻魔的な地獄の門。
牛頭馬頭が門を守っている。


牛頭。顔が怖い。
馬顔。顔が怖い。


門の中に入ると、閻魔と思しき人が判決を下していた。
有罪になったらしく鬼に連行される罪人。
めちゃくちゃ罰を受けてる。近距離で見せられる閻魔のワークライフバランスも悪そう。
この2人の罪人だけはなんでヤギ背負ってんの?と気になり帰国後調べてみると、どうやらこの閻魔は輪廻転生を司るらしく「次はお前みたいなもんはヤギに生まれ変わるんや!」と沙汰を下しているところらしい。正直転生先がヤギなら全然いい。


閻魔殿を出ると、突然始まるイソップ物語みたいな世界。
でかい物語メリーゴーランド。おそらく一つ一つが有名なシーンなのだろう。それにしてもなぜこの色合いに…?
隅の方に佇むジジイの虎。長生きしてほしい。


巣穴の子パンダとそれを守る親パンダ。
顔こんな怖いことある?


どう見ても自由の女神
どう見ても力士


甲羅に入った蟹人間(二刀流)の闘い。
蟹と人間が一体化してるのは初めて見た。
今日イチ気持ち悪いパンツ一丁豚と『海外良縁』の文字。なんか嫌な気持ちになる。


地獄の門を出てからも、メルヘンの中にちょくちょく現れる残酷処刑シーン。
憐れみを誘う坊主の表情と絶対に手を止めずくびり殺しそうな二人の目つき。
これ「人魚」か…?と見る者に人魚の定義を考えさせる人魚群。
芸達者な人魚キッズ。


野生の蟹人間
人魚(貝)
人魚(サザエ)


 本当はもっととんでもない数の人形があるのだが、あまりに写真を貼り続けているとこのnoteを開いた人の通信量を爆裂に圧迫しそうなのと、私の気が狂いそうになってきたのでここらで一旦の紹介を終えたい。

 軽くハウパーヴィラを探索するつもりが、サザエの人魚とチューチュートレインなんかをしていたせいで帰る頃にはすっかり夕方になってしまった。
 今夜の便で帰る私と友人は慌ててこの山を後にし、これにてシンガポール旅行最後の一日は幕を閉じたのだった。

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