星群

本の虫です。三度の飯より本が好き、といっても過言はないくらい活字中毒です。どんな本でも…

星群

本の虫です。三度の飯より本が好き、といっても過言はないくらい活字中毒です。どんな本でも良さを見つけて、読書の面白さを発信できればいいな、と考えています。雑食ですが、極端なホラーやバイオレンスはNGです。

最近の記事

馬のなかで眠る

 生き屏風  著・田辺青蛙  田辺さん、初めて読む作家さんです。〝あおかえる〟って変わった名前だなぁって思ったら、〝せいあ〟って読むそうです。  本作は、第15回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞しています。  まだまだ暑いのでホラー小説でも読もうと思ったのですが、良い意味で裏切られました。まぁ、冒頭の一文が 〝皐月はいつも馬の首の中で眠っている。〟とあって、戸惑いましたけどもね。  あらすじをよく読んでいなかったのですが、村はずれで暮らす妖鬼・皐月が主人公の連作短編集です。

    • 大食い選手の心境

       リバー  著・奥田英朗  !ネタばれあり!  図書館に予約して、約半年待ちました。  頁数640頁あり、夏バテ気味の体調読んだので、思うように読み進められずに久しぶりに読書が苦痛とさえ思うほどでした。  それは、まるで大食い選手が試合の終盤食べることがままならなくなり、苦戦する状況と似ているんじゃないか、なんてふっと思いました。(知らんけど)。  さて、まず本作のあらすじをざっくりと紹介したいと思います。  10年前に渡瀬川河川敷で発生した連続殺人事件。未解決のまま、

      • なんでも屋、疾る!

        藩邸差配役日日控   著・砂原浩太朗  私、歴史が好きです。なので、面白い時代小説に巡り逢えるとテンションが俄然高くなります。  さて、このお話の鍵である『差配役』について、ざっくりいいますと、藩邸の管理を中心に殿の身辺から襖障子の張替え、厨(くりや)のことまで目をくばる要職、いうことになります。わかりやすくいうと、なんでも屋ってことですね。    本書の主人公・里村五郎兵衛は差配役であり、要人探索や不正解明、男女問題や障子の張り替えなど何でもこなします。  この時代、物

        • つまり、ワイルドフラワーって、、、

           ひまわりのことを指すのかと勘違いしてました。栽培されてない花をつける野草のことをいうんですね。  ワイルドフラワーの見えない一年  著・松田青子  雑誌「文藝」に2014から16年にかけて掲載掲載されていたものをまとめられたもので、数行のものから十数頁のものと、多岐に分かれた短編・掌編が50編あります。  その中でも印象深かった3編を紹介したいと思います。   少年という名前のメカ  いわゆる冒険少年たちが去ったあと、それっきり音沙汰なしになったことを嘆きトラウマにな

        馬のなかで眠る

          息子へ

           世界でいちばん透きとおった物語  著・杉井 光 初めて読む作家さんです。読書家の間で流行り出しつつあったので手に取ってみました。電撃小説大賞の銀賞を受賞していて、主にライト文芸レーベルを基盤として活躍してるみたいですね。まず、あらすじをざっくりいいますと、  大御所ミステリ作家の宮内彰吾の婚外子である主人公が、父親が死ぬ間際に執筆していたという『世界でいちばん透きとおった物語』を家族の依頼を受けて探す といった感じの話になっています。予測不能の結末が待つ衝撃の物語って

          息子へ

          夜、蝋燭を灯して。

            化物蝋燭  著・木内 昇 ネタバレあり ①隣の小平次    早桶屋✖️夫婦  長屋に引っ越してきた新婚夫婦の旦那さんが、もうこの世の人ではないと噂が流れてドギマギしましたが、切ない真相でした。  もう一組の熟年夫婦のわだかまりも解決して安心しました。心地の良い読後感です。 ②こおろぎ(虫編に車)橋    薬屋✖️七十七日  終盤、所々の違和感が解けて切ないながらも腑に落ちました。母は強しだな。 ③お柄杓      豆腐屋✖️転生  これも夫婦の話。来世まで心

          夜、蝋燭を灯して。

          夢破れて四畳半あり

           四畳半タイムマシーンブルース   著・森見登美彦                   原案・上田誠 さてさて、まずは、ざっくばらんにこの2人の登場人物を紹介したいと思います。 重要人物 その1 運命の黒い糸で結ばれた!?悪友・小津  野菜嫌いで即席ものばかり食べているから、なんだか月の裏側から来た人のような顔色をしていて甚だ不気味。夜道で会えば、十人中八人が妖怪と間違う。(まぢかっ!?)そして、残りの2人は妖怪なのだそう。(さすが京都やなぁ、おそろし。) 弱者に鞭

          夢破れて四畳半あり

          身を焦がす程の演じることへの情念

           おんなの女房   著・蝉谷めぐみ 〝お師さんのように一生を女として過ごし、誰とも添い遂げない心算〈つもり〉でおりましたが、背に腹は替えられません。〟 〝女形の女房は、その存在を知られてはいけないものだと散々その粗末な耳に言って聞かせたはずですけれど〟 〝俺は女形でいたい〟 〝旦那さまは女形ですから。尋常も女として生きておられます。〟 こんな気持ちで読み終わるなんて、想像もしてなかったです。ただただ切ない。詮無いことですね。だって、彼は役者を辞めてしまえば、きっと生

          身を焦がす程の演じることへの情念

          心霊現象に関わる事は何でもおまかせ下さい。

          やっぱり、夏になると幽霊や怪談話を読まずにはいられませんね。  濱地健三郎の幽たる事件簿   著・有栖川有栖 南新宿のくたびれたビルの2階に小さな事務所を構える、心霊現象が関係した事案のみ扱う、心霊探偵・濱地健三郎シリーズ第二弾となっています。7篇の短編がまとめられています。 《ホームに佇む》 JR有楽町駅が怖いという男性。調べてみると、ある少年がホームに佇んでいる。 もとの場所に帰す為に少年にある物を渡して、その結果駅から出られなくなりかけて半べそを掻きそうになる濱地

          心霊現象に関わる事は何でもおまかせ下さい。

          星に導かれた先に

            空をこえて七星のかなた      著・加納朋子 星にまつわる7つの短編集。甲乙つけ難いが、お気に入りな作品を挙げるとするなら『箱庭に降る場所』と『孤舟よ 星の海を征け』です。『箱庭〜』は、兎に角も副生徒会長が素敵過ぎます。『孤舟〜』SFチックな前半にやや戸惑いがあったけど、反転した後半がただただ切なかった。そして、残り2篇でそれまで見逃してた小さな疑問達が沸々と首をもたげてくる。がっ!しかし!全てが解明されれば、私達は壮大で光煌めく星座を見上げること間違いなしです。あぁ

          星に導かれた先に

          南天だけが知っている

           恋する狐       著・折口真喜子 能や歌舞伎が題材になっている作品等、多彩で不思議な物語をまとめた短編集になっている。 与謝野蕪村が語り部という面白い着眼点。欲をいえば、蕪村の内情を掘り下げた話があれば深みが出てたように思います。 『恋する狐』に出てくる〝悪い夢を見たら南天の木に話せば、難を転じてくれる〟という一文が印象的でした。南天の木が身近にあったら、実践してみたいです。 楽しそうな妖達がかかれている装幀も可愛いです。 ご精読ありがとうございました。

          南天だけが知っている

          空はなぜ青い?雲はなぜ白い?

          博士の長靴    著・瀧羽麻子 天気の研究に生涯をささげた藤巻博士。一家・四世代の歴史と、時代ごとに変化する家族の在り方を綴った連作短編集。 一話目の「一九五八年 立春」がほのぼのと優しい雰囲気で綴られていたので不倫やシングルマザーが出てきて、特に不倫は意外だったけど「時代ごとの家族の在り方」ってことで腑に落ちました。 曽祖父と玄孫が家族を繋ぐ「二〇二二年 立春」が素敵です。 二十四節気の折々に、丁寧に向き合う藤巻家の暮らしぶりが羨ましくなりました。自分なりに、節気の節目

          空はなぜ青い?雲はなぜ白い?

          私の〝卵子〟に価値はあるのだろうか。

          私達人間の卵子って、鮭の卵であるイクラと変わらないじゃないか、という事を今更ながら思い出しました。 『燕は戻ってこない』    著・桐野夏生 〈あらすじ〉 29歳、女性、独身、地方出身者、非正規労働者。 子宮・自由・尊厳を赤の他人に差し出し、東京で『代理母』となった彼女に、失うものなどあるはずがなかった。 エッグドナー、サロゲートマザーなど聞いたことない未知の世界に足を踏み入れようとする、主人公・リキの一挙手一投足に目が離せなくなっていきました。 どんどん多様化する性

          私の〝卵子〟に価値はあるのだろうか。

          〝夕星やな〟

          汝、星のごとく  凪良 ゆう 〝幸も不幸もこの人と一緒に背負うという覚悟〟 〝あんたの中心はあんたやで。どんだけ惚れても自分の城は明け渡したらあかん。〟 愛と呪いと祈りは似ている。 【2023年 本屋大賞受賞作品】〝夕星やな〟瀬戸内の島を舞台に、親に振り回される男女の高校生の物語。きっと、2人にとって、人生で一番苦労した融通の効かない時期であるかもしれないけど、輝いていたのはこの頃だと思う。すれ違って離れていく2人を観ているのは、もどかしくて焦ったくてやきもきした。彼

          〝夕星やな〟