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【書評】ワークで知る子どもの気持ち 『子どもの感情表現ワークブック』

今回ご紹介するのは、法政大学で教授を務める渡辺弥生氏編著
『子どもの感情表現ワークブック』
です。

本書は子どもの『感情』を発達心理学の観点から解説する準備編と、実際にそうした感情を育てるワークやゲームが36例紹介されている実践編に分かれています。


感情を育てるトレーニング


『感情を育てる』と聞くと、どのようなイメージを抱くでしょうか。
感情とは勝手に湧いてくるものであり、育てたり訓練したりするイメージはあまりないかも知れません。
コミュニケーションの難しい子どもの増加や、いじめ、不登校など子どもたちを取り巻く様々な課題の背景にもこうした感情を適切に理解し、表現する力の未発達があるのではないかと言われています。
こうした感情の自分でうまく取り扱うことをトレーニングするプログラムも開発されてきました。
本書の実践編でのカリキュラムでは
①    自分の気持ちに気づく
②    他人の気持ちに気づく
③    気持ちを調整する
④    他人とうまく関わる
を柱とした様々なワークに取り組む中でそのトレーニングができる構成になっています。


実際にやってみた


我が家では、寝る前に絵本の読み聞かせをするルーティンがあるので、その時間を利用し、ワークブックに掲載されているワークをやってみました。
実際に我が家で行ったやりとりをもとに、実践編の内容を紹介したいと思います。

本書で紹介されている1つ目のワークは『いま、どんな気持ち?』
様々な場面の描かれたイラストに対して、イラストの子はどんな顔をしているか一緒に考えながら、自分はそのような時にどんな気持ちになるかを考えます。
そしてそんな時はどのように言うのがいいのかも一緒に考えるという流れ。
ねらいは「自分の気持ちを言葉で表現し、周りに分かってもらうこと」

5歳の娘に尋ねると、
①    朝まだ眠いとき
→「まだ眠いのに起こさないでっていつも思ってる」
 ※確かに彼女の寝起きは超絶悪く、いつも不機嫌。

②    あの子と友達になりたいと思ったとき
→「目の黒いところがね、きょろきょろってなって、ほっぺたがポッてなって、友達になりたいなって思うの」
※友達に話しかけたいけど、どきどきする緊張と戸惑いの身体反応かしら?

③    ママ大好きと思っているとき
→「ママ大好きっていつも思ってるけど、でも言いたくないような気持ち」
 ※素直に大好きって言うのは少し恥ずかしいような感じなのかな?

④    テレビを見たいのにお風呂に入りなさいと言われたとき
→「もっとテレビみたいのに!テレビが面白いからいけないんだってテレビに腹が立つの」
「それで、心臓の形がまるになったりしかくになったり、いろんな形になるの」
※嫌なこと言われたとき、心がぎゅってなるのが、そんな風に感じられるのか。
自分や母に対してではなくテレビに腹が立ってたとは思わなかった。

と話しました。

私はこの娘とのやりとりが本当に面白かったんです。

早くお風呂に入って寝てほしいのに、テレビやタブレットにくぎ付けの子ども。
「早くして!!」と何度も声をかけても上の空の返事でついつい怒ってしまう。
我が家は毎日こんな感じです。
お互い感情的になってしまって、イライラしてなかなか冷静に話は聞けないし、毎日疲れ果ててるのだけど、冷静な時に改めてこうして話すと、そんなこと考えてたんだなぁと知ることができました。
娘の表現も、5歳児ならではというか、大人の私には到底思いつかない表現でありながら、複雑な気持ちを豊かに表現しているなと感じました。

そしていつもお互いぷりぷりして終わっている日常の何気ない気持ちや感情も、言葉にすることでより理解できることが体感として分かりました。

本書を知ったきっかけは著者が講師をされていた障害児療育関連のセミナーを聞く機会があったこと。
発達障害などで自分や相手の感情を考えたり、表現することが苦手なお子さんはもちろん、どんなお子さんとやりとりされても、日頃なかなか振り返ることのできない子どもならではの気持ちを知るきっかけとなる素敵なワークがいっぱい掲載されています。

子どもに限らず、大人も成長の過程で自分の感情に蓋をしたり、世間に適応するために考えないようにする中で、自分の気持ちが分からなくなったりすることもあるかと思います。
改めて自分の心を知り、適切に知覚し、表現していくことの大切さを感じる一書でした。

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