飛行機での目覚めは最悪だった。頭の中がぼんやりとしたままで、けだるさが残っている。浅いリクライニングで長い時間を過ごしたためか、腰も痛い。 ほぼ満席の機内では、…
僕は母親と差し向かいで、自分の名前を書く練習をしていた。 ふだんは食事をならべたり、洗濯物を干したりするくらいしかやってないくせに、今日になって突然、名前の書き…
M. アキラ
2024年5月15日 13:32
飛行機での目覚めは最悪だった。頭の中がぼんやりとしたままで、けだるさが残っている。浅いリクライニングで長い時間を過ごしたためか、腰も痛い。ほぼ満席の機内では、どうしても周囲にいるひとの存在が気になってしまう。眠っている間もうっすらとした私の縄張りの境界に、絶え間なく何かが近づいてくる感じだった。到着前に配られたサンドウィッチを食べたあと、アナウンスの通りに足元の荷物を片付け、座席のリクライ
2024年2月20日 23:53
僕は母親と差し向かいで、自分の名前を書く練習をしていた。ふだんは食事をならべたり、洗濯物を干したりするくらいしかやってないくせに、今日になって突然、名前の書き方を教えると言い出したのだ。「今朝、大ちゃんのお母さんに会ったら、他のお子さんはみんな、小学校に上がるときには自分の名前が書けるって言ってたのよ」「ラジオや時計を分解して遊んでいるくせに、名前も書けないのか、あいつ?」夕食のあと