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ちょっと好きだったお姉さんについて

知り合いに、日本とドイツのハーフのお姉さんがいる。人間としてとても素敵な人で、たとえば私の誕生日に「また一年よく頑張ったね」と言ってくれるような人だ。
小学校の頃にいた、他とはちょっと違う特別な女の子の、将来をみているようである。

生き物が好きで、飄々としていて、優しくて、あまり見目に気を使わないくせに、ボディラインは細くしなやかで何をどうしても美しい。ドイツの人の凛々しい顔立ちが、日本人の丸い顔立ちとうまいこと混ざって、あの独特の美しさがあるのだと思う。

お姉さん個人の話をしよう。
お姉さんは静かなものが好きな人だ。どこか寂しい何かを好む。話によれば、お姉さんのお母さんもそんなものが好きでドイツに越してきたらしいから、遺伝かもしれない。
「じゃあイギリスとか、好きなの」と聞いたら、別に好きではないと言っていた。英語が母国語の人は喋るのが早くて、だからロンドンのギャルは得意ではないとか。それは早い英語が得意ではないんではなくて、ロンドンのギャルが得意ではないだけじゃないか、と言う突っ込みは口の中に留めておいた。

初めて会って、そして別れた後、私はそのお姉さんに一ヶ月ほど囚われ続けていた。
露店でシルバーの懐中時計を選んでもらって買ったのだが、その懐中時計のネジを毎夜毎夜回し続けて。一種の恋だったと思う。お姉さんが「私はね、女の子の方が好き」とか言うからいけない。今となっては純情な乙女心を弄ばれた気分である。

今度の春、お姉さんが会いに来てくれる。けれど、日本に帰ってきて、俗っぽくなった私と会ってほしくないと言う気持ちもある。それなりの期間会っていないお姉さんと会うのが怖い気持ちもある。もう一度、恋をしたらどうしよう、とか。

今、お姉さんは東京に滞在しているらしい。騒々しいあの街は、お姉さんには似合わなさすぎる。
結局のところ、お姉さんには早くこちらにきてほしい。


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