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東京大学 権藤智之研究室

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建築構法を研究する、東京大学権藤智之研究室のnoteマガジンです。 権藤智之研究室のHPはこちら http://gonlab.com/
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記事一覧

ディスカッション 東野唯史×水野太史  (司会:河野直)

東野唯史氏・水野太史氏の2名をゲストとして迎えた本レクチャーは全国各地から約60名の参加者が集まった。参加者にはレクチャーを聞きながら、2者の取り組みに「共通すること」を探してもらった。発見した共通項はチャットボックスで投稿してもらい、30余りのキーワードが出揃った(上図参考)。後半は、これらの中から深堀りしていみたい共通項を選定して、ディスカッションを行った。 事業性とつくるものの質の関係性河野:参加者のみなさんから、お二人の共通項をたくさん頂きましたので、読んでいき

水野太史氏レクチャー「焼き物からデザインを考える」

本稿は、2021年11月10日に東京大学建築生産マネジメント寄付講座主催のレクチャーシリーズ「つくるとは、」の第四回「つくる×材料」における、水野太史氏(水野太史建築設計事務所/水野製陶園ラボ代表)による講演(研究・活動紹介)の内容から構成したものになります。 京都工芸繊維大学の3回生のときに、文化祭で仮設的なカフェをつくりました。当時所属していた、美術部のメンバーのほとんどが建築学科とデザイン学科の学生で、みんなで意見を出し合いながらカフェを設計・施工しました。既存のRC

東野唯史氏レクチャー「ReBuild New Culture」

本稿は、2021年11月10日に東京大学建築生産マネジメント寄付講座主催のレクチャーシリーズ「つくるとは、」の第四回「つくる×材料」における、東野唯史氏(ReBuilding Center JAPAN代表)による講演(研究・活動紹介)の内容から構成したものになります。 僕は1984年生まれで、2003年から2007年まで、名古屋市立大学で建築を学んでいました。学科にはいろいろな分野のデザイナーが先生としていたのですが、グッドデザイン賞の審査委員長をされていた川崎和男先生もそ

ディスカッション 荒木源希×和田寛司  (司会:河野直)

和田寛司氏・荒木源希氏の2名をゲストとして迎えた本レクチャーは京都会場からのオンライン開催となり、全国各地から参加者が集まった。参加者にはレクチャーを聞きながら、2者の取り組みに「共通すること」を探してもらい、チャットボックスに投稿してもらった(上図参照)。後半は、これらの中から深堀りしたい共通項を選定して、ディスカッションを行った。 設計と施工のバランスをはかる河野:みなさんからいろいろな共通項を挙げていただきました。「建築家と施主さんと一緒に時間を紡ぐ」「手の即興性

和田寛司氏レクチャー「建築のつくり方についてもっと考えたい」

本稿は、2021年12月14日に東京大学建築生産マネジメント寄付講座主催のレクチャーシリーズ「つくるとは、」の第五回「つくる設計者」における、和田寛司氏(ランチ!アーキテクツ代表)による講演(研究・活動紹介)の内容から構成したものになります。 ランチ!アーキテクツでは、職人や施主や設計者がみんな一緒くたになって、全員で現場に向かうということをずっとやっています。こうした活動をするようになったのは、もといた設計事務所で、新オフィスをDIYするというプロジェクトを最初に担当した

荒木源希氏レクチャー「“Hands-on” approach──手で思考する」

本稿は、2021年12月14日に東京大学建築生産マネジメント寄付講座主催のレクチャーシリーズ「つくるとは、」の第五回「つくる設計者」における、荒木源希氏(アラキ+ササキアーキテクツ/モクタンカン代表)による講演(研究・活動紹介)の内容から構成したものになります。 私は2004年に大学院を出て、就職できず半年間のフリー期間を経て、設計事務所に勤めました。2年半ほど働いた後に退職し、また半年間くらい沖縄でテント暮らしをしたのちに、アラキ+ササキアーキテクツという事務所を始めまし

ディスカッション 真田純子×森田一弥  (司会:河野直)

真田純子氏・森田一弥氏の2名をゲストとして迎えた本レクチャーには、全国各地から約74名の参加者が集まった。参加者にはレクチャーを聞きながら、2者の取組みに「共通すること」を探してもらった。発見した共通項はチャットボックスで投稿してもらい、30余りのキーワードが出揃った。後半は、これらの中から深堀りしてみたい共通項を選定して、ディスカッションを行った。 「原始的な技術」と「農地の技術」の共通点と相違点河野:皆さん、たくさんの共通点の提起、ありがとうございます。森田さん、真田さ

森田一弥氏レクチャー「左官職人から建築家へ、京都の土壁技術を現代建築に」

本稿は、2021年9月27日に東京大学建築生産マネジメント寄付講座主催のレクチャーシリーズ「つくるとは、」の第三回「技術伝承」における、森田一弥氏(京都府立大学准教授)による講演(研究・活動紹介)の内容から構成したものになります。 学生の頃から、職人の世界や「つくる」世界にかかわることを考えてきました。入学当時はバブルの絶頂の頃で、京都では高松伸さんのポストモダン建築が大々的に取り上げられていましたが、凄いなと思う反面、こんな建築がどうやったら設計できるのかまったくわかりま

真田純子氏レクチャー「石積みの風景と、それを支える技術を継承する」

本稿は、2021年9月27日に東京大学建築生産マネジメント寄付講座主催のレクチャーシリーズ「つくるとは、」の第三回「生活文化」における、真田純子氏(東京工業大学准教授)による講演(研究・活動紹介)の内容から構成したものになります。 私は現在、土木・環境工学系というところにいますが、もともとは社会工学科出身で都市計画史や緑地計画史が専門でした。2007年に徳島大学の土木系分野へ勤めてから土木史研究を始め、農村景観や農村の活性化、そして石積みの研究を始めました。 石積みの研究

ディスカッション 大島正幸×平野利樹  (司会:河野直)

大島正幸氏・平野利樹 氏の2名をゲストとして迎えた本レクチャーには、全国各地から約60名の参加者が集まった。参加者にはレクチャーを聞きながら、2者の取組みに「共通すること」を探してもらった。発見した共通項はチャットボックスで投稿してもらい、30余りのキーワードが出揃った(上図参考)。後半は、これらの中から深堀りしてみたい共通項を選定して、ディスカッションを行った。 共通項1.プロセスの連続性河野:興味深いレクチャーをありがとうございました。それではキーワードをいくつかピ

平野利樹氏レクチャー「ポスト・デジタルの美学」

本稿は、2021年8月10日に東京大学建築生産マネジメント寄付講座主催のレクチャーシリーズ「つくるとは、」の第二回「美学」における、平野利樹氏(東京大学特任講師)による講演(研究・活動紹介)の内容から構成したものになります。 建築の美学を考えることは私の研究的関心の一つです。特に現代はポストデジタルと呼ばれるように、デジタルテクノロジーが一般化した後の時代です。ポストデジタルの時代において建築の美学はどうなっていくのか。理論と実践の両面から考えていくことが私の研究テーマです

大島正幸氏レクチャー「つくる美学」

本稿は、2021年8月10日に東京大学建築生産マネジメント寄付講座主催のレクチャーシリーズ「つくるとは、」の第二回「美学」における、大島正幸氏(ようび 代表取締役)による講演(研究・活動紹介)の内容から構成したものになります。 私は今、岡山県西粟倉村という人口1,416人の村で「ようび」という会社を経営しています。95%が森林で『もののけ姫』のような村です。夕方6時以降は人を見ない代わりにヤックルのようなシカを見ます。「ようび」は建築設計事務所であり施工会社でもあります。家

『環境との協働で災害を生き抜く』 前田昌弘氏レクチャー(後編)

この記事は、京都大学准教授、前田昌弘先生に行なっていただいたレクチャーの内容を構成して公開するものです。 前編はこちら。中編はこちら。 スリランカ紅茶農園の長屋 写真1:紅茶プランテーションの長屋 次はスリランカで今も続いている研究の事例です。スリランカはかつて「セイロン」とも呼ばれ、紅茶の産地として有名ですが、僕たちが関わっているのは、山岳地帯の閉鎖された紅茶農園です。ここはスリランカでも最古の紅茶プランテーションで、かつての紅茶農園の施設が今も残っており、15軒ぐら

『環境との協働で災害を生き抜く』 前田昌弘氏レクチャー(中編)

この記事は、京都大学准教授、前田昌弘先生に行なっていただいたレクチャーの内容を構成して公開するものです。 前編はこちら。後編はこちら。 東日本大震災の集団移転団地研究 図1:従前の集落の配置を維持した集団移転団地の事例 二つ目に、東日本大震災の集団移転団地の研究を紹介します。沿岸にあった六つの被災した集落を畳み、内陸の1カ所に集まって復興団地を作った事例です。学識者や専門家が行政と住民の活動をサポートし、町づくりのプロセスを経て住宅地が作られました。特徴的なのが配置計画