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天使の心遣い

朝、目が覚めると、布団の上にひざ掛けが掛けてあった。
あれっ。
寝る前に確かに椅子の背に掛けた、と思う。
いつの間にか布団のちょうどお尻のあたりにひざ掛けが移動している。
確かに寒かったな、とは思うけれど、
でも、誰が?
そういう事がたまにある。

寝ぼけて自分でそうしたのだろう、と家人は言うけれど、
断じて私ではない。
あ、あなた?
と聞いたら、にやにやと首を振る。
そう、家人なわけがない。
寝室は別だし、夜中にそんな気遣いをするとは思えない。残念ながら。


コーヒーが飲みたくなって、ポットを火にかけたのに、
沸くまでの間と思ってついほかのことをして、そっちに意識が集中してしまうことがある。

一時すると、前触れもなく突然に机の端からペン立てが落ちた。数本のボールペン、マジック、マーカーなどなど、けたたましい音を立てて散らばった。
意識を反らすに十分な音で、
あ、
ようやく、勢いよく噴出すポットの音が耳に届いた。
慌てて走り込み、火を止める。
空焚きまで至らずによかった。
理由もなくペンが落ちたのは、このためか、
なんとなくそう思う。

時々記憶と違うことがある。
時々、理屈に合わないことがある。

まあ、助かるけど。

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