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【読書記録】ユーザビリティが社内で軽視される理由

おはようございます。

Xデザイン学校主催のとある交流会に参加した際、「使いやすさ」を学問的に追求している例はないのか?と質問したところ、山﨑和彦先生から「認知心理学を知っているか?『誰のためのデザイン』を読んでみなさい。」と言われ、読んでみました。

自分が求めていた、論理的に「良いデザイン」について解説された盛りだくさんの内容になっていたので、復習も兼ねてnoteに記録を残すことにしました。

第4回は、「ユーザビリティが社内で軽視される理由」です。

1.製品に求められるあらゆる性質

ユーザビリティが高ければ高いほど良い。それは間違いないが、ユーザビリティが全てではない。

ついデザインやUXを学んでいると陥りがちなのが、ユーザビリティこそ正義、ユーザビリティが全てのような考えになってしまうことだと思います。

私もソフトウェアエンジニアというバックグラウンドを持ちながら、開発工数や保守性、そもそもの機能要件そっちのけでユーザビリティばかり気にしてしまっていた時期がありました。

本書でも、以下のように書かれていました。

デザイナーはそのプロセスの複雑な連鎖の一部にすぎず、実際製品を生み出すにはいろいろな専門分野が関わっている。この本の主題は製品を最終的に使用する人々のニーズを満たす重要性についてであるが、製品の他の側面も重要である。たとえば、機能、信頼性、保守性などの技術的有効性、コスト、財政的実現性(これは通常、収益性を意味する)である。これらの側面の一つひとつはそれぞれの要求項目を出してくるが、ときに、あるものが他の側面のそれに対立しているように見えることもある。スケジュールと予算の二つは、最も厳しい制約である場合が多い。

事業会社で働いている以上、作る製品は売れて収益を上げられなければ何も意味はないし、決められた予算と期限の中で完成させなければならないのです。

「QCD」は社会人に求められる3つの要素であると入社時に習いますが、QとCDはほとんどの場合対立します。要は、トレードオフを見極めて、いい塩梅でやっていけ。ということなのでしょうね。

Xデザイン学校でも、UXデザインの前に、ビジネスのことを考えたサービスデザインを実施する必要があるというのを口酸っぱく言われましたが、まさに同じ意味であると思います。

多くの会社では、ユーザビリティや機能要件は開発チーム、価格やスペックはマーケティングチーム、製造や組み立てを生産チーム、プロモーションやアフターサービスは現場チームと、1つの製品のライフサイクルにさまざまな部署が関わります。

この時に、各チームが独立して動いてしまうと、競合する要件を出し合い、それぞれが自分が思う「良い」製品を目指し、最終的にちぐはぐな製品が出来上がる。良いチームは1本筋が通っていて、各チームが協働的に1つの製品を作り上げていく。と本書でも書かれており、各チームがお互いの要求を理解することの重要性を再認識しました。

2.機能症

ほとんどの会社は、競合相手に対して、機能を比較し、自分のどこが弱いかを判断して、その分野の力を強めようとする。間違いだ、とムンは言う。良い戦略は、自社が強い分野に集中して、それをさらに強くすることである。

ハーバード大学教授のヤンミ・ムンはその著書『ビジネスで一番、大切なこと』の中で上記のように論じていたようです。

多くの会社のマーケティング部門は競合他社と自社のスペックを比較し、負けているスペックを伸ばすよう、新製品開発の企画書を書き上げます。

スペックはわかりやすい比較指標であること、マーケティングの競合分析手法にスペックを比較する手法があること、がこれらを招いている原因かと思いますが。

私が働いている会社も、残念ながら、例に漏れていません。

何でもかんでもユーザーからヒアリグした結果に基づいて、機能を追加する。どんどんバージョンアップしていく。ソフトウェアエンジニアはどのような機能として追加するか、どうやって実装してどうやって実現するか、詳細設計に日々奔走しています。

機能症による機能追加は、製品の複雑さを生み、ユーザーの概念モデルを複雑にしていき、最終的に混乱を招き、ユーザーの認知する機能の中から切り捨てられる運命にあると思うのです。

製品に複雑さは不可欠で、悪いのは混乱を招くことだ。と本書で書かれていましたが、「混乱を招かない整頓された複雑さ」にも限界があると私は思うのです。

どれだけ考えても整頓できない複雑さはありますし、開発には期限があるので尚更厳しいというのが現状。。

ユーザーにとっての製品のライフサイクル、つまり購入時に考慮する要件を満たした上で、ユーザーが使いやすいと感じられるようなUXを与える、真実の瞬間と言ったりしますが、そこのユーザビリティに徹底的に注力した、本質的価値にこだわり抜いた製品を目指す。

シンプルで本質にこだわった製品を会社の各チームが共通認識を持ってつくりあげていく。

そんな理想のかたちを求めて、社内で動いていこうかなと思ったりしました。

3.重要ポイントリスト

上記のような形で、本書について私が重要だと感じたポイントごとに記録を残しています。

毎回のnoteの最後に、これまでの重要ポイントリストを記載して、備忘録のような形にしています。

1. 良いデザインの重要な特性 (2022/3/13)
2. 行為の7段階理論(2022/3/15)
3. デザインの7つの基礎的原理(2022/3/21)
4. ユーザビリティが社内で軽視される理由(2022/3/26)

それでは。


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