見出し画像

埋もれないロゴを作るために。日本有数のデザイナーから学ぶ、ロゴづくりで大切な「6つのポイント」

■ はじめに

ロゴといっても様々な種類があります。「企業のロゴ」「サービスのロゴ」「商品のロゴ」「スポーツチームのロゴ」などなど、用途によって目的・性質が異なります。

よく本や記事では

「かんたんなロゴの作り方を教えます!」
「ロゴを作るときのプロセス大解剖!」

といったようにロゴを作る前提で語られる切り口がほとんど。自分も拝見して勉強することが多い一方、

「そもそもロゴとは何なのか?」
「ロゴを作ることでどういった効果が得られるのか?」
「そもそもロゴって何だっけ?」

というようなそもそもの疑問に答える、ロゴの性質・必要性を詳細に語っている記事が少ないなと感じてます。自分も「ロゴとは一体何なのか詳しく教えていただけますか?」と問われたら、なかなかビシッと答えるのが難しいです。。(なので自戒を込めたnoteとなっております。。)

最近では、個人でも手軽にWEBサイト・アプリ・動画が作成でき、それらの象徴として「ロゴを作って欲しい」という声も増え、需要が高まっている印象です。しかし、ロゴとは何かを詳しく語れる方が少なく、イギリスの産業革命時代のように同じようなロゴが大量生産的に作られているのでは、、?と勝手ながら危惧しています。

ツールを使ってロゴも手軽に作れてしまう時代だからこそ、ロゴの役割・機能・性質を今一度振り返ってみることが、今の時代には大切ではないかと感じています。

そして振り返るにあたって、wikipediaに書いてる普遍的な内容を確認していくのではなく、日本有数のデザイナーの方々がどのような考え方でデザインをしているのか、経験から生まれた生の声をピックアップして「ロゴとは」を深く学んでいけたらなと思います。


■ 佐藤可士和さんの考え方

日本のデザイナーと言えば、真っ先に挙げられる方の一人に該当するのではないでしょうか。日本を代表するクリエイティブデザイナー佐藤可士和さん。日本の企業から、幼稚園、病院、ミュージアム、エンターテインメント界、ファッション界、地域産業など多種多様な分野で革新的なVI・CI計画やブランド戦略を手がけ、注目を集めてきました。

スクリーンショット 2020-11-08 0.11.28

画像引用:佐藤可士和展覧会ウェブサイトから


佐藤可士和さんはインタビューでロゴについてこう語っています。

■ ロゴはコミュニケーションツールのシンプルな形
ひとくちにロゴと言っても、様々な種類があります。「企業のロゴ」、「商品のロゴ」、「サービスのロゴ」、これらそれぞれのロゴに目的があり、機能が異なります。
共通して言えることは、ロゴは社会に伝えたい事の本質を、端的に凝縮してビジュアル化した情報であるということです。
ロゴは、社会の中の膨大な情報の中から瞬間的に多くの人に認識してもらう必要があります。つまり、ロゴとはコミュニケーションツールの「いちばんシンプルな形」と言えるかもしれません。
クリエイターが考え抜いたベストの案を提案する
クライアントが求めていることは「クリエイターとしての判断」です。医師に例えるなら、病気を治したいと思っている患者を前に、「手術する方法、薬で直す方法、他にも方法があります。自分でどれかを選んでください」と言うと、患者は不安になるでしょう。
企業のロゴをつくるというのは、その企業のアイデンティティに関わるような非常に重要な仕事です。どれでもいいですが、どれかを選んでくださいではなく、こちらの考えをきちんと伝えるべきです。
いちばん大事なことは、たくさんの案をプレゼンするとしても、ぼくがクリエイターとして考え抜いたベストのデザインをオススメすることです。

引用:書籍「ロゴデザインの教科書」から


■ 永井一正さんの考え方

札幌冬季オリンピックにJR(監修)、JA、三菱東京UFJ銀行、アサヒビールなど、1950年代からグラフィックデザインの第一線で活躍してきた重鎮として、デザイン業界に大きな功績を残しているデザイナーの一人です。

スクリーンショット 2020-11-08 23.14.58

画像引用:永井一正 - 日本デザインコミッティーより

■ アサヒビールのロゴ刷新により復活した件について
デザインが一新されたことで、従業員の意識も変わったんです。僕がよく言うのは、いくらロゴが良くても、商品が悪いと逆効果になる。ロゴの良さによって、商品の悪さが際立ってしまうわけで、これは絶対に両立しないとダメなんですね。アサヒはまさに社運をかけた賭けだったけど、うまくいきました。
■ ロゴとポスターの位置付けの違いについて
僕はグラフィックデザインの2つの大きな柱が、ロゴとポスターだと思っています。ロゴはいろんな要素をできるだけシンプルに結集するもの。一方、ポスターは、用途はあるけれど、自分の思想を込めながら、要素の持つ力を増幅させるものだと思います。

引用:数多の有名ロゴを生んだ永井一正。実践で培ったデザイン&ロゴ論


■ 原研哉さんの考え方

日本を代表するデザイナーの一人、原研哉さん。日本デザインセンター代表取締役社長。武蔵野美術大学教授。無印良品、松屋銀座、森ビル、蔦屋書店、GINZA SIX、MIKIMOTOなどのVIを手がけています。

スクリーンショット 2020-11-08 23.10.33

画像引用:日本デザインセンター 原デザイン研究所のウェブサイトより

本質を見極めることがデザインの最も重要なことだと思うんです。見極めれば表現できる。本質というのは、物事のエッセンス、核心です。デザインというのは 鮮烈な目覚めをつくっていくことが役割で、それをどう効果的にやるかです。本質を見極め可視化することができれば、デザインの仕事はそれに尽きるわけです。

引用:原 研哉氏インタビュー 本質を見極めるーーVisualize and Awaken


■ ロゴ制作で重要な6つのポイント

画像9

日本有数のデザイナーの皆さまのご意見をまとめていきますと、6つのポイントが出てきたと思っています。

1.「本質」
2.「シンプル」
3.「コミュニケーション」
4.「両立」
5.「時間の耐久性」
6.「イメージの耐久性」


[1.本質]
見た目だけカッコいい/イケているロゴを作成しても、どこかで見かけたことがあるロゴになりがちです。見た目だけを追求してしまうと、クライアントが抱える問題を解決するためのロゴをになることは難しいと思います。作り手もクライアントも問題を把握をして、問題解決をする為のロゴをつくるという意識が大切であり、本質に向き合う議論がはじめにできるのがベストだと感じました。

[2.シンプル]
理念やビジョンを伝えようと思っても、伝える情報量が多いとかえって伝わらないですし、世の中にも沢山の情報が存在するため、受け手は情報が多いと、よっぽど面白くないかぎり興味を失います。沢山ある情報の中から見つけて知ってもらうためには、情報量は極力削ぎ落として、端的に伝える必要があります。
・ロゴに情報量を詰め込みすぎていないか?
・まだまだ削ぎ落とせるのではないか?

もっとシンプル出来ないかという点を意識してみるのが良さそうです。

[3.コミュニケーション]
ロゴとは、自分達の会社/企業をカッコよくイケてると見栄を張るものでは無いのは、なんとなくは理解しているとは思います。しかし、ロゴをいざ作る・依頼するとなると、本質部分は初めにちょろっと話しただけで、見た目の部分(色・フォント・アイコンなど)だけにフォーカスしてディスカッションされることが多いです。
・いまのロゴは、企業の理念ビジョン想いが伝わるものとなっているか? 
・見た目だけの体裁を整えたものになっていないか?

制作が進むと、ついつい議論が見た目の話に引っ張られてしまうので、ロゴとは、世の中の多くの人に想いが伝わるコミュニケーションツールであるという認識が大事だと思います。

[4.両立]
仮にロゴだけが本質を凝縮できていたとしても、商品・サービスの質が伴っていないと、質の悪さが目立ってしまいます。ロゴと商品・サービスの質は関係ないようにも思いますが、良いロゴは社員のモチベーションアップに繋がるものだと感じます。例えば、野球を初めたばかりの子供に高級な野球グローブを買ってあげて「高級なグローブに合う技術を身に付けるぞ!」と意識が変わるのと似てそうですね。


[5.時間の耐久性]
デザインには流行り廃りがあります。現在は今風で素敵なロゴだとしても、20年、30年後もそのロゴは同じ素敵な印象を与え続けられるでしょうか?

例えば、ナイキのロゴは1971年から存在していますが、ほとんど形を変えていないにも関わらず、ご存知の通り現在も世界中で愛されています(変更は若干の調整のみ)。

画像5

・何年経っても愛される、流行に左右されない耐久性のあるロゴになっているか?

デザインの流行を知り、取り入れることも大事だと思いますが「時間の耐久性があるのか?」と見つめ直し、サービスが長く愛されるかという視点に経つのは、とても大事なポイントです。

[6.イメージの耐久性]
ロゴはWEBサイトやアプリで使用されるだけでなく、名刺・チラシ・ポスター・駅の看板など、あらゆるシーンで使用されています。リアルで見たときとデジタルで見たときに、イメージに差が生まれると、本来伝えようと思っていたメッセージと、別の受け取り方をされてしまうかもしれません。

ロゴを完成させる仕上げの際には、

・印刷して、デジタルと実物で印象を見比べる
・白黒にして見比べる
・遠くから離れて見ても見やすいか


など、見るときの条件が変わったとしても、同じイメージが保てているかチェックしておきましょう。


■ とはいえ、サービスリリース段階では、ロゴを作り込まなくていい

まだ企業したばかり、サービスリリースしたての段階では、ここまで本質を凝縮したロゴは必要ではなく、簡単なロゴでいいと思います(ロゴ以外にやるべきことが多く、リソースの確保が難しいため)(そもそも本質が定まってなく可視化が難しい場合も)。

Microsoft・Google・Adobeも初期のロゴから大幅に変化しています。

画像3

画像4

画像8

収益が伸びサービスが安定してきて「そろそろデザインを一新するタイミングかな?」と感じたら、社内外のデザイナーに相談して、ディスカッションしてみてはいかがでしょうか。サービスの拡大前は、まずは本業のサービスの拡大・組織作りなどが先決だと思います。


■ さいごに

以上、"埋もれないロゴを作るために。日本有数のデザイナーから学ぶ、ロゴづくりで大切な「6つのポイント」"でした。

・ロゴを一新したい
・サービスを立ち上げるので、ロゴ作成をデザイナーに依頼したい
・クライアントからロゴ作りを依頼されたので、ロゴを作る

などなど、ロゴを作る側・依頼する側の方も「ロゴとは何なのか?ロゴ作りには何が大切なのか?」手軽に作れたりお願いできてしまうからこそ、改めてロゴの性質・特徴について、見つめ直してみてはいかがでしょうか。

ロゴ制作の時にぜひお役立てくださいませ!それではまた!


■参考書籍


この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?