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追憶

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自分の記憶を頼りに書いたものです。
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#声

第六十六景

第六十六景

世界が一変した夜から数日後の夜、包丁を持ち、街灯が照らす道と、その明かりから外れた真っ暗な道を交互に歩いていた。存在する全てのものから身を隠したかったし、この世界にまだ留まりたいとも思っていた。梅雨が明けたのか明けていないのかも、よく分からなかったが、じめじめとした空気が漂っている。あてもなくふらふらと歩いていると、他人の住宅の前に差し掛かり、この中にはどんな世界があるのだろうと通り過ぎる。前方に

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