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【凡人の対談 13.「凡人の幸福論:蟹穴(かにあな)主義」(1):家族や親しい人にとって、あなたの代わりはいないが、社会的にはいくらでもいる。】
これは、とある凡人が、様々な人間たちから、彼の経験談や考え方を根掘り葉掘り聞かれまくるという、しょうもない話である。
〜とある怪しげな一室〜
「凡人さん、こんにちは。」
「はいこんにちは!」(今日も綺麗なお姉さんだ!!)
「早速ですが、あなたは『人生を懸けて成し遂げたいこと』はありますか?」
「ありません!日々、幸せに生きることができれば、それでよろしいです!!」
「超自己中心的で、最低ですね。こういう世の中にしたい!とか、こういう世界にしたい!とか、そういうものはないのですか?」
「ありません!!」
「意識の低さが底をついてますね。」
「あ、まぁ、もちろん、平和な世界になったら良いよね。とか、便利な世の中になったら良いよね。とか、多様性が認められる平等な社会になったら良いよね。みたいな願望はありますけども。」
「そうですか。それなのに、ご自分で何かやろうとは思わないのですか?」
「はい思いません!!」
「そうですか。そこは無駄に意思が強いですね。『凡人魂』とやらですか。」
(でた!『とやら』!!!)
「まぁ、そういうことになってしまいますかね。。」
「そんなことで良いのですか?せっかくこの世に生まれて来たのだから、『何かを成し遂げたい!』とか、『名を残したい!』とか、そういう想いはないのですか?」
「ありません!!」
「そもそも、『誰でも何かを成し遂げたり、名を残せる世の中』だったら、もっととんでもないペースで、世の中変わってます。さらに、名を残す人が多すぎて、覚えられないので、逆に残りません!!」
「なるほど。若干の『言い訳感』、『屁理屈感』は気になりますが、一応筋は通っていますね。」
「はい。何か特別なことを追い求めるより、大抵の人は、紛れもなく凡人なので、いかに凡人の人生に満足し、幸せに暮らせるか、を考えた方がよっぽど幸せに生きれる確率は高くなると思います!!」
「なるほど。若干の悲しさは感じますが、筋は通っていますね。ただ、やはり人生を満足して幸せに生きるためには、『自己肯定感』のようなものは必要ではありませんか?」
「『自分には価値がある』とか、『自分はかけがえのない存在である』とか、そういう感覚が必要ではないですか?それが全く無いと、自分の人生に満足する、ということは、難しいように感じますが。」
「まぁ、確かに、その気持ちはわかりますけども。」
「ただし、現実として、人間のほとんどは『凡人』です。人間という存在のスタンダード、代表例は『凡人』です。ほとんどの人間が、知らぬ間に生まれて、特に何も成し遂げず、名も残さず、知らぬ間に死んでいきます。」
「『せっかくこの世に生まれたからには!』みたいな気持ちはわかりますが、そもそも人は、『たまたま生まれただけ』なので、そこに意味なんて存在しないと思っています。よく、人が生まれるのは『奇跡』だと言われますが、それは表現の問題で、言い換えれば『たまたま』です。」
「身も蓋もないですね。」
「はいすいません。」
「つまり、あなたは、どこにでもいる存在、いつでも変えのきく存在、それで良い。そうおっしゃるのですね?」
「はい、おっしゃる通りです。その上で、僕なりに、それなりに幸せに生きられたら良いかな、と思っています。」
「もちろん、ある人にとっては、僕は、間違いなく『かけがえのない存在』であるとは思っています。」
「ほう。たとえば?」
「例えば、家族や親友などです。彼らにとっての僕は、間違いなく『特別な存在』ですし、『かけがえのない存在』です。肩書きとか、性格とか、能力とか全く関係なく、かけがえのない存在です。」
「具体的にはどういうことですか?」
「はい。たとえば、僕がいきなり死んだとして、代わりに僕とそっくりで、似たような経験や能力を持った人間を、家族や親友の前に持って来たとします。ただ、どんなにそっくりで、同じような人間であっても、彼らはきっとこう言います。『この人は違う』と。」
「まぁ、そうでしょうね。」
「つまり、どんなにしょうもない凡人でも、家族や、親しい人間からすれば、絶対にかけがえのない存在なのです。僕はそれで十分です。」
「なるほど。」
「もう一つ。一方それ以外、つまり社会的には、僕の代わりなど絶対にいます。もっと言えば、どんなに天才で、どんなに偉業を成し遂げた人間でも、代わりはいます。」
「そうですか? たとえばどういうことでしょう。」
「たとえば、『スティーブ・ジョブズ』さんです。彼は、間違いなく『天才』です。彼が社長を務めていた『Apple社』は、間違いなく世界を代表する企業ですし、彼の代表作『i-phone』は、世界中で多くの人に使われていますし、『iTunes』は、音楽の楽しみ方を変えました。間違いなく、『世界を変えた』人間です。」
「そうですね。尊敬すべき人物です。」
「ただ、そんな『ジョブズ』さんも、亡くなりました。ただ、その後『Apple社』は潰れたか。その名声が消え去ったか。全くそんなことはありません。」
「そうですね。つまり、何がおっしゃりたいのですか?」
「つまりですね。あの『スティーブ・ジョブズ』さんでも、社会的には、『代わりがきいた』わけです。その他の凡人に、代わりがきかないわけがない。ということです。」
「なるほど。そういうことですか。面白いご意見ですね。つまり、社会的にかけがえのない人間などいないのだから、変に『世界を変えよう』『名を残そう』とするのでなく、自分の人生を幸せに生きていこう。そういうことですね。」
「はい!おっしゃる通りです!」
「わかりました。初めはただの『意識低い系』の意見だとも思いましたが、『地に足が着いた生き方』、そういう印象を受けるようになりました。」
「おっしゃる通りです!!」
「わかりました。もう少しお尋ねしたいことがあります。少し休憩を取った後、続きをおうかがいさせていただきます。」
「はいわかりました!!」
つづく
お金はエネルギーである。(うさんくさい)