【凡人が自伝を書いたら 71.はじめの一歩(前編)】
さあて、どこから始めようか。
目的は、僕やチーフがいなくてもまわる店にすることだ。
夕方までは、立派な主婦さん方がいて、今もそれができている。
ポク、ポク、ポク、チーン!
お!
おそらく、そうなるために必要な要素は3つ。
「知識」「能力」「自信」
これだ。
現状を「3段階評価」でいってみよう。
知識△
能力○
自信✖︎
⇨絶妙。
完璧主義ってわけではないけども、やっぱり「全部○」にしておきたい。
まず、絶対条件として、「自信○」じゃないと、スタッフはやらない。
「店長命令」でやらせることはできるが、必ず何かしらの弊害が起きる。不満だったり、無理矢理やらされてる感だったりだ。
知識、能力もそれぞれ必要だ。
自信○になっても、その二つのどちらかが足りなければ、営業の中で必ず問題が起こる。
「知識の不足」は、「間違った対応」につながる。未知の場面に遭遇し、営業も混乱する。
「能力の不足」は、「お客の不満」につながる。待たされたり、不手際が起こるからだ。
そして、そうした問題は、スタッフの「自信の喪失」につながる。
やる気満々でやっていても、お客に迷惑をかけてしまったり、怒られたりすれば、モチベーションは下がる。
そういうことだ。
よし。まずは「知識」から攻めていこう。
知識をつけ、「どう考えてもやれてしまう感じ」にしてしまおう。
「だって、もうやれるんだから、やるよね。」
こんな感じに思ってもらえれば、イケる。(根拠はなし)
そして、同時に「自信」のUPにもアプローチしていこう。
スタッフに、「できること」を「できる」と自覚してもらう。「成長したこと」を「成長した」と実感してもらう。
「承認だ!」
まるで「流行語」のように、頭の中を頻繁に飛び交っていた。
さらに僕は、「思考の森」を歩んでいく。
てか、これ発明だよね。(え?)
こんなふうにスタッフの「自立のための3要素」を言葉にして、「論理的に教育する」感じ。
僕は聞いたことがない。
少なくとも学校でも会社でも教わって来なかった。
これは僕の血の滲む努力と経験の賜物だ!!
ハッハッハー!!(変なクスリをやっているわけではない)
ん?
んん!?
待てよ、、
スタッフに「必要な知識」と「能力」を与え、「自信」をつけてもらう。
あれ?
あれれ?
普通!!
なんだこの、「森の迷宮に迷い込んで、やっとの思いで出口に辿り着いたと思ったら、実は入口に着いちゃった感」は。
チーン。
さて、やりますかね。
僕は、自分の愚かさに一瞬落ち込んだが、路線がはっきりしたことには間違い無かったので、早速Yチーフに、このことを共有することにした。
「Yチーフの見解」
「〜〜〜、〜〜、ということで、こんな感じに進めていこう!」
「え、そんな自信とかじゃなくて、フツーに、できるんだったら、やらせれば良くなーい? 失敗しながら、自信ってつけていくもんでしょ?」
ク〜〜! ドライ!!
あなたは「アサヒ」ですか?
そうツッコミたくもなったが、実は初めから、そんな返しが来るんじゃないかと予測していたし、もちろんその意見にも一理あった。
ここは僕と、Yチーフで、少し相容れない「価値観の相違」だった。
Yチーフは、「スタッフを鍛えつつも、崖から突き落とし、這い上がって来る者のみ、受け入れる」という感じだ。
この「修羅場を潜り抜け、力を付ける感」
わかる。
アルバイト時代は僕もそうだった。
ただ、今になって思うのは、
それでは「集団として」成長しない。
これだった。
崖から落として、仮に這い上がってきても、辿り着くのは、崖のてっぺんまでだ。卒業やなんやらで、そのスタッフが辞めたら、また新しいスタッフを崖から落とす。
その繰り返しだ。てっぺんは常に一緒。同じところで、同じことをずっとやっているだけ。
それでは、その個人としては成長するかもしれないが、集団としては常に同じ所にいる。
いや、崖の上から始めても良くね?
自分が崖の下から登った時に身につけた知識や経験を、崖の上で教えて、さらに上へと登っていけば良くね?
これだった。
自分が登ってきた分を、他人に渡して、さらに上へと登る。それを繰り返すことで、集団としてどんどん上へ上へと登っていく。
僕は、そんな「集団」でありたかった。
「インストール」
Yチーフの「スーパードライ」を十分に味わって、頭がなんだか「サッパリとした」僕は、地道に行動を始めた。
基礎の復習。
暇を見つけては「細かい知識」を教える。
頻繁にスタッフに問題を出し、知らなかったところや、間違えて覚えていたところを、復習する。
あまりに教えまくるものだから、学生スタッフの中には少し混乱して、何度も「先生」と、呼び間違いをされるようになった。
その度に、「こんな先生がおりますか。」
そう変顔でツッこむと、笑いが起きた。(おいしい)
一番力を入れたのは、「お客の表情や動作」「テーブル上の状況」なんかから、様々なことを「察する」能力だった。
「2人で来てて、1人が食べてて、もう1人は何も食べてないって、異常なことだからね。料理が遅れているか、抜けている可能性が高いからね。」
「普通に歩いてて、お客の目が合うって、基本何か言いたい時だからね。」
「笑顔から、いきなり怒る人なんていないからね。大抵だいぶ前から、表情に出てるからね。」
「メニュー決まったお客さんって、ほとんど注文呼ぶ前に、一度近くのスタッフを探すために顔あげるからね。」
こういう些細なことをひたすらに営業の中で、教え込んでいった。
この能力は、お客の不満を事前に防止することはもちろん、いいサービスをできることにもつながる。
そして、スタッフ同士の連携にも役立つのだ。
「はい、ハサミ。」
「え、何で分かったんですか?」
「だって、今から使う食材の袋を手に持って、何かを探している。それハサミしかないよね。」
「あ、なるほど。」
そんなふうにお客だけでなく、スタッフの動きを見て、察する能力は高度な連携にも生かすことができる。
僕はこれまでにも増して、「自分の思考」を言葉にして、伝えることに注力していた。
まるで、スタッフの頭の中に、僕の「経験と思考をインストール」するような感覚だった。
もちろん実際にどう活かすかは、彼、彼女たち次第。
ただ、これがあるのと無いのでは、全然話が変わってくる。
そうやって、知識、経験をインストールし、能力もあげていくと同時に、スタッフたち自身の、「自信」へも地道にアプローチしていった。
長くなるので、それはまたの機会に。
今日はこれにて、お開きとさせていただきます。
それではまた。
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