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親愛なる母へ

母はまるで「ドワーフ」のような体型をしている。これは内緒である。(内緒になっていない)

僕とは全く違う。僕はどちらかというと背が高く、シュッとしている。

母は背が低く、手足も短い。僕が幼い頃、「お母さんは小っちゃいというより、短いね。」と言って怒られた記憶がある。

気の強さはハンパではない。

突然火が入ったように、怒る。

父が毎日ボコボコにやられている。

そこまで怒るか?と思うが、母に「弱火」はない。
火がつけば「強火一択」である。

突然大声で怒鳴るので、通りを歩くおばあちゃんや、一緒に住む祖父が何事かとビックリするほどだ。

そして家では、「定年後の旦那」のような過ごし方をしている。

韓国ドラマを永遠に見ている。そしてソファーで寝落ちしている。好きなときに食べ、好きなときに寝ている。まるで欲求の塊のようである。

ただ、僕はそんな母が好きだ。

母のコミュニケーション力はハンパではない。

本当に誰とでも仲良くなる。

隣の買い物客でも、順番待ちの客でも、レジのおばちゃんでも、誰とでも仲良くなる。大好きな韓流スターのファン仲間も全国各地にいる。地元の友人も多い。

僕はどちらかというと、人付き合いはそんなに広くないので、非常に尊敬する。

さらに、感情表現が異常に豊かである。

すぐ爆笑し、すぐ感動して泣き、些細なことで怒鳴る。顔の構造が気になるくらい「表情が豊か」である。というか真顔がよく分からない。食事する時でも常に表情が動いている。

僕はどちらかというと、感情を表現するのが苦手なので、ここも非常に尊敬する。

そして、母は大いなる選択ができる人物である。

ひとつ年下の妹が、中学校でおそらくいじめられていた。

当時は僕のせいで目の敵にされたと思っていたが、どうも違ったようだ。単に仲の悪い同級生がいたようだ。妹は運動神経抜群だったので、ソフト部に入っていた。しかし、そんなだからなかなか集中はできない。

そして部活も非常に弱かった。

母は先生と相談し、先生から「このままでは妹はダメになってしまう」と言われ、ソフト部が強い、隣の中学校に転校させることを決意した。

妹は体も大きく、表面的には気が強いが、中身はとても繊細でデリケートだ。

そのことを知っていた母は、妹を友達の誰もいない中学校に転校させることを悩んだが、妹のためを想い決意した。

ずっと、それが正しかったのか悩んでいたようだ。

妹は転校した。転校先の中学校でレギュラーになり、全国大会ベスト8になった。高校もスポーツ推薦で進み、県選抜にも選ばれた。そして実業団にスカウトされ、会社に入社した。

傍目からすれば、素晴らしい決断だった。

そして、妹の結婚式で妹が手紙で、母の決断に感謝していた。母は当然号泣していた。後ろめたい気持ちが晴れたような、過去の自分を肯定できたような、たくましく育った妹を誇りに思うような、そんな涙だった。

そんな母の思いを知って、僕も涙しそうだった。

僕はそんな母が大好きだ。

ちっちゃくて気性は荒いが、優しくて、人間味に溢れ、皆に好かれる存在だ。

子の人生を左右する大きな決断をする勇気も持っている。

僕にはなかなかできないことだ。

心から尊敬する、愛おしい存在だ。

これが「愛」なのかは今の僕にはまだ分からないが、

少なくとも僕は元気で生きてようと思う。

それが唯一「彼女」が僕に望むことだからだ。

そんな「愛」の中で、僕は今日も生きられている。

感謝します。ありがとう。


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