極道一番搾り

無常を観ずるは菩提心の一なり

極道一番搾り

無常を観ずるは菩提心の一なり

最近の記事

  • 固定された記事

事実に着想を得た創作であり 人物、場所、事件等は架空のものです。 人間は多くの真実には耐えられない。 -T.S. エリオット『バーント・ノートン』

    • 太陽と埃の中で

      この物語は事実に着想を得た創作であり団体、事件、人物は架空のものとなります。 ミーン、ミーン、ミーン… 真夏の茹だるような暑さの中、俺は歌舞伎町にいる… 「暑い、暑すぎる!」 タバコの吸殻と誰かが食べて捨てたアイスの棒に目を落としすぐ遠くを眺める 歌舞伎町の区役所通りは蜃気楼でユラユラと地面が揺らいでる 「今年一番暑いみたいですよ」 暑そうにしてたら別の組のAさんが声をかけてきた Aさんは人としては悪い人じゃないと思う 何個も下の俺を気にかけてくれ、舎弟の面

      • はじまりはいつも雨Ⅳ

        結 電話がしつこく鳴ってる… 「おい、電話出ろよ」 女が気怠そうに全裸でベットから出て固定電話を取る 「はい?…少し待って下さい…モーニング部屋の前に届いたみたい」 「直ぐ支度するから待ってて下さいと」 「直ぐ開けるので待ってて下さい…すみません」 下着を探す…バスローブを取りに洗面所へ 「お前のバスローブ。下着あったか?早く着ちゃえよ開けるぞ」 「待って」無視して開ける ウェイターが2人 「おはようございます。お部屋失礼致します。」 女が慌ててバスローブの前

        • はじまりはいつも雨III

          転 「…おい…聴こえるか」 声の主はリーダー格の男だ 「…龍聴こえます。どーぞ」 「猿聴こえます。どーぞ」 「よし、龍班は2人1組に散って裏手にある非常階段、出口を調べて固めておいてくれ。猿班は動きがあるまで待機」 「了解」 俺たちはハイエースからベンツに乗り換えてる 対象の車に追いつかないからだ S400の黒塗り…繁華街ならこの服装でこの車なら確実に職質対象だ エンジンは切ってある、手袋を握りしめたり道具のグリップを確認して暇を持て余す 俺

        • 固定された記事

        事実に着想を得た創作であり 人物、場所、事件等は架空のものです。 人間は多くの真実には耐えられない。 -T.S. エリオット『バーント・ノートン』

          はじまりはいつも雨Ⅱ

          承 車を走らせる事1時間近く…会話はない。 各々が頭の中で考えを巡らせているのだろうか。 俺は頭の中で、どんな内容なのかだけ気にしていた。 「おい、高速降りるぞ」 その合図でまた3人は俯き、1人は怪しくない程度に顔を隠し料金所のカメラに注意を払った。 「アレ出せ」助手席の男が言うと後ろの席の奴が動き出した「電源入れてチャンネル合ってるか確かめろ」黙々と作業する男。 手慣れてる、経験してるのか…そんな風に思った矢先ぶっきら棒にインカムを手渡された。 シールが貼ってあ

          はじまりはいつも雨Ⅱ

          ある青年の話

          この世に生まれた 人は生まれた時から人生が決まっている。 親は子を選べるが、子は親を選べない。 生まれ持った遺伝と、遺伝からくる才能。 そして、生まれ落ちた環境によって人生は決まる。 よって、人は生まれた時に勝敗が決まっている。 彼は思う… この考え方は『結局その時点で決まっているのだから』という逃げの考えなのか? なぜ… 「進学校に通う友達がこう言いました」 「学校で友達に両親どこの大学出た?って質問したら両親共、又は片方がやっぱり名のある大学出てる事が

          ある青年の話

          はじまりはいつも雨

          起そう、はじまりはいつも雨だった。 組織の動きに初めて参加した日も雨が降っていた… 梅雨に入る少し前のことだった…俺は何時ものように何をする訳でもなく渋谷の喫茶店で人間観察をしていた。 そんな時、少し前に組織から持たされていた携帯が鳴り出した。 「この電話は緊急電話だ。鳴った時は緊急だと思え。そして、何をしている時でも必ず出ろ。」 そう言われていた電話が鳴り一瞬ドキッとした俺… 「はい、もしもし」−「何してる?何処にいる?」間髪いれずに飛んでくる質問に応えた。 「何もし

          はじまりはいつも雨