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はじまりはいつも雨

そう、はじまりはいつも雨だった。

組織の動きに初めて参加した日も雨が降っていた…

梅雨に入る少し前のことだった…俺は何時ものように何をする訳でもなく渋谷の喫茶店で人間観察をしていた。

そんな時、少し前に組織から持たされていた携帯が鳴り出した。
「この電話は緊急電話だ。鳴った時は緊急だと思え。そして、何をしている時でも必ず出ろ。」
そう言われていた電話が鳴り一瞬ドキッとした俺…
「はい、もしもし」−「何してる?何処にいる?」間髪いれずに飛んでくる質問に応えた。
「何もしてません。渋谷にいます。」−「仕事だ、Aで集合。渋谷なら20分もかからないだろ。」
「わかりました」ブチッ
イラつく電話の切り方だ。心の中で毒吐いて渋谷を出た…
【Aとはそのままアジトの事を指す】

Aに着いた。建物の明かりは点いている、中に入る。黒づくめの男が3人、「遅いぞ、早く準備しろ」…「すみません」

これはどうしますか?誰かが聞く。「今回は偵察だけだ、要らないだろう。ただその隣のは一応持っていけ。その場で必要になるかも知れない」指差した方に目を向けると30㎝程の黒いのが4本。スラッパーだ。一目でわかる。

「準備できたか?行くぞ」Aを出た黒ずくめの男4人組は車に乗り込んだ。「山梨方面だから西東京で乗り替えよう」乗り替える?なんの事かサッパリ分からないから黙って着いて行く…

…そこを右で到着だ。
着いたのは駐車場付きのマンスリーアパート。
今まで乗ってきた車を停めスモークが少し濃いシルバーのハイエースに乗り換える。

高速に乗る手前の料金所「下向いておけよ」運転手は鼻頭が隠れるまでファスナーを上げる。高速は勿論現金支払い。怪しくない範囲でのカメラ対策だ。

車は目的地までひた走る、息遣いは聞こえない。
外は暗闇、大型のトラックを追い越して走るハイエースの窓には霧雨が当たりワイパーの音と風の音だけが車内のBGM。

この先に何が待っているのか…
続く




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