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(連載72)衣服や縫製がテーマのバンドを始めた:ロサンゼルス在住アーティストの回顧録:2012年


それまでも、ずっ〜〜〜と。

いつもいつも、ファッションとデザインとアートがいっしょにできないのか?という事を考え続けていた。

なので、2011年にやったイベント「マキシマム・ミニチュア」というファッションショーで、自分が表現したかった事は以下のとおりであった。


ランウェイで歩いてみせるのは、コンセプトのある服のシリーズ。しかし、一つ一つは日常服として機能するので、デザイン=商品でもある。そしてイベント自体はエンタメでもあり、パフォーマンス・アートでもある。
BY  Lun*na Menoh


こう自分で、書いては見たものの、、、実際の話、

これ。。。。って??



パンパンに詰め込み過ぎやろ?





たしかに。。。。

一つ一つは、ある程度、表現できた、、と、自分では、思う。(内容に興味のある方は連載67、68、69を是非ご覧ください)

しかし、こんなにたくさん、詰め込み過ぎたら、実際、

わかりにくくなる?

伝えようとする事が多過ぎると、見る方には伝わらなかったのでは?


*服のスケール実験のコンセプト=アート

*服=洋服ビジネス

*ファッションショー=ブランドのイメージ作り

*ショーでのバンド演奏=エンタメ

*でかいズラをかぶった本人シャシャリでの出演=サーカス?

*自分が作ったへたくそ演歌を熱唱=カラオケバー

*ランウェイが終わったら、服の即売=デパートの物産展

そして全部をあわせると、アートパフォーマンス?? 

に、成就するのか?


やってみてわかったが、一度にこんなにいろいろやると、いったい何をやろうとしてるのか?が、わかりにくくなった。

この、わかりにくくなるのが、わからなかった。

(低品質のオヤジギャグ)


もっとシンプルに、やりたい事をわけてみたら、どうよ?

つまり、服はブティックで売る。

ライブはライブハウスで。

パフォーマンスアートはギャラリーでって。

そんなん最初から当たり前だったけど、やりたい事をやってるうちに、こうなってしまった。。。。。涙

結局は、アートとファッションの間なんて、ちょっとカッコつけてしまったもんだから、あれも、これもと、全部がぐちゃぐちゃになったのだ。

服はその場で売らなくても、後日店で売ってもらって、ファッションショーはシンプルにして、音楽はリズムがよくて歩きやすいインストの曲だけでよかったし、まして、紙人形の予告編もいらなければ、本人が直々ランウェイで、演歌を歌う必要もなかった。


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これは、いらんかった。

誰がファッションショーに、へたっぴ演歌を聞きにくるでしょうか?

ちょっと考えれば、わかりそうなもの。爆笑


やりたい事しかやってないから、決してまちがってるわけじゃないけど、毎回、なにかが、おかしい、、、、、暖簾に腕押し的で、

結果出しました感がゼロ!!

様式=スタイルばかりを追ってしまって、ヘンテコになってるのだろうか?

自分のやりたい事を整理した方がいい、、、、?

でも、どうやって?

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服もパフォーマンスもバンドもファッションショーも、絵も、全部やりたいし、100歩譲っても、どれひとつ、やめる気にはならなかった。


この問いには、しばらくは悶々としたものの、イベントが終わって日常の多忙な仕事に戻ったら、、いつものように「過去のことはあまり考えない自分」になっていた。



しかし、、、、、、この頃から。。。

思いがけなく、なにやら、ゆるやかな変化というものが、起きているらしかった。


自分の人生に時間軸というものが生まれて、それが起動をはじめていたのだ。(おっそ!)

その時は意識はしてなかったけど、気がついたら、芽が出てて、気がついたら育っていってたこと。

この、、、、何やら得体のしれないオーガニックな自然農法で、育っていったプロジェクト、、、、

その、過程を今更ながら、ファクトを追ってご紹介しましょう。

おそらく、この辺から。。。。。


このショーの為に、使う音楽は全て、このファッションショーのテーマであったサイズやスケールに関する楽曲を作った。(例の演歌も含む。苦笑)

また、ランウェイに、ミシンを持ち込んで、そのノイズをライブでインストに加えてみた。

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ちなみに宣伝用に作った我々音楽班の紙人形

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その時に、ミシンって、むちゃくちゃ、カッコいい!と思った。

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もちろん、エレキもカッコいいですが、私は3コードとチャカチャカのリズムギター、そして、ワイニングバー多用のノイズメーカーとしてしか、弾けないのでありました。汗

すでに50代の自分が、今更、いくら練習しても、将来的に3コードが5コードになるくらいで、演奏技術が劇的に向上するとは思えませんでした。

同じ曲を250回(この数字は、パソコンで出るので、正確)練習してみましたが、全くうまくなりませんでした。涙

それにこの世の中には、ギターはものすごくうまく弾ける人がたくさんいます。何も人生がとっくに後半に突入してる自分が、やらなくてもいいような気がしていました。

だったらーーー?

自分は?今までやってきたミシンがあるではないかっ!!と思ったのです。


ミシンとの付き合いは、もう20歳くらいから。だから、これでなんだってできる自信がある!

ロックな兄ちゃんたちが、ギター弾く時にペダルを踏んで、ウワ〜ン、ウワ〜ンいわせてる、あのカッチョいい感じ!

ミシンだって、ペダルがあるのだ!!

よし!

ミシンを楽器にする!!

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ギターリストがツアーに行く時にギターケースを抱えていくように、私だって、ミシンを抱えてツアーに行こう!と思ったのでした。


ミシンのノイズを多用して、楽曲に入れ込んで、歌は全部、服やドレスメーキング、縫製、ミシンに関する歌のみ。。。。のバンドをやる事を決心した。


少なくとも、この決断は、自分がやってきた服関連の分野と、音楽の分野が一つになるので、とっちらかっている自分のやりたい事の整理にもなるではないか!


名前もまんま、 

ソーイング・シスターズ!!


さっそく、ニューヨークに戻っていたつぐみちゃんに連絡して、「あのさ、 実は、今、「ソーイング・シスターズ」ってバンドを考えたんだけど、はいってくれない?」


と、唐突に 聞いたら、



え????

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あ? はい。

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と3秒で決まった。


彼女とは、住んでるところがニューヨークとロサンゼルスなので、地理的な距離はあるものの、すでに音楽ファイルの交換などは、簡単にできる時代であったし、いわゆるローカルのライブをやるようなバンドではない、あくまで、プロジェクト・ドリブンな活動で、遊び感覚満載で、西海岸、東海岸を行ったり来たりしながら、楽しみながらやるというポリシー。

楽曲は、ドレスメーキング、ファッション、縫製、ミシン、お針子などなどだけにしぼる。ライブでは、服をその場でカッティングしたり、縫ったりしての ドレスがメタモルフォーゼするようなパフォーマンスをする事にした。

私がボーカルと作詞作曲、つぐみちゃんが作曲とキーボードと、曲のアレンジ、パフォーマーは、その時の縫製アシスタントをやってくれてた、なつきちゃんともえちゃん。ふたりは、双子のダイアン・アーバスのイメージで。

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超濃いめのメイクで、アー写!笑


みんなでミシンの前でミーティング中。

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そして。


さっそくお声がかかったのは、ハリウッドのクラブ。

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主人公はもちろん、ミシン!!

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小さいクラブだったので、即ソールドアウト!

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ケンジくんがギターで、特別参加。

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立体裁断のパフォーマンスを披露

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「サイズだけが問題」という歌は、折り畳みの木の定規でのダンス

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また、ロートレアモンのコウモリ傘とミシンが、解剖台の上で出会うという有名なシュルレアリズムの詩があるのですが、その楽曲も作った。

タイトルは「解剖台で逢いましょう」

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(どんだけ、この詩がわかる人がいたのか?疑問はあるものの。苦笑)

それを歌いながら、傘を切り刻んで、最終的にはスカーフにしたりとか。

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また演歌「汚れの首輪」では、津軽三味線プレイヤー、マイク・ペニー君もゲスト参加してもらって、ソロ演奏。(彼は日本でのコンテストでも賞をもらった事があるくらい、上手い!)素晴らしかった。

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ライブはすこぶる好評で、みんな楽しんでくれたみたいで、私も嬉しかった。


そして、このシスターズはその後、ウヨ曲折ありましたが、今でも続いているんです。

2012年、これを始めた時はこんなに長く続くプロジェクトになろうとは、思いもしませんでした。それまでのような行き当たりばったりのプロジェクトではなく、長く続ける事で、時間軸を意識したやり方もあるんだなあと、また別の視点からの学びになりました。

ちなみに、今のシスターズはシンセなしで、ミシンのノイズのサンプリングだけで、楽曲を作っています。

最近のシスターズに関しては、お話しする事が膨大にあるので、後日あらためて、お話しさせてください。

では、今回はこの辺で!!

L*

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