初めてのインターネットは、銀河鉄道999に乗るような気持ちだった
唐突だが、私は銀河鉄道999が大好きだ。機械化が進む地球で、主人公の星野哲郎が機械伯爵に最愛の母を殺されて、復讐のために機械の体を手に入れるために、絶世の美女メーテルと銀河鉄道999に乗って旅をする壮大な物語である。哲郎が999に初めて乗り込むシーンはハラハラドキドキで、アニメなのに手に汗握ってドキドキしながら見ていた。
私にとってインターネットも、999に負けないくらい、いやもっと現実的な機械化の初体験であった。
会社では、<これからの時代は、検索はヤホオでインターネッツだ!>とナイツよりもある意味時代の最先端を行く、会社のおじさんが鼻を膨らませて言っていたのが忘れられない。そして何を検索するのかといえば、<アットマーク>やら<アンダーバー>を人差し指タイプで調べて、<このマークはメールの住所をつなぐんだな>とか<ほら!アンダーバーはシフトの『ろ』だぞ!>と女子高生のようにはしゃぎながら、私達に教えてくれた。その後急速にインターネッツを使いこなしたおじさんは、会社でエロサイトを盗み見して、始末書送りになった。ある意味すごい勉強家だ。
旅行会社という仕事上 今までは地図帳で調べたり、JRの駅名を時刻表で鉄道マニアの様に探しまくったり、膨大な紙の資料からホテル情報や、観光情報などを引っ張り出したり、差し替えしたりしていた作業がこの機械の箱一つで全て完了するのだ!さらば指サック!
当初、自宅でネットに繋ぐとなると、電話回線でコードつなぐ。これ、本当にぐちゃぐちゃのジャングルの様になる。仕方ないからリボンとかで、コードをかわゆく蝶々結びして束ねてみた。おしゃんていなネット回線だ。
プッシュ式で電話をかける要領でダイヤルアップで<ピポパ>と電話が発信され、その後、ファックス音のような<ピーヒャラヒャラ>と音頭が始まり、それから <グァーーーーゴゴゴゴゴゴゴ>と地響きをならしながら電車がトンネルを抜けて行くような音がしてインターネット回線という線路に繋がる。
そこまで所要時間約5分、ひどいときは電話回線が全然繋がらず、ネット繋がらない難民になっていた。やっとの思いで繋がっても、途中でぷつんと切れてしまったり、固まるのは当たり前。画面移動も1ページめくるのに、ジジジジと自分で本のページめくるより重くて、これは何の意味があるんだろうと思いながらも、シュレッターに紙が飲み込まれていくのをぼんやり見るように、画面が変わるのをじっと見つめていた。それもいとをかしな時代だ。
時代は巡り、今やネットはスマホという更に小さな電話もネットもつながる、ドラえもんが4次元ポケットから出してくれそうな機器になった。これからは5Gの時代もやってくる。あのおじさん世代ならWIFIをウィッフィーとミッフィーの親戚の様に呼び、5Gをゴジだぞ!ゴジ!とコジコジみたいに楽し気に自慢してくれるのだろう。
両手でポチポチたたいていたキーボードは、画面上で指でタッチ、スワイプの世界になり、今時の子どもはデスクトップ画面でも、指タッチして、グイグイスワイプしようとして、動かないじゃん壊れていると言う。
音楽も映画も聞きたいことも、『アレクサ』『シュリ』『OKグーグル』と
ドラクエの召喚魔法の様に声で呼び起せば、ハンズフリーで収集できる。
ジジジと鈍い音でめくられているページをじっと見ていたあの頃よりも、
今の技術の方が数万倍凄いのに、初めてのドキドキワクワク感が薄れている気がするのは、時代がの流れが異様に速すぎるからなのだろうか?
機械化が進むにつれて、自分の心も機械化になってしまってるみたいでちょっぴりおセンチになってしまうのだ。
今夜は銀河鉄道999を見て、人間の体の尊さを学び、機械の心にならないよう、哲郎を応援するとしよう。