(掌編小説)三毛猫のメリークリスマス
忘年会の帰り道。街がキラキラしている。明日はクリスマスイブか。面白くないなあ。実につまらない。私は急ぎ足で電車に乗って自分の駅に着くと、コンビニで安い赤ワインにチーズと唐揚げを買って自分のマンションに向かった。身を切るような風の中、エントランスに滑り込むと私の目の前に小さなサンタクロースが立っていた。いや、サンタクロースに見えた彼女は、真っ赤なコートに白い動物用のキャリーバッグを持った女の子だった。彼女は私を見上げて言った。
「マユミ叔母さん?」
中学生くらい?私は少し身をかがめて彼女を見た。姉に似ていた。
「もしかしたら……そう、ユカちゃん?マナミの子の」
「うん」
姉の子供、ユカちゃんはうつむいたままうなずいた。外は雪が降りそうなくらい寒い。
「大きくなったねえ。とにかく家に入ろう。私一人だから」
私はユカちゃんを部屋に招き入れると、二人掛けのソファに座らせた。彼女が大事そうに抱えていたキャリーバッグの中から猫の声。
「猫?」
私がそう聞くと、ユカちゃんはうなずいてバッグを開け、そこそこ大きな三毛猫ちゃんをひっぱり出した。三毛猫ちゃんは慌ててバッグの中に戻ろうとしたが、ユカちゃんはギュッと抱きしめて頬ずりした。
テーブルの上にコンビニで買った唐揚げとチーズを置いて、冷蔵庫の野菜で簡単なサラダを作って出すと、私はワインを開けた。ユカちゃんはホットココア。かわいいね。三毛猫ちゃんには何も無い。うーん。
「さて。どうしてここに来たのかな?」
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