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信州読書会に提出した読書感想文を掲載

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#ドストエフスキー

ドストエフスキー著『罪と罰』上巻 読書感想文

ドストエフスキー著『罪と罰』上巻 読書感想文

引用始め

「話はゆっくりしましょうよ!」
そう言うと、彼は急にどぎまぎして、真っ青になった。またしてもさっきの恐ろしい触感が死のような冷たさで彼の心を通りぬけたのだ。またしても彼はおそろしいほどはっきりとさとったのだ、いま彼がおそろしい嘘を言ったことを、そして今となってはゆっくり話をする機会などは永久に来ないばかりか、もうこれ以上どんなことも、誰ともぜったいに語りあうことができないことを。(p.

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ドストエフスキー著『地下室の手記』読書感想文

ドストエフスキー著『地下室の手記』読書感想文

《美にして崇高なるもの》を追い求め続けた男は、それがこうじて屈辱感を快楽として味わうようになる。物語前半部で語られる、彼が快楽を得る為になされる様々な奇行や妄想は、笑えるが、笑えない。自身を保つ為に行われるそれらは、決して私にとって他人事ではなかった。

彼が披露する思想、哲学は確かに高尚だ。
だが、彼が追い求める《美にして崇高なるもの》とは、彼にとっては実生活からの逃げ道であり、思想は彼を孤独に

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