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発達障害・大人ADHDの診断 その7~先駆者に聞く障害診断の実際~

私は2年前、37歳のときにADHD不注意優勢型の診断を受けました。大人の発達障害の診断について、よくご質問をいただきますので、私が診断を受けた経緯を何回かにわたってお伝えしたいと思います。今回は、私が診断を受けることを決めたきっかけについて書きました。


◾️発達障害・大人ADHDの診断 その1~私ってADHD?~
◾️発達障害・大人ADHDの診断 その2~心療内科でのカウンセリング〜
◾️発達障害・大人ADHDの診断 その3~職場へのカミングアウトを決めたわけ~
◾️発達障害・大人ADHDの診断 その4~職場に障害を伝えるときに大切だと思うこと~
◾️発達障害・大人ADHDの診断 その5~私が教員を退職したわけ~
◾️発達障害・大人ADHDの診断 その6~私が診断を勧められたわけ~


ライターの仕事をゲットするべく参加したマッチングイベントになぜか「うっかりカウンセラー」の肩書きで出展した私。ブースには発達障害の当事者も多数お立ち寄りくださるという展開になった。


「見えない障害」のひとつとも言われている発達障害。見た目にはわからないけれど、こんなに多くの方が発達障害当事者として「人に話したい」と思っておられるのだなと感じた。

深刻な表情で来られる方も多い中、「いやー、僕実は昨年、ADHDの診断が出まして。」と若干テンション高めな男性、ひろくんがやってきたのは、出展2日目のこと。ひろくんは椅子に座るなり、自分のADHDぶりを話し始めたのだった。



ADHDうっかり男子と意気投合するの巻

話を聞くと、ひろくんと私は

・片づけられない
・うっかりミスが多い
・時間を守るのが苦手
・社交的
・同い年

など、共通点多数。オープンマインドすぎる私たちは、すっかり意気投合し、会って数分で親友みたいな距離感になっていた。


ひろくんは、発達障害の可能性を奥様に指摘されたとのこと。職場でもうまくいかない部分があったため、大人の発達障害を専門に見てくれる外来への受診を決めた。本人より、奥様が相当参ってしまっていたらしい。

自分のうっかりについて次々と明るく話すひろくんだったが「こんなにADHDのことを楽しく話せたのは初めて」とうれしそうにされていた。奥様との間ではいろいろと大変だったのかもしれない。



つながらない電話にアイドルのコンサートチケット予約を思う

ひろくんご夫婦は早速受診のためにクリニックへ予約を取ろうとなったそうなのだが、診断が出るかどうか以前に、初診の予約が全然取れなかった。

聞けば奥様が見つけてきた病院はNHKの発達障害番組の監修を行ってるような、今(当時)大人の発達障害に関して最も熱い(?)クリニックだったそうで、初診を受けるための電話受付が、1ヶ月に一日だけしかない。そしてつながったころにはもう予約がいっぱいになってしまっているという状況。

これ、この病院だけの話ではなく、私も長男の自閉を見てもらえる病院を探した時に、そういうシステムになっているところもあった。(そしてそこの受診はあきらめた)

しかしひろくん夫婦はあきらめず、翌月の受付日は家電+スマホ2つを手にして電話受付スタート時間前に待機。時間になると同時に、手分けして電話をかけまくったという。まるでかつてのアイドルのコンサートチケットのための鬼電戦法のようだ。

そんなご夫婦の連携プレーにより、その後なんとか初診枠を奇跡的に勝ち取って、今はその人気病院へ通院されてるとのことだった。

▲当時のブログ記事に載せてたイラストより。

大人の発達障害 診断に必要なもの

このイベントで複数の方から仕事のために正式に診断を受けた方がいいと言われた私は、ひろくんに診断について聞いてみた。私はてっきり、診断は心理テストの数値によるところが大きいのかとも思っていたが、

・心理検査は参考であり、その数値だけでは大人の発達障害の診断は行われない
・子どもの頃からの特性であるという根拠(第三者の証言)が必要
→養育者の証言、過去の記録(育児日誌や通知表など)
・専門性のある医師によって総合的に判断される

とのことで、これはのちに自分の主治医やひろくん以外の診断を受けている当事者にも訊ねたところ、同じような返答が返ってきた。また、大人の発達障害というのは現在の状態だけを見て診断はできないので、精神科や心療内科であればどこでもできるというわけでない。診断書が書ける病院、医師は限られているとのことだった。(これは2017の話なので、今はまた変わってる部分もあるかも)


ちなみにヒロ君の場合は、ご実家が遠方で、しかも親御さんも整理整頓が苦手なこともあり、子どもの頃の資料を揃えるのも難しかったのだそう。そこで、担当医師はていねいに問診を重ね、最終的にはご家族とひろくん本人の証言を元に確定診断に至ったとのこと。だけどそこまでの道のりは、本当に大変だったと話してくれた。


「いやぁ、そんなこんなでなんとか太鼓判もらいました!」

と診断がおりた過程を話すひろくんの満面の笑みを見て、思わず

「よかったですねーーーーーー」

と返した私。

「なんか障害の確定診断出て盛り上がってるのって、私たち変ですね!!」

と言って2人で爆笑した。


そして去り際に、
「雨野さんも診断受ける必要あるなら僕の行ってる病院、お友達紹介制とかないか聞いてみます!!」
と言い残して、ひろくんは颯爽と帰って行った。


いやいや、隣の晩御飯か。


しかしその後、本当に聞いて下さったようで、「ダメでした…」とわざわざメールをくださったのだった。


病院探し、スタート。

そんなやりとりをする中で、私はカウンセラーの先生が以前、仕事の悩みについて相談していた私に「障害者雇用という選択肢もありますよ」と話してくれたことを思い出していた。


得意を伸ばして仕事にしたい!という挑戦は始まったばかりだが、もしそれがうまくいかなかった場合、自分が再びどこかの組織で働けるとは到底思えなかった。使う予定はないと思っていた福祉サービスのチケットが意外と近い未来に必要となるときが来るかもしれない…


診断の有無で自分自身が変わるわけではない。「書く」を仕事にするにも、しないにも、診断が必要なのであれば、診断書をもらってこよう。そう思った私は、コンサートチケット状態にならなくても予約ができるような大人の発達障害を診断してくれる病院を探すことにした。

つづく

※大人の発達障害の診断基準について
わかりやすい記事貼っておきます




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