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発達障害・大人ADHDの診断 その4~職場に障害を伝えるときに大切だと思うこと~

私は2年前、37歳のときにADHD不注意優勢型の診断を受けました。大人の発達障害の診断について、よくご質問をいただきますので、私が診断を受けた経緯を何回かにわたってお伝えしたいと思います。今回は、自分の特性ついて職場へ伝える際に私が大切だと思っているポイントについて、実例を元に書きました。

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前回までの内容はこちら
◾️発達障害・大人ADHDの診断 その1~私ってADHD?~
◾️発達障害・大人ADHDの診断 その2~心療内科でのカウンセリング〜
◾️発達障害・大人ADHDの診断 その3~職場へのカミングアウトを決めたわけ~

職場に自分のADHD傾向について、苦手なこと、得意なことなどを率直に話そう決めた理由のひとつは、自分の能力に適した校務分掌(学校の中の仕事分担)や担当を決めてもらえたらと思ったからだった。これは学校のことを考えてのことだったかというと、残念ながらそんなわけでなく。とにかく復職することに不安と恐怖しかなかったので、うっかり事案をなしにはできなくても、被害を最小限に食い止めたいと思っていたのだ。

そしてもうひとつは、このまま逃げるようにやめるのではなくて、もう一回挑戦したいという思いもあったから。ブログやSNSで同じADHD傾向の女性達と交流する中で、「うっかりでも大丈夫だよ」というメッセージを発信していたのは、きっとそれが自分が一番言ってほしい言葉だったのだと思う。だから、「仕事のできる自分」にあこがれて、人と比べて卑屈になっていた過去の自分ではなく、そのままの自分を隠さずに復職したいと思った。それが「うっかり女子でも大丈夫」って、本当の意味で自分に言ってあげられることになるんじゃないかと思ったのだ。


障害の有無に関わらず、自分の特性をチームに伝えることにはメリットがある

私は退職後、フリーでいろいろな仕事をしているのだが、中小企業のコンサルティングに3年間携わっていた。そこで、組織作りやチームビルディングを考えるとき、障害の有無に関わらず、チームのメンバーが個々の性質や課題に対してどのようなサポートが必要かを、お互いに共有できていることが非常に重要であると学んだ。それが、チームの信頼関係を構築し、一人ひとりの強みを最大限に生かすことにもつながっていく。だから私は、率直なありのままの自分を伝えることが、集団にとっても、お互いにとってもメリットになると思っている。

ただ、それではいつも周囲に「私ADHDなんです」と伝える必要があるかというと、そうではない。私が復職時に「ADHD傾向がある」と伝えたのは、私の職場が学校で、大多数の職員は発達障害についての知識と理解があるからだ。つまり、「ADHD・不注意優勢型」というワードを出して伝える方が、話が早いと思ったから。職場の環境や状況によっては、障害名を出すことで逆に話が見えなくなってしまうことだってあるだろう。大切なのは、障害があるかどうかを伝えることではなく、自分の特性を知ってもらうことなのだ。

職場に共有しておきたい自分についての4項目

それらを踏まえた上で、自分の特性を職場に伝えようと思った時に、具体的にはどんなことを伝えるとよいか、私が実際に伝えたことを元に4つにまとめてみた。

①自分が得意なこと
・初対面の人とでも打ち解けるのが早い
・企画・発案などアイディアが豊富
・絵を描くのが得意 など

②自分が苦手なこと
・数を数える
・物の管理
・人の名前を覚えること
・場所や位置を把握すること
・スケジュール管理 など

③苦手なことに対する自分なりの手立てや工夫

・ダブルチェックを行う
・首から収納ケースを下げる
・似顔絵と特徴をメモしたノートを作る
・グーグルカレンダーを使用する など

④助けて欲しいこと

・数の最終確認を一緒にしてほしい
・落とし物などあったら声をかけてほしい
・関わる人たちの写真入りの名簿がほしい
・何回も名前を聞いてしまうかもしれないことを知っていてもらう など

自分について可能な限り客観的な視点から、これらを伝えられたらいいのではないかと思う。この他に、自分の希望する仕事の内容や環境、配属なども「もし可能であれば」と言って伝えてみるといいかもしれない。

また、自分についての話をする前に、事前準備としてやっておくといいのはこちら。

①伝えたいことを書きだす
②実際にどんなふうに話すか練習しておく
③できれば誰かに聞いてもらう

これも、実際に私が管理職との面談の前にやったことである。自分が伝えたいと思う内容を一度文章にすることで、改めて自分を客観視することができるし、伝えたいことを落とさずに話すことができる。また、もし緊張してうまく話せなくても、メモを見せながら読み上げることができるし、それもだめならメモ自体をお渡しすることもできる。

私が知り合ったADHDの方の中には、イラスト付きで自分についての取り扱い説明書を作成し、職場で配りながら説明したという方もおられた。その話を聞いたとき、それって障害に関係なく、みんなでやったらすごくいいんじゃないかと思った。

職場に言ってみた、その後。

さて、カウンセラーの先生に相談しながら、管理職の面談の前にできる準備はしたつもりだったが、それでも前の日は緊張して眠ることができなかった。当日も緊張で心臓が飛び出しそうだったが、伝えるべきことを書き込んだA4の用紙を握り締め、なんとかお話することができた。

その後、いよいよ復帰初日。職員全員の前であいさつをさせていただく機会があったので、そこでもADHD傾向があることを含めて、管理職との面談で話した内容をお伝えした。声は震え、手のひらは汗ばみ、うまく説明できたとは到底思えなかったが、管理職はじめ、先生方は皆さんうなづきながら聞いて下さった。

この時のエピソードは別途詳細を書けたらと思うが、特に心に残っているのは、管理職から「苦手があってもそれについて本人が工夫しているということをみんなが理解していれば、サポートすることができるから大丈夫」と言っていただいたことだった。

まずは自分で自分を受け入れ、自分について率直に伝えることが、職場に限らず、人間関係を円滑に築いていくことにつながるのではないかと感じている。

つづく


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