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その対策、それだけで大丈夫?(原因不十分のロジックチェック)

こんにちは。ゴール・システム・コンサルティングの但田(たじた)です。言葉で意思疎通するための「7つのCLR(※)」の、考え方と使い方についての連載6回目です。このシリーズは、TOC(制約理論)の知識の有無に関係なく、お仕事や日頃のコミュニケーションに役立つ内容なので、多くの方にお読みいただけたら嬉しいです。

はじめに

今回からは、レベル3のCLR、つまり表現をより良くするためのCLRです。今回は「原因不十分のCLR」を詳しく見ていきます。(CLRのレベルについて詳しく知りたい方は連載4回目をご覧ください)

CLR(シーエルアール)とは…「Categories of Legitimate Reservations」という英語の略称で「言っていることが妥当で、筋が通っているかどうか」を検証するための7種類のチェックポイントのことです。
詳しくは連載1回目をご覧ください。

▼これまでの連載は、但田のマガジンからまとめてご覧いただけます。

CLR④原因不十分についての懸念
( cause insufficiency reservation )

結果を引き起こすための原因が足りているか?を確認する

CLRの4つめは「原因不十分(cause insufficiency)についての懸念」です(※この記事では「原因不十分のCLR」と略します)。
「原因不十分のCLR」は、2つの要素の因果関係が語られた時に「原因が足りているか?」を確認するCLRです。

因果関係とは、原因と結果の関係のことですが、原因と結果は一対一になるとは限りません。下図の例は、3つの原因がそろってはじめて「火がつく」結果が引き起こされる、という論理関係を示しています。

複数の原因がそろってはじめて結果が起きる因果関係の例
(当社ジョナコーステキストより引用)

なお、この図の楕円形は、結果を出すためには、すべての原因が必要であることを示しています。この図を音読すると「もし、可燃物があり、かつ、酸素があり、かつ、熱源があるならば、結果として、火がつく」と読み上げることができます。

もしも、この関係が「もし可燃物があるならば、結果として、火がつく」としか描かれていなければ、それは、原因が足りないということになります。
(実際の所、可燃物があるだけで火がついてしまったら、危なくて仕方ないですね・・・)

「原因不十分のCLR」の質問の例:何か足りなくない?

「原因不十分のCLR」で表現を精査した例
(H・ウィリアム・デトマー著『ゴールドラット博士の論理思考プロセス』
83ページ図4.7を参照し、筆者作成)

「原因不十分のCLR」について相手に質問をする時の基本形は「何か(原因が)足りなくありませんか?」や、「この原因だけで、その結果は起きますか?」です。

とはいえ、この質問をそのまま使ってうまくいくのは、作成したロジックの記述をチェックする時だけだと思います。

毎回くりかえして恐縮ですが、くれぐれも、相手との関係性を考慮せずに、突然この質問を発したりしないように注意しましょう。普通に会話している時に「え、今の論理関係、何か足りなくないですか?」とか言われたら、相手は不愉快になってしまうかもしれませんので…。

「原因不十分のCLR」は何のために使うのか?

冒頭でも述べましたが「原因不十分のCLR」は、レベル3のCLR=表現をより良くするためのCLRです。

因果関係のロジックを記述し、論理関係を音読して違和感を覚えた時に「何か原因が足りないのでは?」という観点でチェックすることは、因果関係をより的確に描く上でとても有効です。

たとえば、下図の左側の記述を見ると、どんな”お母さん”のイメージが浮かぶでしょうか?「もしも、お母さんに呼ばれてすぐにリビングに行かないならば、結果として、お母さんが怒る」
・・・怒りやすい怖そうなお母さん像が脳裏に浮かんできませんか?

「原因不十分のCLR」で表現を精査した例(筆者作成)

続いて、右側の記述を見るとどうでしょう?「もしも、お母さんに呼ばれてすぐにリビングに行かない、かつ、夜ご飯の唐揚げが今できあがったばかりであるならば、結果として、お母さんが怒る」
・・・少しでも美味しいうちに子供にごはんを食べさせたいと願っている、子供想いのお母さんの印象に変わったりしませんか?

このように、原因不十分のまま、因果関係で何かを説明しようとすると、相手には意図がうまく伝わらないことが多いです。「原因不十分」のCLRは、自分の伝え方をセルフチェックする観点としても役に立ちます。

「原因不十分のCLR」の、ビジネスでの活用:結果を起こすための条件が足りているかをチェックする

「原因不十分のCLR」が実務上とても大切なのは、この観点が、「ポジティブな結果を起こしたい時」と「ネガティブな結果を防ぎたい時」のどちらにも重要だからです。

複数の原因がそろって初めて、結果が起きる」という論理関係の状況で、結果を引き起こしたいのであれば、その原因全てを揃えることが必要です。

一方、結果を防ぎたいのであれば、原因をひとつでも無効にできれば良い、ということになります。先ほどの図をもう一度見てみましょう。

「原因不十分のCLR」で表現を精査した例(H・ウィリアム・デトマー著『ゴールドラット博士の論理思考プロセス』 83ページ図4.7を参照し、筆者作成)

このケースでは、車が濡れてしまうことを防ぎたいのであれば、「車を路上に駐車する」ことと、「雨が降っていること」のどちらかひとつをブロックすればOKです。つまり、雨が降っている時には、屋根があるところに停めておけば良い、ということになります。

以上、お話してきましたが、ビジネスで活用する際の「原因不十分のCLR」の有用性は、この次の「追加的な原因のCLR」と対比して理解することで、しっかり腹落ちしてくるところだと思います。

お待たせしてしまって恐縮ですが、次回は「追加的なCLR」をとりあげますので、ぜひ引き続きご覧ください。

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