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ボトルネックの背後にあるメカニズムを理解する「制約の基本構造」(TOC制約を科学する⑤第3部:組織の中で制約を徹底活用する)

こんにちは、ゴール・システム・コンサルティングです。代表取締役村上悟のTOC(制約理論)についての連載「制約を科学する」5回目をお届けします。TOCの基本から始まり、制約とは何かを深く考察するシリーズになっています。今回は組織の制約を徹底活用する時に役に立つ「制約の基本構造」について、小説『ザ・ゴール』を例に解説します!

▼これまでの連載は、村上のマガジンからご覧いただけます。

物理的な制約(ボトルネック)の背後にあるメカニズムを理解する「制約の基本構造」

今回のシリーズでは、まず理解して欲しい「制約とは何か」から順番に説明してきました。いよいよ、より本質的なアプローチである「組織をどのように改革してスループットを向上するか」という話に入ってゆきます。

たくさんの人が、複数の部署や事業部に分かれて仕事をしているそれなりの規模の会社組織にTOC手法を適用して改革を実現させるためには「制約を正しく捉えること」がとても大切です。ここからは、組織にTOC手法を適用して、改革を行う場合の「制約を正しく捉える具体的な方法」について考えてゆきましょう。

▼「継続的改善の5ステップ(POOGI)」と「TOC思考プロセス」は別々に使う?!

さて、制約を徹底活用することはTOCの基本原理であり、そのために「継続的改善の5ステップ(POOGI)」があるということは、第1回でお話した通りです。

そしてTOCでは、組織の問題解決をするための手法として「TOC思考プロセス」があります。TOC思考プロセスは、組織の問題構造を明らかにし、解決するためのソリューションとその達成順序まで、ロジックツリーを作成しながら考えていく手法です。

TOCを学んでいらっしゃる方で、この「継続的改善の5ステップ(POOGI)」と「TOC思考プロセス」の存在をご存じの方も多いことでしょう。

さて、この2つの関係について皆さんは、物理的なボトルネックは「5フォーカシングステップ(継続的改善の5ステップ)」で解決し、組織に横たわる根深い問題や市場開拓の問題は「TOC思考プロセス」で対処するのだと理解していませんか。実際のところ、この2つについては別々に話題になることが多く、2つを関係付けた説明はあまり見かけません。

ここで改めておさらいしておきましょう。
TOCでは組織のゴール達成を阻害している物理的な存在を「制約」と呼んでいます。そして、物理的な制約(ボトルネック)の背後には、組織の方針や評価基準が影響していることが多いのです。その事に気づいたゴールドラット博士は、このように目に見えない、「組織の制約を生み出す原因」を可視化して見つけだすために「TOC思考プロセス」を開発しました。

しかし、だからといって博士は問題の種類によって解き方が違うとは教えてはいません。物理的なボトルネックを5ステップで扱って、組織問題をTOC思考プロセスで解決する、という風に切り離して考えてしまうと、その組織で「なぜ制約が生まれるか」というメカニズムが、いつまで経っても見えて来ない、ということになってしまいます。

▼ 制約の変化をダイナミックに捉える「制約の基本構造」

要するに、TOC思考プロセスは、その論理構造という仕組みを使って、常に「制約の変化(※)」をダイナミック(タイムリー)に捉えるための仕組みだと理解するべきなのです。私たちゴール・システム・コンサルティングでは、それを「制約の基本構造」というフレームワークで捉えるようにしています。

※「制約が変化する」ということはごく自然に起きることです。例えば小説『ザ・ゴール』でも、現場でのカイゼンが進み、ボトルネック工程の生産量が需要よりも多くなったことで、制約は市場に移っていました。景気の上がり下がりによって、需給のバランスが変化することでも、制約は社内、社外を行ったり来たりするということが日々発生します。

制約の基本構造

「制約の基本構造」は、TOCの基本的な考え方である『多くの問題を発生させる「制約」の後ろ側には「人間の行動」と、その行動を取らざるを得ない「対立(コンフリクト)」が存在する』という事をロジカル(論理的)に見える化するためのフォーマットになっています。

DBRやCCPMといったフローソリューションは、物理的な制約を徹底活用する、いわゆるボトルネックを押し広げる具体的な方法ですが、「制約の基本構造」を眺めてみると、制約を押し広げる動きとは逆方向の、制約を生み出している「見えないパワー」が存在していることが良く分かります。

▼ 小説『ザ・ゴール』の具体例で「制約の基本構造」を理解する 

「制約の基本構造」を初めて見る方も多いと思うので、小説『ザ・ゴール』の例で紹介しましょう。主人公のアレックスたちが、NCX10というマシンがボトルネックであると認識した時点での「制約の基本構造」を作ってみました。

小説『ザ・ゴール』を「制約の基本構造」で考える

まず、上から2段目の「目に見える物理的な制約」ですが、小説ザ・ゴールではNCX10がボトルネックとして存在することで、仕掛品が山ほど溜まったり納期遅延が発生したりして、収益があがらず・・・果ては3ヶ月後の工場閉鎖予告を受ける、などという多くの問題が発生していました。

そして、NCX10がボトルネックとして存在し、仕掛品が山ほど溜まっている原因になっている「行動」は、図の真ん中のところ、「NCX10が能力的に厳しくともネック工程として特別扱いしない」という事、具体的には、「従業員の昼食休憩に合わせて設備を休止する」、「(生産性が上がったように見える)今すぐには売れない部品を加工する」、「不良品をチェックせずにNCX10で加工する」という「行動」をとっていた事が原因でした。

ここまではボトルネックを発生させる「行動」を見てきましたが、その行動の背後には、組織の方針や評価の話があるのです。『ザ・ゴール』の例でさらに掘り下げてみましょう。

制約を発生させるような「行動」を引き起こしているのは、制約工程(ボトルネック)が工場全体のスループットを決めている事、そして制約(ボトルネック)から発生した遅延が工場全体の遅延を引き起こすこと、など、制約(ボトルネック)がどう振る舞うかの「原理」が分かっていないことが原因だったのです。

「制約の原理」が分かっていなかったからこそ、「見かけの生産性(コストダウン)」を追いかけて工場の全従業員や全設備を等しく動かすことを追求していました、ですから昼休みにボトルネックであるNCX10を動かすなんていう発想は全く出てこなかった訳です。しかし、制約(ボトルネック)の振る舞いが理解できて以降は考え方が変わり、本当に集中すべき「重点」が分かって行動が変わったのでした。

このように「制約の基本構造」で理解することで、TOC思考プロセスと、継続的改善の5ステップを別個に考えたりすることなく、ボトルネックが生まれる背景をしっかり理解することが可能になります。今回は分かりやすくするために、小説『ザ・ゴール』の例でお話ししましたが、開発や営業・マーケティング部署でも、それらを合わせた「企業全体」でも同じように適用する事が可能ですので、ぜひ、多くの方に役立てていただきたいです。

《コラム》1983年刊行のザ・ゴールの限界

小説『ザ・ゴール』では企業や組織が、見かけの生産性を重視する理由として、売れなくとも生産量を最大化することでコストダウンが達成されたように見える「個別原価計算のメカニズム」に代表される「方針」や「評価」の問題がハイライトされ、いわゆるP(Policy、方針)・M(Measurement、評価基準)・B(Behavior、行動)のメカニズムの典型例として登場します。

評価の仕方を変えれば人間の行動が変わって、結果が変わるという教えは人間の行動を説明するロジック(論理)としては決して間違いではありません。しかし、ゴールドラット博士がPMBの典型例として主張した、個別原価計算の問題として捉えてみると、様相がいささか変わって見えます。

ゴールドラット博士は1983年に「Cost Accounting - Public Enemy Number One of the Productivity」という論文をAPICS(アメリカ生産管理在庫管理学会)に投稿し、原価計算が生産性改善を妨げると主張しました。確かに当時は、直接原価計算やABC・ABMなど会計方式の議論が盛んでしたし、原価計算がもたらす誤謬は大きく、博士の当時の主張は決して間違ってはいなかったと思います。

しかし、2008年のリーマンショック(サブプライムショック)を経た日本の産業界では、在庫は資産にあらず負債と捉えるのが常識となりました。ですから、今ゴールドラット博士の教えを改めて振り返ってみると、在庫は負債でありながら、生産性を引き上げるという十字架はそのまま、さらに状況は混沌としているのです。

ですからその意味で、個別原価計算を巡る議論は、いかなる時にも変わらずに適用可能なPMBの「原理」として考えるのではなく、条件や環境が変われば適用条件が変化する「原則」として考えるのが妥当なのだと思います。

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