見出し画像

TOCの知識体系と4 pillars(4つの柱)

こんにちは、ゴール・システム・コンサルティング&リ・デザイン研究所です。2021年7月より私たちの会社にジョインする、渡辺薫さんの連載第8回です。渡辺さんの連載は、毎週火曜日更新です。

これまでの連載は、以下のマガジンからご覧いただけます。

前回のnoteでは、「TOCを知識体系として上手に使いこなせていない人も少なくない」という私の認識を示しました。一方、私はTOCの知識体系も「知識体系として分かりにくい」ものであると感じています。

TOCに含まれる個別の知識や手法が分かりにくい、という意味ではありません。個別の知識や手法はシンプルで分かりやすいけれども、知識体系全体としてみたときに「何となく分かりにくい」と感じてしまう、ということです。

TOCの専門家は、TOCの知識体系を「明確な構造をもつ単一の体系」として認識し、説明します。一方、実際に使おうとすると、性格の異なる3種類の「知識・手法」が存在しているように見えます。このことが「知識体系としての分かりにくさ」の要因ではないかと思います。

性格の異なる3種類の「知識・手法」というのは、私個人の整理であり、これが正解であるとか、TOCの正当な理論であるとかと、主張するつもりはありません。TOCを学ぶ人や実践しようとする人にとっては、そう考えると学びやすく、取り組み易くなるのではないかと考えて提示するものです。

渡辺薫による整理は以下の通りです。

グループ1
スループット向上のための具体的手法(制約にフォーカス)
書籍「ザ・ゴール」「クリティカルチェーン」「ザ・クリスタルボール」

グループ2
課題解決のための考えかた(論理的に考える)
書籍「ザ・ゴール2」「チェンジ・ザ・ルール」

グループ3
課題解決のための基本姿勢/より良い人生をおくるための基本姿勢
書籍「ザ・チョイス」

*書籍というのは、その知識・手法が紹介されている故エリヤフ・ゴールドラット博士の著書です。

私自身はTOCの知識体系を「明確な構造をもつ単一の体系」として理解できているつもりです。その理解に至るまでは、相当に大変でした。同時に、それを説明するは、とてつもなく難しいとも感じています。TOCの専門家にとっては、知識体系を「明確な構造をもつ単一の体系」として扱う姿勢が自然だと思います。一方、学ぶ側、実践する側にとっては、前述のように3種類の「知識・手法」がある、と考えるほうが分かりやすいと思います。

この認識のGAPを埋めて、より多くの人が「TOCを実践し、大きな成果を上げ、充実した人生を送れる」ようにすることも、TOCの専門家・コンサルタントの役割である、と私は考えています

また、知識体系の中で誤解を招きやすいと私が感じているのが、「グループ3:課題解決のための基本姿勢/より良い人生をおくるための基本姿勢」です。

この中に、TOCで4 pillars (4つの柱)と呼ばれるものがあります。

● Inherent Simplicity(ものごとは、そもそもシンプルである)
● Every Conflict Can Be Removed(どんな対立も解消できる)
● People Are Good(人は、そもそも善良である)
● Never Say “I KNOW”(決して知っているとは言わない)

TOCを学び始めたころ、私は、これをどのように理解すべきか悩み、Rami Goldratt氏をはじめ、多くのTOCの専門家(すべて外国人)と議論してきました。その結果、4つの柱とは「これが真実である」と主張するものではなく、「課題解決のための基本姿勢/より良い人生をおくるための基本姿勢」と理解すべきである、と考えるに至りました。私の理解と表現は以下の通りです。

Inherent Simplicity(ものごとは、そもそもシンプルである)
そう考えないと…「部分最適にとどまってしまう」「考える糸口が見つからない」

Every Conflict Can Be Removed(どんな対立も解消できる)
そう考えないと…「安易な妥協策で満足してしまう」「対立解消に立ち向かう元気が出ない」

People Are Good(人は、そもそも善良である)
そう考えないと…「人を責めてしまう」「問題解決につながらない」

Never Say “I KNOW”(決して知っているとは言わない)
そう考えないと…「自分の成果・結果に満足してしまう」「成長や改善が停滞してしまう」

このように表現するほうが、分かりやすく、納得しやすいのではないかと思いますが、いかがでしょうか?

渡辺 薫 (わたなべ かおる)
ゴール・システム・コンサルティング株式会社 
チーフ・カスタマーサクセス・オフィサー(CCSO)※2021年7月より就任予定

プロフィール
ハイテク企業でR&D、経営企画、マーケティング等を経験したのち、90年代のデジタルマーケティングの黎明期にはエバンジェリスト&コンサルタントとして活動。その後、外資系ITサービス企業等でITサービスのマーケティング、コンサルティング等に従事し、2010年日立製作所に入社。超上流工程のコンサルティング手法の開発と指導にあたるとともに、日立グループ内でのTOC活用に尽力。2018年からは日立製作所社会イノベーション事業推進本部エグゼクティブSIBストラテジストとして、日立グループのデジタルトランスフォーメーションの戦略策定・実行のサポートと人財育成に注力し2021年3月に退任。
TOCICO認定Jonah(思考プロセス)
TOCICIOからThe TOC Company of the Year を受賞(2018年)
TOCICO理事(2018年~)
日本TOC推進協議会顧問(2018年から2021まで理事長を務める)
(TOCICO=Theory of Constraints International Certificate Organization)

▼当記事へのご意見ご感想や、サービス内容についてのお問い合わせなど、以下の問合せフォームより、お気軽にご連絡ください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?