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続・乗り過ごしはスタイルである

自分が好き勝手に作ったものが一人歩きを始め、それが自分をどこかに連れて行く。この体験は中毒性がある。仕事でもない表現活動をし続けるモチベーションはそれしかない。

しかし、それを冷笑する人も世の中には存在する。だが、自分では何も表現しない人の冷笑など気にする必要はない。長くひとつのことを続けていく人の方がよっぽど素晴らしいのだ。


さて、Miss my stop が2017年9月にtwitter上で創刊されて以来、4年以上の月日が流れた。「乗り過ごしはスタイルである」を標榜するこの雑誌には表紙しかない。それには理由がある。

突っ込みどころの多い表紙を見た読者が、記事の内容を妄想することを楽しむ。そして膨らませた妄想を俺にリプライすることで、その雑誌の中身が創り上げられていく。つまり、読者の想像力と遊び心が頼りのインタラクティブな雑誌という実験的な試みだったのだ。

※ご存知ない方は、こちらを参照していただけると実際に読者とどんなやりとりが繰り広げられていたのかがよくわかるかと思います。


数年前、いつものように読者とのやりとりを繰り広げていた時に、作家の浅生鴨さんから「いつかMiss my stopが作れたら面白いのになあ」というコメントをいただいた。俺もいつかは「どこか鉄道会社が乗っかって来ないかなあ」「どこかの出版社がやらせてくれないかなあ」「実際に本にしてみたいなあ」と思っていたので、このコメントはとても嬉しかったことを覚えている。


時は流れて2020年。

twitterで好評を博しているコンテンツ「寅ちゃんはなに考えてるの?」を本にして出版するというプロジェクトが立ち上がった。かもさんの会社ネコノスから出版されるこの本は、親愛なる友人の前田将多さんと飼い猫の寅ちゃんによる、写真集のような哲学本だ。

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https://asokamo.shop-pro.jp/?pid=162419187


浅生鴨・前田将多・田中泰延・上田豪・ムラ係長・内山高之。

それぞれの職能を持ち寄り、真剣に遊ぶおっさんたちのチーム。コスト計算できる人間が見当たらない気がするのはきっと気のせいだ。

一年がかりのこの狂ったプロジェクトを通じて知ったことは、思っていた以上に「かもさんは利益よりも面白さを優先する人」だということ。何しろ当初の制作コンセプトが「狂った本をつくろう」だったのだ。

おかげで初めのプランで印刷見積もりを取ったらとんでもない金額になったのは笑うしかなかった。そしてある程度現実味のあるプランでプロジェクトは進んでいったのだが、それでも「原価計算は本当に大丈夫なのか」「鴨さんが赤字にならないか」「猫に会社を潰される羽目にならないか」みんな本当に心配していた。

しかし、プロジェクトメンバーみんなでプロモーション活動を頑張ったおかげで、「事前予約が必要な本革装丁の特装版」の受注は、ある程度順調に進んだと聞いて、これでメルカリにプレミアム価格で横流ししなくて済むと関係者一同胸をなで下ろしています。※ 通常版はまだまだお買い求めできますが数に限りがありますのでお早目に。


そんな寅ちゃん本の怒涛のような制作が終わり、入稿を済ませてあとは印刷会社からの納品を待つだけとなっていた11月10日(水)、鴨さんからメッセージが飛んできた。

そこには「11/23の文学フリマにMiss my stopを並べたいので、これまでのものをすべて束ねて冊子にしましょう」とあった。思わず「たいらのまさかの!」とつぶやくほど突然の申し出だったが、迷わず即決した。ただ、印刷間に合うのかというスケジュールの不安を覚えたのはここだけの話だ。

遊びである以上、真剣に取り組まねばならない。そして困難な状況こそ真剣に遊ばなくてはならない。能がない男はせめてNOがない男でいなければならない。なにしろこれは仕事じゃないのだ。

俺は慌ててこれまでのMissmystopのデータを見直した。月ごとに一枚ずつプリントアウトしてテーブルに並べていく。あらためて雑誌原寸大で並べてみるとなかなか壮観だ。


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しかし、時系列に並べていて思い出した。やばい。サボった月が5ヶ月分あるのをすっかり忘れていた。飽きっぽさを理由に休刊の危機と言いつつサボったツケが回ってきた。常在戦場。いつでも準備しておけという言葉が脳裏に浮かぶ。

歯抜けの状態のまま本にするなんて格好がつかない。11日・12日の二日間でデザインの微調整をするとともに版下を制作し、同時に抜けていた5ヶ月分を新たに制作することにした。幸い写真のストックはある。二週間前に撮影しておいてよかった。男が格好つけなあかん時に格好つけんでどうするんなら。


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web媒体はグラフィック媒体と違ってあとでいくらでも修正や差し替えが効くからいいよなあなんてこと、揶揄含みでグラフィックデザイナーはよく言うのだが、過去に遡って雑誌を発行しなければならない羽目になった今となっては救われたという思いしかない。

どうにか全ての版下データを仕上げ鴨さんに送信した。しばらくして「ちょうど1ページ余るから表4を作りましょう」と返事が来た。添付ファイルは鴨さんがまとめてくれた表4の原稿内容の叩き台だった。Missmystop 初の表4。そりゃあそうだ。これまで表紙しかない雑誌だったのだから。


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表紙と同様にバカバカしい表4のデザインをしながら、俺はなんで4年以上も仕事でもないこんなことを続けて来れたのだろうかと考えていた。でも、結局は「楽しみにしてくれる人がいるから」「遊んでくれる人がいるから」それだけなんだよね。

なので、せっかく本になることだし、これまでMissmystopに連載を持った方や対談ゲストに来てくれた方、これまでリプライをくれた方々などに表4で感謝を表しておきたかった。

とはいえ紙面には限りがあるので、私と付き合いの長い方や実際にお会いしている方々を優先しましたが、残念ながら名前が掲載できなかった方々にも同じように本当に感謝しています。これまで俺のくだらない遊びに付き合ってくれてありがとう。これでもう思い残すところはありません。普通のおっさんに戻ります。

表4の入稿データを送信し、ほどなくして鴨さんがtwitterで通販分の予約注文を取り始めた。そのタイムラインを眺めながら「Miss my stop が、文学フリマで鴨さんが並べる本の販促の一助になってくれれば」と願うとともに、一抹の不安が脳裏を過る。今回は鴨さん、ちゃんと印刷代がまかなえる価格設定と印刷部数にしてるだろうかという心配が消えない。


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入稿締め切りと印刷部数を確定させなければならない都合上、11/15(月)24:00で Miss my stop 通販分の購入予約は締め切りとなりました。締め切りを乗り過ごした方々は、11/23の文学フリマに足をお運びいただき、お買い求めください。(ネコノスの他の本と一緒にね)


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それから、この Miss my stop はキオスクでは売ってません。


※Miss my stop とは何か、どのように生まれたのかなど、もっと詳しく知りたい方はこちら

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