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【経営とビジネスのヒント】経営理念について②

今日は、経営理念の続きとして経営理念の中身について掘り下げていきたいと思います。ミッション(目的)の部分に該当しますので、ご参考いただけますと幸いです。経営理念①については、以下の記事をご参考ください。

それでは、本日は前回記載をした経営の目的

自社らしく、中長期的にお客様・世の中に貢献する

という部分を少し掘り下げていきたいと思います。


経営理念の分解(生成発展 と らしさ)

経営の目的について、私は「自社らしく、中長期的にお客様・世の中に貢献する」ということではないかと考えています。

経営の目的は経営理念の実現であるという前提に立って、具体的に考えていきたいと思います。

物事を具体化して考えるためには、いくつかの要素に分解して考えることをお薦めします。

「自社らしく、中長期的にお客様・世の中に貢献をする」という経営理念は、

①すべての企業に共通する原理原則(生成発展)

②企業固有の存在理由(らしさ) 

に分解されます。

この、①すべての企業に共通する原理原則と、②企業固有の存在理由(らしさ) を共に実現することが、経営の目的であると言えます。

では、それぞれについて簡単に説明をしたいと思います。

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①すべての企業に共通する原理原則(生成発展)


経営理念の要素である、①すべての企業に共通する原理原則 についてですが、これは「中長期的にお客様・ひいては世の中に貢献する」ということです。

松下幸之助さんがおっしゃられている「生成発展」に通ずるもので、松下さんも「実践経営哲学」という本で以下のようにおっしゃられております。

正しい経営理念というものは、単に経営者個人の主観的なものではなく、その根底に自然の理法、社会の理法といったものがなくてはならない。  ー 中略 ー                            
あえていうならば、私は限りない生成発展ということがその基本になるのではないかと思う。
この大自然、大宇宙は無限の過去から無限の未来にわって絶えざる生成発展を続けているのであり、その中にあって、人間社会、人間の共同生活も物心両面にわたって限りなく発展していくものだと思うのである。

 

松下さんは、ビジネスは世の中に貢献するものであれば自然にうまくいくようにできている、ともおっしゃられています。

お客様・世の中に貢献をするということは、世の中の発展・生成発展を促進する機能を担うので、自然とうまくいくということだと思うのです。


■生成発展について

ここで、生成発展について簡単に触れておきたいと思います。およそ経営戦略には関係なさそうな道徳的なお話しだとお考えかもしれません。

ただ、実はそんなことはなく、非常に経営においても重要かつ理にかなったものなのです。生成発展とは、先ほどの松下さんのお言葉のように、宇宙の原理として宇宙も広がり続けているように物事は発展し続けるという考え方です。

そして、その世の中の発展に貢献するものであれば事業は自然にうまくいくようにできている。ということです。

生成発展というと、何か綺麗ごとっぽく感じる方もいらっしゃると思います。ただ、よくよく考えてみると当たり前の話なのです。

世の中に選ばれて貢献できなければ、売上が上がりません。利益は売上からしか生まれませんので、利益がなければ企業は継続できません。

ここで大切なのが、世の中が望んでいる発展の方向性です。この方向性を理解した上で貢献をしていかなければ選ばれることも、選ばれ続けることもできません。

お客様、世の中を洞察し、貢献できる商品サービスを提供していくことが、会社としてできる生成発展への貢献なのです。

お客様に貢献しようとしないで、なんとかごまかしてお客様に選んでもらい売上を上げようとする会社は短期的には存続できるかもしれません。ただ、中長期的に選ばれるとなるとどうでしょうか。お客様、社会を中長期的にだまし続けられることなどできるでしょうか。そして、仮にできたとしてそんな会社で働くことにエネルギーが湧くでしょうか

結局は、お客様から本当の意味で選ばれて、貢献することができないと続けられないということです。

お客様・社会に貢献しない会社は自然に淘汰されるという自然の原理原則です。中長期的に物事を考えると、取り繕うことなどできないということに気付くはずです。

本質的に価値を出して貢献しなければ、選ばれ続ける(売上を上げて利益を上げる)ことができないということです。


②企業固有の存在理由(らしさ)

今まで、共通する原理原則を見てきましたが

この「中長期的にお客様、社会に貢献をする」という部分をどのようにやるか、ということにその企業の独自性があります。

「この会社で」事業をやることの意味、は、企業固有の経営理念から生まれます。

中長期的にお客様・社会に貢献するということは、どの会社にも共通する原理原則の部分です。それを自社の「らしさ」「スタイル」によって実現するということが大切で、この「らしさ」は社員の方の働く原動力になります。

人間にも、それぞれ個性があって、その人らしさ、価値観があるように、会社にも、その会社のらしさ・価値観があり、それが働く原動力になるのです。

松下電器とソニーの例を見てみましょう。共に、お客様、社会にとても貢献をしていますが、貢献をするそれぞれの「らしさ」に違いがあります。

松下電器(現パナソニック)は水道哲学として、安価で良質な商品を広く世の中に広めることで貢献し、これに対してソニーは、愉快で自由闊達な工場ということで、創造性や新しいものを世の中に提供することによって貢献する、といったそれぞれの企業らしさがあるのです。

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これは、その会社の存在目的そのものであり、なぜその会社がその事業を営んでいるかということの意味になるのです。このことがその会社で働く人にとっての矜持・誇りとなり、働く原動力になるのだと思います。

この企業固有の存在理由(らしさ)の部分については、時代の変化とともに変わっていく部分もあるかもしれません。例えばソニーの例で言えば、今は創造性で世の中へ貢献するというよりは幾分トーンを落として画像認識センサーなどに集中することによってパフォーマンスを上げています。つまり、ウォークマンやプレイステーションなどを生み出してきた新規性はトーンダウンして選択と集中で高収益の事業展開を行っているように見えます。

企業らしさの水準というものは難しいバランスで、外部環境と内部環境のバランスの中で「らしさ」を残しながらもお客様・社会への貢献の仕方(選ばれ方)を軌道修正していくことも必要な場合もあります。時代の変化に応じて、商品サービスを一切変えずに、それが「自社らしさ」であるとしてしまうと外部環境の変化に対して硬直的な手しか打てずに結果として、「中長期的にお客様、社会に貢献する」ことができなくなってしまう可能性があります。

この「らしさ」については、企業の内部資源や歴史から生み出される企業の強みであることが多いように思います。この「らしさ」が強みになっている企業はとても強いです。「らしさ」が自己満足ではなく、実際にお客様に選ばれる客観的な「強み」となっているからです。そして、その「強み=らしさ」を原動力として、社員の方は誇りをもって良い仕事に励み更に腕を上げていくというサイクルが出来上がるということです。

これは、ビジョナリーカンパニー2で言うところの「弾み車」としてのとても重要な要素であると思います。(この弾み車については、別の機会に取り上げます)


まとめ

①経営の目的 = 経営理念の達成

②経営の目的は「自社らしく、中長期的にお客様・世の中に貢献をする」ではないか

③「自社らしく、中長期的にお客様・世の中に貢献をする」は、「らしさ」と「生成発展」に分解される

④「生成発展」は綺麗ごとではなく、厳然たる事実(貢献しなければ売上たたない ⇒存続できない ⇒当たり前)

⑤「らしさ」は企業のスタイル。働く矜持・働きがいの源泉になり得る


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