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【要約】性差・性別役割(著:青野篤子)

本文は、『ジェンダーの発達科学』より、第2章。

性差とは

  • セックスとジェンダー
     
    セックス…生まれつきの生物学的な差、男性でも女性でもない多様な性が存在している
     ジェンダー…生後に作られる社会文化的な性差

  • ジェンダーステレオタイプ
    ジェンダーステレオタイプは多くの国で類似していることが明らかになっている。即ち、
     男性…「能力」「行動力」「有能さ」、独立的、客観的、行動的、競争的、等
     女性…「美と従順」「温かさ・表出性」、やさしさ、他者の気持ちに敏感、信仰に厚い、等
    ただしジェンダーステレオタイプは時代に応じて少しずつ変化している。

  • 性差研究の歴史
    様々な能力(言語能力、視空間認知能力等)に関して知能検査を行う研究が多かった。統計学的な性差研究は推論の域を出ないため、メタ分析(次章)が行われるようになった。

性差の実態

  • メタ分析とは
    メタ分析とは、同一の現象に関する複数の研究結果を総合して何らかの要因に基づく差があるかどうかを判断する手統計的手法である。統計的指標としてはコーエン値(Cohen)を用いる。

  • 言語能力
    1974年のMaccoby&Jacklinのレビュー以来、言語能力の性差はかなり強固なものとして語り継がれてきたが、メタ分析によると結果は一貫していない。言語能力の性差が年齢の上昇と共に生じてくるものだとすると、経験や環境の方が関わっていると考えられる。

  • 数学的能力
    STEM分野は歴史的に女性が劣っていると考えられてきたが、結論からすると数学的能力の性差はほぼないと言える。ただし、性差の現れ方に違いがあり、国による分布の偏りは経済格差や教育格差を表すと考えられる。

  • 視空間認知能力
    この能力は、心の中で図形を回転させてその位置関係を判断させるような心的回転を伴う課題などから判断される。結果的に、一部において性差は認められるものの、幼少期からの興味関心・遊びや教育内容に起因する経験差であると考えらえる。

  • 攻撃性
    攻撃性は状況的要因によって変動する。匿名性が高い状況や挑発を受ける状況においては男女ともに攻撃性が誘発されるが、そうでない状況は性別役割(gender role)に応じて男性の方がやや攻撃的な傾向を示すものと考えられる。

  • メタ分析を総合すると
    一部の能力において中程度の性差が見られるが、それらが環境や経験によって作られる可能性を無視できない。

  • 性差研究の課題
    メタ分析はある程度信頼に足るが、既存の研究の蓄積に依るため、過去の変数の定義が異なっていたり、問いの立て方の偏りに引っ張られる傾向がある。性差についての先入観をあえて強化するような研究にならないように取り組む必要がある。

性別役割

  • 男らしさ・女らしらの正体
    社会的役割理論(Eagly&Wood)によると、社会の中で男性と女性が異なる役割を担い、役割に応じた行動を期待されることから様々な差異が生じるとされる。
    ・女性役割としての「共同性」、男性役割としての「作動性」がある。
    ・性別役割はある程度演じることによって実現される。例)メイドカフェ店員の声は高い

  • 性別役割を超えて
    アンドロジドニー(心理的両性具有)…心理的に女性性と男性性を兼ね備えた人。
    ・つまり、「共同性」と「作動性」を併せ持つ人と言い換えられる。
    ・女性の「作動性」は女性の社会進出により伸びてきている。次は男性の「共同性」を高めるような社会の仕組みが必要である。
    ・性別役割を超えた人間のありようの探求が求められる。



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