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博士がゆく 第5話「やってみた方が早いこともある」

「う~ん…」

今日も博士(ひろし)は研究室で頭を抱えていた。新たな実験を始めようと思うのだが、似た実験をしている論文がなかなか見つからない。はじめての実験をする時はまず論文を探すように指導教員に言われていた。プロトコルが確立されていた場合、大学生である博士が1から始めるよりもそのプロトコルを使った方が圧倒的に早い。

「もう少し古い文献を調べてみるか」

朝から論文をサーチしているから、かれこれ10時間は論文を探している。しかし目当ての論文は見つからない。するとラップトップの画面からポップアップが出てきた。あいつだ。

アンチウィルスソフトで撃退したはずなんだがな。今日も論文に紛れて侵入してきたようだ。大学のインターネットセキュリティは一体どうなってるんだ。

「今日は一体何の用だよ」

チャット画面にぱちぱちと文字を打ち込んでゆく。ほかの研究室のメンバーはすでに帰宅している。誰かにこの変な画面を見られる心配はない。

「1日中パソコンに張り付いていたようだから気になってね」

「今日はどうしたんだい?」

1日中ラップトップを触っていたことを知っているということはかなり早い段階でこいつはラップトップに侵入していたようだ。そんなくだらない探偵思考を止めて、質問に答える。

「やりたい実験があるんだけど、似た実験をしている論文が見つからないんだ」

「そうなんだね。必要な試薬や材料は実験室にそろっているのかい?」

「一応そろっているみたいだ」

「高価な試薬はつかわないかな?」

「使うけどほんのちょっとかな」

「ならやってみた方が早いよ」

「やっぱりそう思うか?」

「ただし、1回だけね」

「1回だけか…」

「論文が見つからないということは誰かがすでにトライしたけれどうまくいかなかった可能性もある」

「それにやるべきことがある時に、別のことに時間を費やすのはもったいないよ」

「それもそうだな。とりあえず1回だけ隠れてやってみるよ」

「それがいいね。ちなみにどんな実験なんだい?」

「液体窒素の中にプリンを入れてみたいんだ。どんな形になるか、どんな味になるか気にならないか?」

「その実験をしている論文を探していたのかい?」

「おう。なにかマズかったか?」

「そんなことを論文にする人がいるわけないじゃな…」

細胞くんがチャットを書き終わる前に博士はラップトップを閉じた。財布をバックパックから取り出し研究室を後にする。向かう先はもちろんコンビニだ。誰もいないうちにプリンに液体窒素をかけなくてはならない。

「よい子はマネしないでね~」

今回は消されずに済んだ細胞くん。次回はどんな悩みを解決してくれるかな?

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