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博士がゆく 第14話「うまくいかないクローニング③」

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それでは本編をどうぞ。
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(前回のつづきから)

「うん。クローニングに関してあまり指導教員を信用しない方がいいよ」

「え?」

「彼らにとってクローニングは朝飯前なんだ」

「だからクローニングについて過小評価している人がとても多い」

「そもそも彼らがDNAを精製して1 ng/microLなんて低濃度であった経験があるはずない」

「必ず20~100ng/microLのまとまったDNAを使ってベクターに挿入しているはずさ」

「じゃあなんで1 ng/microLでいけるなんていうんだよ…」

「おそらく、9 ng/microLくらいのDNAを挿入することに成功したんだろうね」

「9でいけるんなら1でもいけるんじゃないか、って少しずつクローニングを過小評価していくっていうことか?」

「そういうことだね」

「つまりひろし君は、まずまとまった量のDNAを生成できるようになることから始めないといけないんだ」

「でもどうやって?」

「DNAはゲルから精製しているのかい?」

「ああ」

「ゲルを通す必要はないから、PCR後のサンプルをそのまま精製しよう」

「そんなことできるんだな」

先輩から教わった方法では、必ずゲルから精製したDNAを使用してクローニングに使っていた。てっきりそれしか方法がないと思っていた。

「DNAポリメレースを除くことができればそれでいいからね。見せてくれた写真でもキレイなシングルバンドが写ってたし、大丈夫。PCR clean upで調べるとやり方が出てくるよ」

「わかった。でもそれだけで十分な量がとれるのか?」

「不安なら2~3本のチューブを使ってPCRをかけよう。それらをまとめて精製すればそれなりの量になるはずだよ」

「でも、DNAポリメレースって高価なんじゃ…?」

たしか50 microLで1~2万円はしたはず。そんな高価な試薬をおいそれと使いたくはない。

「少量で万単位のお金がかかるからすごい高価に感じるよね。でも1回のPCRに換算すると大体100円前後だよ」

「その反応数を3本に増やしても300円だから、そんなに高価じゃないでしょ?」

「それに、失敗するたびにまたPCRをやり直すんだから一緒じゃないか」

そう言って笑う細胞くんにつられて博士も笑う。

「それもそうか」

「わかった。早速試してみる」

「それがいいよ。きっとうまくいくさ!」

「ありがとな」

そう言い残すと博士は蛍光灯の電源を落とそうと電源スイッチに目を向けたが、ふと忘れ物が気になり器具の周辺を見渡した。忘れ物もなかったが、細胞くんの姿もすでにそこにはなかった。

(つづく)

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