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博士がゆく 第10話「初めての研究発表会④」

前回のつづき)

「それで、メッセージをあきらかにするにはどうすればいいんだ?」

「データを説明するだけじゃなくて、そのデータから”言えること”を考えるんだよ」

「もっと簡単に言うと、それで?と自分に問い続けるんだ」

「それで?と問い続けるか」

そう言われてから自分のスライドを見直してみる博士。たしかにデータをひたすら貼り付けただけで、このデータから何が言えるのかを考えたことはなかったな。

「実験が上手くいかなかったのなら、どう改善するべきなのか?上手くいったのなら、対照実験と比較してひろし君の実験はどんな新しい知見を提供しているのか?」

「そんなことを発表することでひろし君の研究発表は何倍もよくなるよ」

「そして、そのメッセージを伝えるために必要がないデータは徹底的に削るんだ」

「せっかくこんなに実験データがあるのに全部載せないのか?」

「うん。不必要なデータを載せるほど、ひろし君がデータから伝えたいことが不明瞭になっていくからね」

「たくさん実験をやったからこそ、深い考察を導けるはずだよ!」

自分の実験データから伝えられるメッセージを頭の中で考えてみると、おぼろげにスライドを改善するアイディアが浮かんできた。今日はひとまずご飯を食べて風呂に入ろう。それからスライドの修正だな。

「わかった。メッセージに着目してスライドを改善してみる」

「頑張ってね!じゃあ僕も…」

細胞はもぞもぞと、博士のペンケースに入ろうとしたが博士はそれを許さずに、すかさずペンケースをバックパックにしまう。

「入ろうとするな」

「だって、こんなところに置いていかれたら死んじゃうよ」

「嘘をつけ。いつも研究室でひょっこり出てくる以上、どこかに巣でもあるんだろ?」

「ひろし君、意外と鋭いんだね」

「意外と、は余計だ!」

「じゃあな」

博士は研究室をあとにした。

帰り道、コンビニで簡単な夕食を購入する。

おにぎり
カップラーメン
レジで並んでいる間に誘惑に負けて選んだフライドチキン

「ただいま」

自宅についた博士は簡単にシャワーを浴びたのちに、コンビニで購入した夕食さっさと食べる。スライドの修正を早くやってしまいたい。

珍しく残ったカップラーメンのスープを流しに捨てて、テーブルを片付けてラップトップを開いた。

(つづく)

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