見出し画像

子どもが権利について知ることの大切さ①

人権について、どれだけの人々が理解をしているでしょうか?日ごろ、第三者の権利について見聞きすることはあると思いますが、自分自身の権利について考える機会は、案外少ないのではないでしょうか?私自身も、社会福祉の学び、その後に、福祉分野で仕事をするようになってからも、福祉サービスを利用する人々の人権について意識してきたつもりですが、自分自身の人権を考えるようになったのは、後々になってのことだったと記憶しています。

社会で生きていく中で、自分自身の尊厳も大切に、そして相手の尊厳も大切に、そう考えることができ、実行できれば平和な社会に近づいていくのでしょう。また、いざ自分自身の人権が侵害された時には、どのように救済を求められるのかについても知っておく必要があると思います。

子どものころにそういう機会があったらよかったのに、そんなことを考えながら、第1回目は国連の「世界人権宣言」について取り上げていきます。そして、次回以降は現在の人権教育などに触れ、子どもたちが権利について知る機会を持つことの大切さについて考えていきたいと思います。


1.世界人権宣言について


国際社会において、人権および基本的自由の存在を国家を超えて認めたのが国連による「世界人権宣言」でした。1948 年 12 月 10 日、第 3 回国連総会の決議として宣言され、すべての国の人々が持っている市民的、政治的、経済的、社会的、文化的分野にわたる権利を内容としています。

本文は、基本原則(第1条、第2条)、市民的、政治的権利に関するもの(第3条から第 21条)、経済的、社会的及び文化的権利に関するもの(第22条から27条)、人権保障一般に関するもの(第28条から第30条)に分けることができます

国際連合広報センターのウェブサイトには、詩人の谷川俊太郎さんとアムネスティ・インターナショナル日本が、世界人権宣言をわかりやすい日本語に訳したものが載っています。

子どもにも大人にも非常にわかりやすい内容になっていますので、ご紹介します。

第1条 みんな仲間だ
わたしたちはみな、生まれながらにして自由です。ひとりひとりがかけがえのない人間であり、その値打ちも同じです。だからたがいによく考え、助けあわねばなりません。

第2条 差別はいやだ
わたしたちはみな、意見の違いや、生まれ、男、女、宗教、人種、ことば、皮膚の色の違いによって差別されるべきではありません。また、どんな国に生きていようと、その権利にかわりはありません。

第3条 安心して暮らす
ちいさな子どもから、おじいちゃん、おばあちゃんまで、わたしたちはみな自由に、安心して生きていける権利をもっています。

第4条 奴隷はいやだ
人はみな、奴隷のように働かされるべきではありません。人を物のように売り買いしてはいけません。

第5条 拷問はやめろ
人はみな、ひどい仕打ちによって、はずかしめられるべきではありません。

第6条 みんな人権をもっている
わたしたちはみな、だれでも、どこでも、法律に守られて、人として生きることができます。

第7条 法律は平等だ
法律はすべての人に平等でなければなりません。法律は差別をみとめてはなりません。

第8条 泣き寝入りはしない
わたしたちはみな、法律で守られている基本的な権利を、国によって奪われたら、裁判を起こし、その権利をとりもどすことができます。

第9条 簡単に捕まえないで
人はみな、法律によらないで、また好きかってに作られた法律によって、捕まったり、閉じこめたり、その国からむりやり追い出されたりするべきではありません。

第10条 裁判は公正に
わたしたちには、独立した、かたよらない裁判所で、大勢のまえで、うそのない裁判を受ける権利があります。

第11条 捕まっても罪があるとはかぎらない
うそのない裁判で決められるまでは、だれも罪があるとはみなされません。また人は、罪をおかした時の法律によってのみ、罰をうけます。あとから作られた法律で罰を受けることはありません。

第12条 ないしょの話
自分の暮らしや家族、手紙や秘密をかってにあばかれ、名誉や評判を傷つけられることはあってはなりません。そういう時は、法律によって守られます。

第13条 どこにでも住める
わたしたちはみな、いまいる国のどこへでも行けるし、どこにでも住めます。別の国にも行けるし、また自分の国にもどることも自由にできます。

第14条 逃げるのも権利
だれでも、ひどい目にあったら、よその国に救いを求めて逃げていけます。しかし、その人が、だれが見ても罪をおかしている場合は、べつです。

第15条 どこの国がいい?
人には、ある国の国民になる権利があり、またよその国の国民になる権利もあります。その権利を好きかってにとりあげられることはありません。

第16条 ふたりで決める
おとなになったら、だれとでも好きな人と結婚し、家庭がもてます。結婚も、家庭生活も、離婚もだれにも口出しされずに、当人同士が決めることです。家族は社会と国によって、守られます。

第17条 財産をもつ
人はみな、ひとりで、またはほかの人といっしょに財産をもつことができます。自分の財産を好きかってに奪われることはありません。

第18条 考えるのは自由
人には、自分で自由に考える権利があります。この権利には、考えを変える自由や、ひとりで、またほかの人といっしょに考えをひろめる自由もふくまれます。

第19条 言いたい、知りたい、伝えたい
わたしたちには、自由に意見を言う権利があります。だれもその邪魔をすることはできません。人はみな、国をこえて、本、新聞、ラジオ、テレビなどを通じて、情報や意見を交換することができます。

第20条 集まる自由、集まらない自由
人には、平和のうちに集会を開いたり、仲間を集めて団体を作ったりする自由があります。しかし、いやがっている人を、むりやりそこに入れることはだれにもできません。

第21条 選ぶのはわたし
わたしたちはみな、直接にまたは、代表を選んで自分の国の政治に参加できます。また、だれでもその国の公務員になる権利があります。みんなの考えがはっきり反映されるように、選挙は定期的に、ただしく平等に行なわれなければなりません。その投票の秘密は守られます。

第22条 人間らしく生きる
人には、困った時に国から助けを受ける権利があります。また、人にはその国の力に応じて、豊かに生きていく権利があります。

第23条 安心して働けるように
人には、仕事を自由に選んで働く権利があり、同じ働きに対しては、同じお金をもらう権利があります。そのお金はちゃんと生活できるものでなければなりません。人はみな、仕事を失わないよう守られ、だれにも仲間と集まって組合をつくる権利があります。

第24条 大事な休み
人には、休む権利があります。そのためには、働く時間をきちんと決め、お金をもらえるまとまった休みがなければなりません。

第25条 幸せな生活
だれにでも、家族といっしょに健康で幸せな生活を送る権利があります。病気になったり、年をとったり、働き手が死んだりして、生活できなくなった時には、国に助けをもとめることができます。母と子はとくに大切にされなければいけません。

第26条 勉強したい?
だれにでも、教育を受ける権利があります。小、中学校はただで、だれもが行けます。大きくなったら、高校や専門学校、大学で好きなことを勉強できます。 教育は人がその能力をのばすこと、そして人としての権利と自由を大切にすることを目的とします。人はまた教育を通じて、世界中の人とともに平和に生きることを学ばなければなりません。

第27条 楽しい暮らし
だれにでも、絵や文学や音楽を楽しみ、科学の進歩とその恵みをわかちあう権利があります。また人には、自分の作ったものが生み出す利益を受ける権利があります。

第28条 この宣言がめざす社会
この宣言が、口先だけで終わらないような世界を作ろうとする権利もまた、わたしたちのものです。

第29条 権利と身勝手は違う
わたしたちはみな、すべての人の自由と権利を守り、住み良い世の中を作る為の義務を負っています。自分の自由と権利は、ほかの人々の自由と権利を守る時にのみ、制限されます。

第30条 権利を奪う「権利」はない
この宣言でうたわれている自由と権利を、ほかの人の自由と権利をこわすために使ってはなりません。どんな国にも、集団にも、人にも、そのような権利はないのです。

全文をご覧になりたい方は以下をご覧ください。

世界人権宣言は民主主義と法の支配にもとづいた平和の理想を支持していますが、これらの基準を人々を守るために実行するには、政府がさらに法的枠組みを作る必要があります。

国連におけるもっとも強力な法律文書としては、協定と規約があります。歴史上、差別を受けてきた人々は国際的に運動を重ねてきました。国連の法的体制は、女性、子ども、移民、障がいを持つ人々、さらに人種差別、拷問、強制失踪の撤廃を内容とした、7つの協定と2つの規約が法的強制力をもつ国際人権文書として存在しています。

人権を学んでいくために、まずは、自分に保障されている人権、相手の人権について知ることから始める必要があります。例えば、今回取り上げた世界人権宣言については、文章そのものだけでなく、現実社会でどのような人権侵害があるのかを知る機会を提供し、その痛みを感じることが大切だと思います。

2.世界人権宣言について知ることのできる絵本


世界人権宣言について書かれた絵本があります。東菜奈さん訳の「世界人権宣言の絵本 みんなたいせつ」です。こちらも子どもたちが理解できるように、やさしい言葉で記されています。

世界人権宣言の条文のほか、国連人権委員会の委員長としてこの宣言をとりまとめた、エレノア・ルーズベルトについて、また、第二次世界大戦後、国連が設立され、その後に世界人権宣言が採択された、そのころの世界背景についても触れられ、歴史の流れとの関連を知ることができます。

また、渋谷敦志さんの世界各国の子どもたちを撮影した写真も、人種、生活、文化等の違いを感じることができ、世界へ目を向ける機会につながると感じました。ご関心のある方はぜひ手に取ってみてください。

★参考文献


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?