見出し画像

旅はドラマ作り①

「旅はドラマ作りだよ。」

一見よくありそうな言葉だが、彼の発する言葉と漂う雰囲気に僕は心惹かれた。

登山道で出会った彼は、2年と8ヶ月もの間、歩きとヒッチハイクで日本一周を続けてきており、残すは4県というところで、僕は彼と出会うことができた。

「僕も日本一周しています。」と言うと、彼は一気に笑顔になり、自然とお互いの手が伸びて握手を交した。

ここ最近は、新たに出会った人、よくしてくれた人、旧友との再会の時など、人と関わりを持ったときには意識的に握手をするようにしている。

握手って、人間と人間が物理的に触れ合うことで、人との繋がりや温かみをダイレクトに感じることができる。

そんな中でも、今回は自然と握手ができた。彼が意識的だったか、無意識だったのかはわからないが、これまで数え切れない人々と出会ってきて、同じように握手をたくさんしてきたのだと思う。

僕も旅に出て3ヶ月が経過したところだった。

毎度のごとく、誰も居ない登山道を歩くときはよく考え事をする。つい前日まで東京都内を堪能していたため、「自分の足音しか聞こえない空間」って、なかなか無いことに気付いた。

やはりそういう場所を求めて山へ登ってしまうし、そういう場所にくると気持ちが落ち着き、自然と考え事の整理がされていく。

ということで、彼と出会う前に山を歩きながら気がついたことがある。

これまでの自分もそうだったが、大半の人は、まず「自分の働き方」を考えてその上で「自分の生き方」を考えていくことが多い。

でもそういう考え方になると、どうしても将来の夢や希望、目標などを見いだしづらくなってしまう。それらを見いだそうとしても、まず第一に「今の仕事があるから」ということで、考えの幅が広がらない。結局、それらは見つからず、見つけるのを止め、現状維持の日々が続いてしまう。

逆に「自分の生き方」を先に考えてしまえば、「自分の働き方」なんてどうにでもなるし、なにより将来の夢や希望、目標に向かって生きる日々を送ることができる。

こんなことを考えて山の中をひたすら歩いていたところ、2年と8ヶ月旅を続けている彼に出会った。

後に、彼にもこの考え方を話したらとても共感してくれた。

彼は旅で出会った方たちに「目標でも座右の銘でも何でも良いのでここに書いて下さい」と大きな日の丸国旗を持ち歩いている。みんなの願いを背負って、それを叶えられるように、と日本中を歩き回っている。
(ちなみに、割と大きな旗だけど、僕が書いたのは既に3枚目で、空いているスペースもかなり狭かった。彼がどれだけの人々に救われたのか、同時にどれだけの人々に力を与えてきたか計り知れない。)

目標や座右の銘を自由に記載してもらうことをお願いすると、多くの人が戸惑うらしい。それは前述したように、まず「自分の生き方」を考える人が少ないことが関係しているのではないか。ただ、書ける人はすぐに書けるらしい。全員が全員、そういう考えじゃないのもわかる。

いずれにしても、彼のやっていることってお互いにプラスのことだと思う。

彼としては、旅で出会い、良くしてくれた人々からの手書きメッセージで溢れた旗は一生の宝物になるだろうし、日本一周を続けるための原動力となるだろう。書く側としては、自分の目標や大事にしている言葉を考える機会、ないし再確認できる機会となるだろう。

彼と最後に別れるときに、この日の丸国旗の話をされ僕も書くことに…



久々に旅人から大きな刺激をもらい、文章を書くのが楽しくて長くなってしまった。

旅はドラマ作り②につづく……

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?