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プロダクト開発組織を大胆に改革してみた

はじめに

GLOBIS 学び放題 / GLOBIS UnlimitedのDirector of Productの久津です。

GLOBIS 学び放題 / GLOBIS Unlimitedのプロダクト開発組織は、2023年4月1日から大きく組織構造を変えました。具体的には、元々3チームで運営していたところを8チームに分割するという大胆な変更を行いました。この記事では、その狙いとプロセス、そして結果としてどのような変化があったのかをご紹介します。

なぜ組織の改革をする必要があったのか

2022年度の体制

これまでは、上記の図のようにプロダクト別にチームを組成していました。チームごとに担当プロダクトにフォーカスできるため、各メンバーがユーザーやドメインについて詳しくなるメリットがありました。多少の修正は都度行ってきましたが、我々は3年ほど、この体制をベースとして運営していました。

一方で、以下のような課題も目立ち始めました。

  • トレードオフが多発し、事業の変化に対応しづらい:昨年度の時点で、既に1チームが複数ミッションを持っており、各チームの規模も肥大化してきて20人近いメンバーがいるチームもありました。この状況だと、何か緊急の対応が必要になった際に、その1チームが持っている案件やスコープの全てがトレードオフの関係になります。この検討コスト・調整コスト・スイッチングコストが無視できないレベルで大きなものとなってきました。

  • プロダクト間の一貫性を保ちづらい:チームがプロダクトごとに特化すると、プロダクト横断での一貫性は保ちづらくなります。特に受講者向けと管理者向けのチームの間では、お互いのプロダクトをよく知らないが故の仕様やデザインのずれが発生するようになりました。同様に、複数プロダクト間でのコラボレーションやサポートも起こりにくくなっていました。

  • 個々人のチャレンジの機会が生まれづらい:「ユーザーやドメインについて各メンバーが詳しくなる」というメリットを書きましたが、これは同時に「チームを異動する際のハードルが高くなる」というデメリットも生み出します。キャッチアップコストがかなり高くなるためです。またチームがそれぞれ肥大化したことで、いきなり大人数をマネジメントしなければならないため、リーダーやマネージャーへのチャレンジのハードルも高くなりました。

そこで我々は「検討コスト・調整コスト・スイッチングコストをなるべく抑えて各チームが目標達成に集中できるようにする」「コラボレーションが生まれやすく、かつ個々人のチャレンジのハードルを下げる」という狙いのもと、チームを細分化することにしました。また「プロダクト別」の境界を一度壊し、「ミッション別/プロジェクト別」という境界に変えました。

新組織構成:Mission Team と Project Team

2023年度からの新体制

新たな組織構成では、チームは「Mission Team」と「Project Team」の2つに分けられます。また、1チームあたり4~10人程度に絞っています。

Mission Teamは、長期的なビジョンやミッションの達成に責任を持つチームです。達成すべき指標(KPI)は定められていますが、そのために「何をすべきか」は各チームに任されます。ちなみに、担当範囲はMECEになっておらず、かつ多少の重複もあり、さらにミッションの粒度もバラバラです。例えば「視聴体験」はエンドユーザーが学習する体験の向上にフォーカスしますが、「toB事業ディスカバリー」はtoB事業の新たなビジネスモデルの探索という大きなテーマを扱います。これは、経営陣を含むステークホルダーとの議論を通して、我々の状況や市場の動向などを踏まえて注力すべきポイントを選定した結果、あえてこのようなアンバランスな形にしています。逆にいうと、今後の事業の変化に伴いこのチーム分けは柔軟に変えていくつもりです。

粒度がバラバラな役割分担

一方、Project Teamは具体的なプロジェクトの遂行に集中します。主に各種基盤のリニューアルや機能の充実化を担当プロジェクトとし、事業KPIは直接的には担いません。以前はこの類のプロジェクトの遂行責任と長期ビジョン達成責任を同じチームが担っていたため、優先度定義やプロジェクトマネジメントが非常に難しくなりました。よって今回思い切ってここを分ける意思決定を行いました。

また、これらのチームを支援する形でDeveloper Experience Team, Data Science Teamを独立して立てています。

4ヶ月の準備期間

この構造改革を成功させるためには以下のような取り組みが必要だと考え、約4ヶ月の期間を使って準備を進めました。

  • ステークホルダーとの目線合わせ:各事業リーダーや経営陣と、なぜ今のタイミングで組織改革が必要なのか、どのような開発組織が求められるのか、などを2回の半日合宿を通して徹底的に目線合わせをしました。

  • 開発チームリーダーたちとの意識合わせ:この大規模な改革を成功させるには、ステークホルダー以上に開発チームリーダーたちとの意識を合わせる必要がありました。毎週1時間のミーティングで解決すべき課題の洗い出しや目指すべき姿のディスカッションを行い続け、1日合宿を行いアウトプットを仕上げました。このプロセスで開発チームリーダー間の結束はかなり強まったと思います。

開発チームリーダー合宿の様子
  • 大胆な権限委譲:チームを増やすことは、その分だけ権限を分散する必要があります。よって、これまでチームリードの経験がないメンバーにも大胆に権限を委譲する判断をしました。

  • 丁寧なコミュニケーション:3年以上続けてきた組織構造を変えることは、メンバーにとってはいわばコンフォートゾーンを破壊されることにもなります。「今うまく回っている開発プロセスを破壊してでも変わらなければいけない理由」をしっかり言語化し、これを各リーダーからメンバーに落とし込んでもらいました。その結果、4月の新体制方針発表の場では、多くのメンバーが前向きに捉えてくれたと思っています。

新体制発表時のスライド

これらはかなりのエネルギーを要する取り組みでした。もちろん意見の衝突は何度も起こりましたが、粘り強く一つ一つ解決することで、最終的には皆が腹落ちする結論を出せたと思います。

とはいえ、改革をすること自体がゴールではなく、これによって高いパフォーマンスや成果、多くの成長の機会を生み出すことがゴールです。まだスタートラインに立ったに過ぎません。この新しい組織をうまくマネジメントすることが求められます。

新体制での立ち上がりは…?

この記事を書いている時点で、新体制への移行から1ヶ月半が経過しています。

狙い通り発揮されている成果としては、開発とリリースのスピードが明らかに上がりました。トレードオフが減りそれぞれのチームがミッションに集中できた効果と言えます。それによってリリースできた機能の一つがこちらです。

また、新たに権限委譲されたメンバー、新しいドメインに挑戦しているメンバーから、早くも期待以上のパフォーマンスが垣間見えています。やはりチャレンジの機会は成長の機会であるということを改めて感じました。

一方で、問題も起こっています。

チームを細かく分けた副作用として、チーム間のこぼれ球が増えました。これまで1チームが広い範囲を見ていたため、発生したタスクをとりあえずそのチームに放り投げておけばどうにかなったのですが、チームを細かく分けると隙間に落ちてしまいます。これに関しては予想できていたため、こぼれ球を拾う仕組みを用意しておきました。具体的には、なるべく担当チームを持たない「横断ロール」を設置し、そのメンバーがこぼれ球を拾って問題解決にあたります。また、これまで以上にチーム横断のミーティングの場を増やし、問題の発生検知と解決のスピードを早めています。

問題の起こらない改革は無いため、今後も継続的に問題を解決しながら、また柔軟に変化させながら開発組織を進化させていきたいと思います。

まとめ

今回、大規模な組織改革の狙いとプロセスをご紹介しました。改革には困難を伴いますが、その先には新たな可能性が広がっており、早くもその可能性の片鱗が見え始めているため、苦労して取り組んでよかったなと思っています。

我々の経験が、開発組織マネジメントに取り組んでいる方への一助になれば幸いです。今後機会があれば、この新体制がどうなったのか、定期的に発信できたらと思います。

この新しい開発組織で共に働いてみたい方は、ぜひこちらをチェックしてみてください。
https://recruiting-tech-globis.wraptas.site/
https://speakerdeck.com/globis_gdp/we-are-hiring-635c989b-5419-45fd-b866-14b5fca0ba4b

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