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Go To キャンペーンは適切か? N83

 長期政権の末期に未曾有の危機に直面するとこうなるんだというのをまざまざと見せつけてくれているのが2020年の安倍政権だ。年明けに見た輝かしいオリンピックと日本の未来の思い出すら、もはや誰も残していないだろう。  

 PRCテストをきっちり実施しないため感染者数の実態が曖昧な中、のらりくらりとここまで持ちこたえてきたのは国民がまだしっかりしている証拠だろう(しっかりしていない国民を抱える国はボロボロだ)。感染者数が曖昧なところは別として、ここまで窮地に立ちながらも致命的なパンデミックに陥っていないのは日本人として誇るべき実績だと思う。  

 しかしこのタイミングでGo To キャンペーンを実施するとかしないだか揉め始めた。結局やるんでしょうか? 

 ネットで調べるとやるべきだという人も少数派でいたのだが、主に政府側の擁護派の人のようだ。やるべき理由としては観光業の売上が落ち込んでおり、キャッシュフローがあと3ヶ月持つか持たないかの窮地のために国土交通省が救援物資を打ち上げたとのことだ。また給付金では到底足りない規模感が問題だとのことだ。確かに個人や中小企業の事業者が多い観光業は苦しいのは間違いない。また何も手を打たないと失業者で溢れるのは間違いない。  

 この状況は海外でも同じだが、海外で行われている政策はどうなっているかを紹介したい。一般的に海外の場合は個人を優先している。失業者に給付金を出したり、解雇しないことを条件にその給与分の給付や税金の免除などを事業者に行なっている。宿泊業に従事する方々は全国で66.4万人(*1)いるが、日本に居住する全員一律に10万円配ったのをコロナで事業のインパクトの多い人たちに給付すれば随分と変わっていただろう。小売やサービス業に従事して休業を余儀なくする方々には年収の半分くらいを支払っている国もある。

 また海外では観光業に関しては残念ながら未来は明るく考えられてはいない。少なくとも今後5年くらいはかなり厳しい見通しが立っている。したがって政府が取っている政策は職業訓練だ。給付金を提供すると同時に他の業種にシフトするよう職業訓練と雇用を増やすための公共投資を行っている。 

 目先の3ヶ月生き延びたとしてもその後の3ヶ月後に資金はやはりショートするだろう。コロナを機に合従連衡を進めて生産性を上げつつ、一部の人に職種転換をお願いすることで乗り切るしかない。厳しいかもしれないが早ければ早いほど痛みは少ない。  

 つまりGo To キャンペーンは不適切だ。コロナの感染者を増やすだけでより不必要な政府支出を増やすだけでなく、取り返しのつかないパンデミックになる可能性をはらんでいる。 

 1*)「サービス産業動向調査」2020年(令和2年)4月分(速報)総務省 

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