日本語の発音の特徴:音の作り方の違い

これまで、ネイティブ英語を目指す必要はなく、母国語訛りがあっても英会話は十分通じるということ点を、色々と切り口を変えながら説明してきた。

しかし、英語だけでなく、外国語全般を考えたとき、日本語特有の発音の仕方がコミュニケーションの障害になると思われる点が多々ある。

英語の発音と聞くと、どうしても「th]や[v]の音、 [r]と [l]の違いなどを個別の音の問題がまず思いつく。「舌を上下の歯の間に入れる」、「下唇を噛む」、「巻き舌で発音する」、「下を上あごから離さない」などなど、日本人が苦手と発音の矯正だ。

確かに、弱点を抽出して重点的に修正するのは効率が良い方法だ。しかし、これら子音の発音の特訓の結果、日本人の英語によるコミュニケーションが改善してという話しはあまり聞かず、依然として漠然とした苦手意識を持っている学習者が大多数ではないかと思う。

様々な文献を読むと、こうした苦手音素の発音を考える以前に、もっと基礎的なところに修正点があることが分かってくる。

どうやら、日本語で話していても、英語で話していても、日本人が声を発するときに口から出る息の量が少なく、勢いが弱いらしいのだ。つまり、苦手音だけでなく、すべての音素で、音の作り方というか声の出し方が違うという視点だ。「肺活量が弱い」、「肺式vs腹式呼吸」、「胸式vs横隔膜式」などいろいろな用語で説明されているが、共通点は「息の量と勢い」だ。

発言全体が聞き取りにくい?

ドイツ留学時代に第2外国語として中国語の授業に出ていた。このクラスには、ドイツ人学生に交じり他の日本人学生もいた。ある日の授業で、隣同士に座っている学生でペアになり、簡単な中国語会話をして、クラスの前で発表するという練習があった。そのうち1組は日本人の女子学生とドイツ人の女子学生だった。

日本人の女子学生が会話をはじめ、ドイツ人女学生がこれに答えるという場面で問題が生じてしまった。私が聞いた限りでは、この日本人学生は、中国語特有の声調もしっかりと使い分け、ネイティブの中国人講師の発音を上手く模倣しているように思えた。しかし、会話相手のドイツ人学生は「申し訳ないけど、彼女が言っていることが音声的に理解できません」と言って、困り果ててしまい、このペアの練習は中断してしまった。

似たような場面に他の学会でも遭遇した。やはりに日本人女性の発表で、英語のプレゼだった。事前にしっかりと準備して練習もしてきたようで、発表中に言葉に詰まることなく、スムーズに進行。文法的な間違えも気づかなかったし、語彙も国際的な学会に適した高度なもの使っていた。筆者にとっては、完璧なプレゼで、英語で素晴らしいプレゼする日本人女性を目の当たりにして感心した。

だが、他国の出席者の何人かは、彼女が言っていることが分かりにくいようで、普段以上にリスニングに注力しているせいか、眉間にしわを寄せるような表情をしていたのを思い出す。マイクやスピーカーといった音響設備の面の問題はなく、発表者の声自体は確実に会場全体に届いていた。

こうした事例からも、個々の音素の発音や声の「ボリューム」以外にも原因があることがわかる。前述した「息の量」がその一因らしいと気づいて以来、資料・文献に目を通してきたが、今のところ定説的なものに辿り着いていない。次回から、もう少し掘り下げて考えてみたい。


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