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大企業とスタートアップの経営を見てきたGPが語る、GBがオープンイノベーションのためにできること

グローバル・ブレイン(GB)で情報発信を担当している岡本です。

大企業で培った経営企画や事業戦略の知見を活かし、スタートアップ支援を続けてきたキャピタリストの深山和彦さんが、昨年新たにGPとなりました。その深山さんに、スタートアップ支援で大切にしている心構えや、また今後GBにどう貢献しようとしているのか話を聞いています。


「事業好き」だから拓けた、VCへの道

──GBに入社した経緯を教えてください。

NTT、CCC、リクルートを経てGBに入社しています。リクルートでは、事業戦略支援室でさまざまな事業の戦略策定に携わったり、経営企画室で全社次世代戦略の構想を練ったりとあらゆる戦略立案に取り組んできました。また、事業部では直接事業にも関わるなど、事業や経営に関わるたくさんの経験をさせていただきました。

そこで感じたのが「事業って本当にいいな」ということです。描いた構想が実現したり、仲間と苦労しながら作ったサービスが一般の方に使われたりして、世の中が便利になっていくって最高だなと。なので、今後も事業や経営に関わる仕事をしていきたいと思っていました。

また年齢を重ねたこともあって、自分の経験をより若い方に役立ててもらうようなキャリアにシフトしていきたい気持ちも芽生えてきてたんですよね。そんなときにGB代表の百合本さんと出会い、ベンチャーキャピタリストの仕事を知ったのが入社のきっかけです。

1人でできる事業は限られますが、キャピタリストなら世界中のスタートアップの起業家と一緒に、自分だけではできないチャレンジやイノベーションを起こせる。これこそまさに自分がやりたかった仕事だと感じ、10年前にGBに入社しました。

深山 和彦:産業を大きく変革(DX化等)するようなチャレンジやクリエイターエコノミーに取り組むスタートアップなどに出資し伴走。社外取締役としてハンズオン支援するケースも多い。また、CVCファンド組成・運用などを通じて大手企業とスタートアップ出資を通じたオープンイノベーション創出にも取り組んでいる。

──未経験からキャピタリストの業務をキャッチアップするのは大変そうにも思えますが、過去の経験が活きる部分などはあったのでしょうか?

前職で培ってきた経験を多く活かせたので、そこまで苦労は感じませんでしたね。 いままでやってきたことの延長線で、さらにやりたい仕事をやれている感覚です。

リクルートでよく使う言葉に「見立てる力」「仕立てる力」「動かす力」というのがあります。特にVCでは「見立てる力」「仕立てる力」が大事だと思います。

まずは「見立てる力」
投資検討では市場の成長性と、それに対応できる経営資源の有無や起業家や経営チームのフィット感が重要なポイントになります。そのスタートアップが伸びる市場を選べているか、組織も含めてその市場を攻略できる適切なアセットを持っているかを見極める必要がある。

既存市場をリプレイスするスタートアップなのか、まったく新しい市場を作っていくスタートアップなのかによって、求められる起業家のタイプは変わります。前者の場合は既存プレイヤーと組むことも多いので、人とうまく立ち回れる“愛されキャラ”な起業家が適しており、後者であれば、市場そのものを生み出す力強さがあるリーダーが望ましいです。

こうした「市場×アセット」の適切な組み合わせを見立てるというのは前職でも頻繁にやっており、自分なりのフレームワークも持っていました。これはいまの業務に直接的に活きていますね。

そして「仕立てる力」
いくら市場の成長性があったとしても、それだけでは絵に描いた餅です。市場にうまくアプローチするためのプロセスを作り込むには、「顧客はこんなに大変で、こんな心理状態にあって…」のような顧客に近い、“手触り感”のある情報を収集する必要があります。

そのためには、スタートアップのサービスを体験するのはもちろん、事業運営の現場に赴いたり、関係者の打ち合わせに同席したりと、できる限り情報を取りに行きます。

いろいろな事業に携わってきたので、顧客の現場を見る大切さや筋の良いプロセスを作りこむ大切さはよくわかっているつもりです。出資後、大きく成長するために何をするべきか。筋の良い戦略仮説は何か。それをどう具体的に実行させていくかのイメージを持てるか。投資後のスタートアップを支援する際は特に、この仕立てる力を意識して向き合っています。

いつでも相談できる「お父さん」でありたい

──起業家と接する際に心がけていることはありますか?

投資前の面談では、起業家に新しい視点や気付きを提供したいと思っています。

起業家にとって時間は最大の資源です。貴重な時間を割いていただいている面談ですので、いかにお土産を持って帰ってもらえるかを意識しています。投資検討に必要な質疑応答だけでなく、できるだけ「こういう観点ではどう考えていますか?」など、新しい角度から問いかけ、ビジネスの課題や新しい解決策に気づいていただけるよう留意しています。

対話に価値を感じてくださった起業家からは「またディスカッションさせてください」「GBさんと一緒にやっていきたいです」と言っていただいたこともあります。たった1度の面談であっても、やりとりを通じてお互いの信頼関係を築く時間にしていきたいと思っています。

──投資後のスタートアップとのコミュニケーションではどうでしょうか?意識していることがあれば教えてください。

GBはリード投資をさせていただくことが多いのですが、リード投資家は起業家が悩んだり、困難に陥ったりしたときに最初に相談いただくパートナーであるべきだと考えています。スタートアップが成長の壁を乗り越えられるように他社との協業をアレンジしたり、人材採用をサポートしたりとできる限りの支援をします。"Give Give Give"の精神で積極的に伴走し、気軽に相談できるパートナーとなることを目指しています。

例えるなら、いつでも相談できる「お父さん」のような存在でありたいですね。

というのも、スタートアップがEXITするとVCは基本的にそこでお別れになってしまいます。何年も伴走してきたスタートアップが、いよいよIPOし市場にデビューするタイミングでスタートアップ支援は終わりを迎えます。IPOはVCにとっては卒業式ですごく嬉しいけど、すごく寂しい。

こういう場面に立ち会って思うのは、VCは“子離れ”を覚悟する父親のような存在でいなければいけないということです。いつか離れるときに全力で送り出してあげられるよう、支援させてもらえる間は気軽に頼ってもらえる存在でありたいですね。

──実際にスタートアップの危機やハードシングスを支えた経験はありますか?

とあるスタートアップの資金調達間際に、コロナの影響で主要な投資家が手を引いてしまったことがありました。このまま投資家が見つからなければスタートアップの財務的にも厳しく、“ハードシングスどころではない”状況で。

結果的に、私がずっと親交があった投資家の方に投資を決めてもらえて乗り越えられたんですが、コロナという非常事態だったとはいえ、こういうことも起こるんだなと感じた1件でした。

ちなみにその起業家は、先の見えない状況でもずっと「大丈夫です」と言い切ってたのを覚えてます。もちろん本心はどうかはわからないですが、そう言えるって本当に強い。起業家にはリスペクトしかないですね。

大企業とスタートアップを、最高のパートナーに

──LP(Limited Partner:ファンドの出資者)とスタートアップのオープンイノベーションを支援する場面も多いかと思います。その時に感じる難しさや、どのように対応しているのかも聞かせてください。

オープンイノベーションは「短期」で考えてしまうと、上手くいかない場合が多いです。

大企業はしばしばオープンイノベーションで現状の課題解決をしようとしますが、スタートアップ側には技術やリソースなどさまざまな制約があり、短期間で具体的な成果を上げるのが難しいことも多いです。この期待値のギャップから、協業が途中で頓挫してしてしまうケースも少なくありません。1年後、3年後、5年後の将来を見据えて、スタートアップのスキルや能力が将来的に自社にどう役立つのかを想像するのが大切です。

とはいえ、そこまで待てないという大企業の方の事情もよくわかります。そうした大企業側とスタートアップ側の時間軸を見ながら、うまくハマるピースを探していくのが私たちの役目です。

──たしかに大企業とスタートアップがお互いの視点や時間軸の違いを理解するのは難しいですよね。

はい。私は両者の“翻訳”をする立場だと感じています。

大企業経験があり、また10年近くスタートアップとも歩んできたので、お互いの特性を理解しています。その経験を活かして今後も橋渡し役を担っていきたいです。

私はよくLPの皆さんに「スタートアップの本質を理解しましょう」とお話ししています。スタートアップは将来に向けた成長の可能性を秘めた存在なので、その潜在力を見据え、育てていく視点が不可欠です。

両者が双方を理解し、うまくコミュニケーションを取れれば素晴らしいパートナーになれます。お互いを尊重し合う姿勢があれば、成功事例が生まれる良い循環ができてくると思っています。

──良い循環を作るためには、GB全体の力も必要かと思います。GBがLP支援において発揮できる強みは何だと感じますか?

組織力ですね。VCの仕事は労働集約的なところがあり、人の成長にも時間がかかります。LP支援も例外ではなく、たった1人のキャピタリストがLPさんを100%の体制でサポートするのは難しいところがある。

その点、さまざまな専門知識を持つ社員で支えられるのがGBの強みです。たとえば、コンサル出身のメンバーは投資の経験は少ないかもしれませんが、事業戦略を見立てる能力はとても高く、LP企業とスタートアップのオープンイノベーションを描くことができる。

オープンイノベーションというのはLP企業だけでなく、スタートアップにとっても大きな価値を持っています。海外に比べると資金供給量が少ない日本のスタートアップが、国内大企業のアセットをいかに使っていけるかという視点は非常に大事です。日本のスタートアップと大企業による成功事例を、組織力によって1つでも多く作っていきたいですね

「10年後」のGBメンバーを驚かせたい

──長年勤めてきた深山さんの目から見て、GBはどのような環境だと言えますか?

私はよく「GBはスタートアップだ」と言っています。GBは純投資ファンドであるフラッグシップファンドを運営しながら、さまざまな領域のLPさんとCVCを立ち上げたり、投資業務のDX化を進めるためにVCでは珍しいエンジニアチームを組織したりと、従来の手法にこだわらず常に新しい打ち手にチャレンジしています。

また専門性の高い人材が集まっており、チームワークで困難を乗り越えているのも特徴です。「新たなプロフェッショナルが加入して、チームで新しい取り組みをし、やれることが増え組織力が高まる」というサイクルが何年も続いている、まさにスタートアップのような環境です。GBはスタートアップを応援する立場であり、また私たち自身もスタートアップでい続けようとしている環境だと言えます。

──ありがとうございます。最後に、そんなGBの中で今後どう貢献していきたいか展望を教えてください。

おかげさまでファンドの運用額が増えてきていますが、同時に社会的責任も増しています。VCとしての役割を果たすのは当然ですが、GBの良さ、つまりスタートアップ的な挑戦や進化を続ける文化は守り続けなければいけません。新しいことにチャレンジする一方で、社会的責任とのバランスを両立していくのが使命です。

そのためにはGBの組織作りが大切です。10年前は20人程度の小さな組織でしたが、徐々に仲間が増えここまで成長することができました。今ではさまざまなバックグランドを持つ仲間が120人も集まる組織になっています。

10年前の組織から大きく成長したGBの次の10年は、これまでの10年と比べ、桁違いの成長が期待できます。そんな10年後の姿を着実に実現できるように適切な仕組み作り、チーム作りをしていければと思います。

今年入社したGBメンバーが、10年後にいまの私と同じように「昔はGBもまだ120人くらいの小さな組織で…」と語れるように今後も驚くくらいの成長を遂げられたらいいですね

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