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ゴールドマンサックスで最年少パートナー女性役員がテストに落ちた新入社員にかけた言葉とは

こんにちは!KTです。新卒で入った会社はゴールドマンサックスというエリートたちがこぞって入りたがるような会社で,中々入社できない企業に入れたのはとてもラッキーだったと思います。そのような環境に身を置き,中々出会えない方たちに接する機会があったので,そうした人たちとの出会いや思い出を書き残したいと思います。

最年少パートナーになったAさん

私がゴールドマンサックス東京オフィスに新卒で入社した際,営業のある部門のトップは女性社員でした(仮にAさんとします)。その女性は当時40代のワーキングマザーで,小柄で華奢ながらもとてもパワフルで明るい方でした。その方は,決して威張っているというわけではないのですが,頭の良さや仕事のできるオーラがそこにいるだけで滲み出ているような方で,言葉は短く簡潔で分かりやすいながらも非常に威厳があり,Aさんがいらっしゃると周りの社員も神経がピンと張りつめるような緊張感のある方でした。

Aさんはとある地方の県出身でいらしたのですが,小さい頃から秀才の誉れ高く,地元では神童として有名で,そのまま東大にストレートで合格する頭脳の持ち主でした。転職してきたゴールドマンでは,持ち前の頭脳と,思い切りの良さ,愛嬌の良さ,元気でハキハキ,さっぱりとした性格が非常に仕事とマッチしたのでしょう,素晴らしい営業成績を残し,なんと当時史上最年少の20代にして,ゴールドマンサックスの最高職位であるパートナーになったのでした。パートナーとなってからもマネジメントに手腕を発揮され,活躍を続けていらっしゃいました。

(注:ゴールドマンサックスでは,新入社員はアナリストと呼ばれ,そこからアソシエイト⇨ヴァイスプレジデント⇨マネージングディレクター⇨パートナーと昇進していきます。パートナーは全社員の1%未満の限られた優秀な社員だけが得られる職位です)

そのような優秀なエピソードを伺っていた方だったので,私が新入社員として直接ご挨拶させていただいときは,3分くらいのことだったと思いますが,蛇に睨まれたカエルのごとく,非常に緊張したのを覚えています。

NYでの辛すぎる試験

さて,ゴールドマンサックスに新卒として4月に入試すると,7月8月にニューヨーク本社での新卒トレーニングを約1ヶ月半することとなります。そこで,経済や金融の基礎知識を座学で学んだり,新入社員同士,今後仕事で関わるであろうNY,ロンドンや香港オフィスの同期たちに顔を売って,仕事でコミュニケーションを取りやすくしておくという狙いもあります。

そしてニューヨーク研修での最後の締めにあたるのが,シリーズ7と言われるアメリカで有価証券の売買に携わるために必要な資格試験の受験です。アメリカで証券会社に勤務してフロント業務に関わるには絶対に合格にしないといけない試験です。日本で言えば,証券外務員試験にあたるのかもしれませんが,出題される試験範囲や問題の難易度は,段違いにシリーズ7の方が難しく,試験時間も約4時間と非常に荷の重いストレスフルな試験です。

試験問題はもちろん英語とあって,英語がネイティブじゃない新入社員にとっては重ーく辛い試験です。しかも当時,新入社員の誰がシリーズ7に受かって落ちるかは先輩たちも注目しているところもあり,落ちられないというプレッシャーから,試験前は朝から晩まで勉強して寝不足だし憂鬱な気分になっていました(先輩たちも言ってました,この試験は二度と受けたくないと)。

試験当日のこと・・・。シリーズ7の試験はビルの一室の試験会場にある,パソコンで各自受講し(TOEFLの試験をイメージしてください),試験が終わると全問マークシートなので,点数が自動計算され,合否がすぐ判明します。試験が終わって,PCの画面に出てくる砂時計マーク(点数計算中に出てくる)!点数計算中はもうダメだ・・・,絶対落ちてると思って目を瞑ってひたすら祈ってました。恐る恐る目を開けると,なんと合格!しかもギリギリ,なんとか受かった!!!!よかった!!!

受験前とはうって変わって気持ちが軽く,どこにでも遊びに行きたいようなルンルン気分でした。東京オフィスでかつ部門が同じ同期は私を含めて3人だったのですが,そのうち女性のBさんは無事合格してました!しかし残念ながら同じ日に受験した東大卒の同期,C君が不合格になってしまいました・・・。とりあえず緊迫した受験勉強から一旦は解放されたことから,3人でNYの薄暗い街角にある中国人の経営するマッサージ屋に行って,疲れを癒しました。さて,まだまだNYの夜は長いし,帰国まであともう少しだからみんな遊びに行きたいところ。。。しかし,C君は,オフィスに戻って,(時差があるので,東京の朝になってAさんが出社するのをNYの夜まで待っていて)自分の上司で所属する部門のトップであるパートナーのAさんに電話しますとのこと。電話するのは自分じゃないけど,想像しただけでAさんに不合格の電話をかけるのは本当に荷が重いことでした。マッサージを終えて,私とBさんはNYの街へ,C君はオフィスに戻るため別れました。

「あなたは努力をしなかったんです」

翌日C君とオフィスで会ったら,パートナーのAさんとどんな会話をしたか教えてくれました。厳かにC君が試験の結果をAさんに伝えると,Aさんは一旦わかりましたと。そしてAさんはC君に聞きました。「試験に落ちるというのは,あなたは頭が悪いの?それとも努力しなかったの?」と。「あなたは東大出身なんでしょう?では頭は悪くないはずね。ということはあなたは努力をしなかったんです!!」

Aさんは生まれつきの頭の良さもあるんでしょうが,ご自身がずっと弛まぬ努力をされてきた方だからこそ,受からないといけない試験に落ちてしまった人への落胆が大きかったのかもしれません・・・。「なんで試験に落ちたんだ!」と詰め寄るでもなく,「このバカもの!」と声を荒げるわけでもありませんでしたが,「努力をしなかった人」なんですねというこの冷ややかな一言の方が言われてよっぽどショックだったし,自分への戒めになったと思います。

ちなみに言っておきますと,C君は決して努力をしてなかったわけではありません。試験対策のために会社でやっていた授業にも真面目に出ていたし,その後復習と過去問を解くために,オフィスに夜遅くまで一緒に残って,肩を並べて一緒に勉強していました。

ただ,会社に入ったからには結果が重要であり,決められた期日までに期待された結果が出せない人は,頭が悪い(=つまり効率が悪い)のか,努力が足りない(=仕事量が足りない)のかである,というゴールドマンでずっとトップを走られてきたパートナーAさんならではの厳しい仕事哲学だったのだと思います。

こうして新入社員としてNY研修に行き,シリーズ7の洗礼を浴び,直接言われたわけじゃないけれども,社会人としての厳しい訓示も受け取り,いよいいよ私は本格的にゴールドマンでの証券業務に関わっていくことになります。




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