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からのミルクビンにタンポポさすあいつ(九州旅行記)

8月28日(月)

荷物をまとめて羽田空港へ。京急線のダイヤ乱れで、乗るはずの電車が運休。焦ったけれど無事に間に合ってよかった。先に第二ターミナルに着いていた友人と合流して搭乗口へ。ついこの間国際線に乗ったばかりなので、国内線の手続きのあっけなさに驚く。

機内では持ち込んだコーヒーを飲み、じゃがりこをばりばり食べる。着陸数十分前から尿意に襲われてずっとトイレの話をしていた。

福岡空港に無事到着。福岡に来る度に、空港から博多や天神などの主要駅まで地下鉄であっという間に到着することに驚いている気がする。天神駅で下車し、改札口でスピッツの「さわって・変わって」を流しながらよれた笑顔で写真を撮る(様式美)。

ランチは天神ビルの新三浦で水炊き定食と瓶ビール。鶏ガラだけでとった白濁したスープがものすごくおいしかった。柚子胡椒がよく合う。

大牟田線で西鉄柳川へ向かう。駅間の距離が長いからか、ものすごいスピードで景色が流れ去っていくので驚く。
柳川に到着し、川下りの申し込みをする。風情のある笠を借りて頭にかぶり、送迎バスに乗り込んで船着き場へ。乗り込むときには揺れたけれど船が動き出すとまったく揺れずに滑るように進む。天気がよくて柳の緑や水面が光って見える。

船頭さんの軽快なしゃべりと、柳川にゆかりのある北原白秋作詞の歌を何曲も聞かせてもらいながらの船旅。とにかく日差しが強くて汗だくになって熱中症が不安だったけれど、乗船時に凍らせたペットボトルを渡してくれ、途中でかき氷も配ってくれて、それのおかげで体の熱を逃がすことができた。かき氷をこんなにおいしいと思ったのは初めてだったかもしれない。あっという間に溶けていくイチゴ味の氷を急いで口に運んだ。

下船して駅に戻る。熱中症ぽくて凍らせた麦茶を体に当てるなどしていたら復活した。
電車で、ホテルのある薬院へ。今回の旅の一番の目的は自著をお取り扱いいただいているブックバー・ひつじがに遊びにいくことで、ひつじがの近くに宿をとっていた。ひつじが店主のシモダさんがひつじが近くのおすすめ飲み屋のリストを送ってきてくれたのでそれを参考に友人と酒場めぐりのプランを立てた。

まずは17時開店のエフコンセプトへ。海鮮がおいしいと聞いていたので、生ビール、ごま鯖、サザエのつぼ焼き、刺身盛り合わせを頼む。ごま鯖、1月に京都に行って食べたときも感動したのだけれど福岡名物だったのか。ゴマダレの絡んだ鯖なんておいしいに決まっている。これだけで生ビールがほとんどなくなる。

刺身盛り合わせはコースのように三皿に分けて運ばれてきた。最初の皿だけでも新鮮でおいしくて満たされていたのに、二皿目は手巻き寿司のように海苔と一緒に供されるのだ。

てのひらに海苔を置いて、その上にまぐろのたたきやいくらやたくあんやイカを載せながら、米のない手巻き寿司!星のない世界!いやaikoか!などとどうでもいいことを言い合いながらあぐあぐと口に運ぶのだけどこれがとてつもなく楽しい。日本酒もすいすい進むのでふたりで福岡の寒北斗とshibien、それから鍋島のサマームーンを飲んだ。数の子とマグロの中トロで中締め。

それから、シモダさんが「福岡屈指のディープスポット」としてすすめてくれた三角市場へ。すすめてもらった日本酒とおでんの店・ソルリバに向かう。18時に開店して間もないはずなのにほぼ満席で、入口直ぐの席にぎりぎり滑り込んだ。ビールとおでんの盛り合わせを頼む。

これ全部で650円なの、どうなってるの。メニューでは盛り合わせの内容は「卵・大根・厚揚げ・トマト・ごぼう天・牛スジ・春菊etc」となっていて、まさか全部は入っていないだろうと思ったら全部入っていたので「おでんの神セブン」と名付けた。神セブン以外にはねじりこんにゃくもねじこまれていた。福岡の人たちはどうしてなんにでもいくら載せるの……?最高じゃない……?と言い合う。
日本酒の品ぞろえがとてもよく、「好きな日本酒言ってもらえたら近いの出しますよ」と言われ、愚かな酔っ払いだから「花陽浴とか好きですねえ」と答えたら、大阪のかたの桜というお酒を出してくださった。なるほどたしかにめちゃくちゃ好みだ。

おでん以外も食べたくて「もち巾着炙りチーズ明太子」と「自家製レーズンバター」を注文。

どちらもおしゃれでおいしくて、ワイングラスの日本酒とよく合って幸せになる。おでんダシで作る炭水化物メニューというのもとても気になったけれど、まだこの後があるので泣く泣く我慢。

宿にチェックインしてシャワーを浴びて着替え、荷物を置いてからブックバーひつじがへ。店主のシモダさんと初めて会えた。クラフトビールを注文し、ご挨拶もそこそこにアンジュルムトークを始める。「シモダさんにアンジュルムの推しを聞く」というのが今回の旅の最重要ミッションだったのでした!
推し、誰だと思います?と訊かれ、ヒントを出されたら無事正解できたのでよかった。橋迫鈴さん好きな人に悪い人はいないからね。ってか私は今完全にアンジュルム箱推し状態なので、誰が推しと言われてもわかるー最高だよねという気持ちにしかならないのだが。
一通りアンジュルムについて語ったあと、ZINEのおすすめをいろいろ教えてもらったり、福岡の文学シーンの話もうかがえてとても楽しかった。今秋の福岡文フリに出られないのがとても悔やまれる。来年は絶対に出たい。そしてまたひつじがになだれ込みたい。

ひつじがを後にして、友人と屋台が立ち並ぶエリアへ。めちゃくちゃにぎわっていた喜柳という屋台に行って、瓶ビールと博多ぐる巻きなる食べ物ともちもち餃子を頼む。

友人が焼酎と暑さでバテていたので私がほとんど(四分の三切れ)食べた。おいしかった。
ホテルに戻ってそのまま爆睡。

8月29日㈫

昨日はビール日本酒焼酎ビールと好き勝手に飲んだけれど、酒はまったく身体に残っていなくて元気に起床。朝風呂を決める。
高島屋の3階から出る高速バスで由布院へ。PAULのパンを買っていってバスの中で食べた。バスの中で友人が寝たのでその間に一昨日までの分の日記を更新する。

由布院は気温が少し低くて涼しかったけれど、太陽がぎらぎらしていて街全体が明るかった。観光客向けの商店街越しに遠くに見える山々がとても美しい。

湖に行くか、タクシーでまやたんおすすめの太宰ゆかりの建物に行くか、何をするか悩み、悩んだ末に辻馬車というのに乗ってみることにする。辻馬車が出る14時半までかなり時間があったので蕎麦屋に入ってご当地ビールと肉そば。

友人はとり天と天ぷら蕎麦を頼んでおり、とり天と天ぷらをもらうとかなりの大ボリューム。美味しかったけれど、お腹に血がいって暑さも相まって苦しくなり、駅の待合室で辻馬車の時間まで突っ伏して休んだ。

よく寝て体力が回復したところでいざ辻馬車乗り場へ。運転してくれるのは大きくて真っ白な馬のユキちゃん。目が大きくて聡明そうでものすごくかわいい。

同じツアーに申し込んだ8名が全員乗り込んでいざ出発。
蹄の音を響かせながらゆったりと馬車で進み、街並みが後ろにすーっと流れていくのを見るのはとても気持ちがいい。日差しは幌で遮られ、初秋の涼しい風がほんのりと頬をなでる。
売りに出されていたユキちゃんを、御者の人がずっと自ら世話して育てて、長らく一緒にこのコースを回ってきたらしく、ふたりの信頼関係がとてもすてきだった。

佛山寺と宇奈岐日女神社に立ち寄るコース。お天気がよすぎてどこで写真を撮ってもとても絵になった。

乗り合わせた人たちは、ユキちゃんに近い前方の席を途中で代わってくれたりしてみんなとてもいい人。でも、御者の人からユキちゃんが人間でいったらおばあちゃんという話を聞いて、「引退したら食べちゃうんじゃないの?」と訊いた乗客のじいさん、おまえは義務教育からやり直したほうがいい。私には動物と一緒に暮らしている方々の動物への愛情の大きさはわからないけれど、そういう暮らしをしている人にその動物を食べる話を振る人間が最低だってことはわかるぞ!

御者の方に許可をとって最後にユキちゃんを撫でさせてもらうと、夏場で毛が短くて、しっとりと汗をかいていた。お尻や脚の筋肉の力強さが手のひらに伝わってくる。ずっと元気でいてほしい。

二駅電車に乗って湯平へ。宿の人が車で迎えに来てくれていて、その車で山の上にある温泉旅館に向かう。全部の客室が露天風呂つきの離れになっていて、客室に案内されて感動する。マッサージチェアまであった。

部屋の露天風呂は後で入ることにして早速露天の大浴場へ。ロケーションが本当に最高だった。山の中の温泉だから目隠しも何もなく開けていて、山の空気を吸って森と夕暮れ前の青い空を眺めながら浸かることができる。しかも誰もいなくて貸し切り。思わず写真を撮ってしまった。

公式の写真か?

山の上だからか気温は30度もなくて、湯温もちょうどよく、泉質はさらさらしているのでいつまででも入っていられる。一時間近くひとりでその最高の温泉を堪能していた。

夕飯へ。昼の蕎麦屋での暴食が残っていたけれど、おしゃれ系の懐石だったのでなんとかなった。前菜プレートと刺身盛り合わせにほおずきがのっていて、これは食べられるのかなと話しながらかじってみたらめちゃくちゃ渋かった。ただの飾りだった。

豊後牛のステーキに至るころにはおなかがはちきれそうになっていたけれど、その後のごはんとデザートまで残さずおいしくいただく。

部屋に戻って今度は部屋の露天に入り、由布院の酒屋で買ってきた日本酒を飲む。

22時頃には就寝した。

8月30日(水)

9時間くらい爆睡してしまった。さっと起きて大浴場へ。朝陽を浴びて入る山の中の温泉も最高だ。仕事をやめたら一週間くらいここに泊まりに来たい。でも毎晩豊後牛のステーキをいただいていたら太りそうだな。

朝ごはんはすきやき!地鶏の生卵にくぐらせたらとてもおいしかった。

ホテルの人に湯平駅まで送ってもらう。無人駅で電車が来るまで写真を撮りあったりして遊ぶ。霧がすごい。


別府に向かう電車に乗り込むと、見渡す限りの田園風景。思わず玉置浩二の「田園」を歌った。昔から思っていたけど「田園」めちゃくちゃいい歌だよな。この曲のAメロも具体的な事物(青春で様々にもがきながら生きる若者たちの様子)を羅列しているなあと、先日のユニテでのエッセイについてのトークイベントで柿内さんが言っていたことを思い出す。
私は昔から、田園の歌詞の「からのミルクビンにタンポポさすあいつ」推しです。そんなあいつ、好きになっちゃうに決まってる。

別府駅に到着。荷物を預けて地獄巡りスタート。時折ぱらぱら雨が降っていたけれどそのおかげで少し涼しくてよかった。
湯煙の上がるターコイズブルーの温泉が美しい海地獄。

異様に地味な坊主地獄。


飲む温泉やら足湯やら黒卵やら様々なエンタメを提供してくれるかまど地獄。

ワニが八十頭もいる鬼山地獄(ワニ山地獄に改名したほうがいいと今まで何人が考えたんだろう)。

最後に、これまた地味な白池地獄を巡った。

あとふたつの地獄は遠いので行くのを断念。なんでも数字であらわしたい友人と行った地獄の中で地獄ランキングを作って遊ぶ。ふたりとも当然かまど地獄が一位だった。

昨日から食べすぎている上にかまど地獄で卵も食べたので全然お腹がすいておらず、昼は喫茶店ですますことに。グリーンスポットというコーヒー専門店を発見し、バスを途中下車して向かった。ミルフィーユとキリマンジャロをいただく。雰囲気のいいお店で癒される。

別府駅まで向かう途中で腹をくだして駅直結の飲食店街のトイレに駆け込んだりしつつ、別府駅の高速バスターミナルへ。土産ものを最低限購入してからバスで空港に向かう。
楽しくておいしい旅だった。また、福岡でシモダさんのおすすめ酒場めぐりは絶対にしたいし、できたら武塙さんと浅沼さんと三酒三様飲みをしたい。また大分に来るときには馬のユキちゃんにまた会いたいし、湯平のすてきな温泉旅館にもまた泊まりたいなー。そして今度こそまやたんに会いたい!

飛行機は無事に羽田に到着。友人と空港内のバーでビールとワインを一杯ずつ飲み軽く打ち上げ。

注文した以外にもいろんなワインを試飲させてくれていい店だった。
帰宅して風呂に入ってから就寝。

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