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嫉妬、不満、同族嫌悪

7月2日(日)

休日出勤の日。最寄り駅のパン屋でふたつパンを食べ、コーヒーを飲んでから横浜方面に向かう。仕事自体はゆるいけれど、一日拘束されてだるい。
移動中と休憩中、ひたすら『黄色い家』を読んでいた。一緒に働いていた同僚にどんな話か尋ねられたので、時々その時々の場面で起きていることを実況しながら読んだ。「今、母が娘に金の無心をしてる」とか「今、家の壁を黄色く塗ってる」とか。
帰りの電車の中でも読み続け、帰宅してすぐ読了。本当に面白かった。 前回こんなふうに夢中になって小説を読んだのいつだっただろうと考えてみたけれど、たぶん昨年の夏の終わりに読んだ『三体』シリーズだった。
深夜、今週分の原稿を書き上げて送る。

7月3日(月)

休日。午前中は、たまりつつある日記を書いたり、観葉植物を陽に当てたり水やりしたり。サンセベリアの土にふわふわした白いものが浮いていたからそれも取り除いた。それから、セロリと玉ねぎと豚肉を琺瑯鍋で煮込んで食べた。

今更だけど、土曜に観た映画「TAR」のことを考える。何かしらの才能があって権威を持った男性があの主人公みたいに振る舞って、それによってさまざまな問題が起きることは現実世界ではよくあることで、その立場にいるのが男性でなくマイノリティの女性であってもそういうことが起こりうる、ということをこの映画は描いていて、私はそれを見て、私もこの主人公みたいになる可能性があった(これからもある)かもしれない、と思って恐怖を感じた。
のだったけど、なんでそんな恐怖を抱かなきゃいけなかったのかなーという気になってきた。なんでろくに希望も持てないのに、さらにそんな脅しをかけられなきゃいけないのよ。この映画を観て、自分が世界的な指揮者として活躍している姿を思い浮かべられる女の子はいるだろうか。現実のその世界がどんな性別や出自の人でも活躍できる場所で、その世界で活躍している女性を題材にした映画が山ほどあって、その中の一作がこれだったなら何とも思わないけれど。
小学生の頃に観た「踊る大捜査線」の映画の二作目を思い出す。女性活躍の文脈で警視庁の指揮官に新しく抜擢された真矢みき演じる女性は、はっきりと現場の刑事の敵として、かつ能力のない存在として描かれていた。現実には、その立場にいる人間の大半が高齢男性のはずなのに。あの映画を観たときに私は、女性だからといって能力もないのに出世するなんておかしい、と憤っていたような気がするし、まして何か秀でた能力や美貌を持ち合わせない自分が出世する未来なんてとうてい思い描けなかったし、結局思い描けないまま今に至っている、ような気がする。

爪を夏色に塗って出かける。

チヒロさんと浅草橋駅西口で待ち合わせしていた。チヒロさんとお会いするのは初めて。
チヒロさんのサイト・かもめと街の「東京でオムライスを食べるなら。純喫茶&洋食屋おすすめ4選」という記事を読んで、いつか行きたいと思ってブックマークしていた、喫茶ゆうらくに連れて行ってもらう。まさか、記事を書いたご本人と一緒にこの店に訪れることができるなんて思わなかった。
運ばれてきたオムライスは、満月のようなまんまるの卵が、ふるふるとろとろなのにちゃんと一枚につながっていてすてきだった。バターたっぷりで、味のしっかりしたケチャップライスともよく合っておいしくて、あっという間に食べてしまう。

チヒロさんの頼んだナポリタンは、てっぺんに切れそうなほど細い輪切りのピーマンがのっていて、それがみっつ大きい順に並んでいるからマトリョーシカみたいでかわいかった。

オムライスを食べ終え、コーヒーを飲みながら、初めてお会いすると思えないくらいあれこれしゃべる。チヒロさんはうんうんと相槌を打ちながら聞いてくれて、私はいつも以上にとりとめなくぶわーっと自分のことを話していた気がする。
トイレに行って席に戻ったところで、チヒロさんがここは紅茶もおいしいと教えてくれて、バニラ味の紅茶をいただくことに。時間が許せばもう一杯、どこかでお茶をご一緒できたらと思っていたので、同じお店でそれが叶ってすごくおいしい。いい香りの紅茶に癒される。
時間が経つのがあっという間で、昼過ぎの一番暑い時間に入ったのに出たらもう陽が低くなっていてびっくりした。

乗換駅で軽く飲んでから帰宅した。

7月4日(火)

仕事を昼過ぎに切り上げる。 土曜にキネカ大森に傘を忘れてきたので、それを取りに行くついでに大森の珈琲亭ルアンへ。土曜は満席で入れなかったのでリベンジ。レトロな外装がかわいい。
中に入ると、照明が多くて外の光も入るから想像より明るい。コーヒー豆が敷き詰められた小さな卓に案内されて『富士日記』を読んだ。そして、先に食事とコーヒーのセッティングがなされるタイプの喫茶店で、それにすごくわくわくする。

やがて運ばれてきたトラジャとピザトースト、おいしかったです。

食材を購入してから帰宅して、北尾さんとGoogleミートで打ち合わせ。百万年書房から出る本の執筆もいよいよ後半戦。夏の間に形にしたい。

武塙さんが贈ってくれた東村アキコの着物漫画『銀太郎さんお頼み申す』を読む。面白い! 私も紋様とか絽と紗の違いとか全然よくわかっていないな。勉強になって面白い。続きも買います。
それから、ためていた日記を書いて、夕飯を食べてからキックボクシングへ。開始時間になっても誰も来なくてまさかのマンツーマン。フォームをしっかり見てもらえたし久々にミット打ちもできたのでよかった。

7月5日(水)

朝、早めに起きて出社前に豚ロースとねぎともやしとエリンギとしょうがでスープを作る。
仕事を終えて、新宿シネマカリテで「アシスタント」を観る。

多くの人から聞いた実話を元にして、映画業界の新人アシスタントの一日の出来事として構成したフィクションということで、淡々と進むのだけれどとにかく観ていてしんどくなる映画。清掃員として雇っている人がいるのに、新人アシスタントが床に落ちたゴミを拾うとかコピー機の詰まりをとるとか、そういう目に見えない仕事が全部押し付けられているかんじ。「おかしい」と声を上げようとすると、嫉妬とか不満だと男性たちに片付けられてしまうかんじ。終業後に電話で親と話していて、仕事はどうだと聞かれても何も話せないの、すごくよくわかるなあと思う。
うっかり「彼女が何に不満を抱いているのかよくわからなかった」というレビューを見てしまい、いやだからそれは不満とかじゃなくて! と思ってどっと疲れた。

伊勢丹に立ち寄って、お菓子やら化粧下地やら購入。ドライヤーがほしかったけれど、荷物が重くなるからまた今度にする。
高円寺に移動。時間があったので、駅前のトリアノンの喫茶スペースでミルフィーユを食べてコーヒーを飲む。

それから、駅からすぐのあわいものやさんでフラクタル山羊座ロンドさんが開催している文学酒場へ。他にお客さんがいないタイミングだったので、フラクタル山羊座ロンドさんとあれこれ(主に恋バナ)しゃべって、ビールと日本酒も飲んで、タロット占いをやってもらって楽しかった。

帰り道にもうちょっと飲みたいなという気持ちになって、好きなおでんと赤ワインの店へ。もち麩、トリッパ、キクラゲのおでん。ワイン塩、柚子胡椒などをつけて食べるとワインに合う。

7月6日(木)

知人が海辺で人を2人殺したという夢を見た。その人が殺したことを知っていて私はその人の手をとった。秘密の共有というシチュエーションにうっかり甘美なものを感じてしまう。

全然別の知人と、8月に一日かけて私のおすすめの本屋巡りをすることになった。これは夢ではなく現実。ちょっと前にその人に、最近疲れすぎていて大型本屋さんに行けないんです、という話をされて、個人経営の独立書店が最近増えていて、いいお店いろいろありますよ、蔵書数も一通り見て回れるくらいの大きさの店が多いし、店主さんのおすすめを聞いて普段読まないような本を手に取れたりもしますよ、という話をしたのだけど、それで、よければ今度案内してください、と言われたのだった。案内したい本屋さんはたくさんあるけれど、自分の作った本を置いてくれている本屋さんに連れて行くべきか行かないべきか、それが問題だ……。

退勤して、入谷のカフェ・レボン快哉湯にナオエダカナコさんの手描き人生マップの個展を見に行く。銭湯をリノベーションしたカフェ、と聞いてはいたけれど、外観も入口の下足箱も想像以上に銭湯のまま、という感じでわくわくした。

中は広くてきれいで、番台や、銭湯らしい富士山の絵も残っている。カフェなので、まずは席についてアイスとコーヒーのセットを注文する。在廊(在カフェ?)していたナオエダさんが席に来てくれて、これまで文フリでお会いしたり手紙でやりとりしたことしかなかったから、初めて対面であれこれゆっくり話ができてうれしかった。

展示された20枚以上の手描き人生マップには、その人の人生がぎゅうっと凝縮されていて、そのところどころにその人の人柄や、インタビューするナオエダさんの温かい眼差しが感じられてすてきだった。私もいつかお願いしよう、と決める。

帰宅して、双子のライオン堂さん主催、岸波さんコーディネートの『富士日記』読書会第二回。他の人の話を聞いて、自虐とかでなく自分の読みの浅はかさを感じる。点と点を線で結ぶような読み方、広い視野を持って作品世界を見渡すような読み方ができないというか。
前回うんこの話ばかりしてしまったので、今回はおしっこの記述に絶対触れないぞと思っていたら、岸波さんがその箇所を挙げてめっちゃ好き、と言っていたので楽しくなった。
酒を飲まずに寝る。

7月7日(金)

有休。着物をクリーニングに出し、洗濯もする。豚ロースとセロリとトマトともやしを琺瑯鍋で煮込む。今週末提出する原稿の骨組みを考える。
とても暑いのでアニエスベーのノースリーブのワンピースを着て出かける。本屋イトマイへ。 かもめと街 チヒロさんの展示を見て、完売の連絡をもらっていた『恋の遺影』を追加納品する。店主の鈴木さんに、前回着物だったから全然わかりませんでした、と言われ、そりゃそうだ! と思う。チヒロさんの展示は、様々な飲食店の風景を撮影した正方形の写真が並んでいて、どの写真にもトレーシングペーパーがかかっていて、それを一枚一枚めくっていくのがとてもわくわくした。

レジ前には台湾関連の本がたくさん並んでいて、来月台北に行くのであれこれ手に取って何冊か買った。読み終わったらまた買いに来よう。

併設のカフェで、かもめと街コラボの限定クリームソーダを頼む。淡いピンクと水色のグラデーションが美しく、アイスにラムネが入ってしゅわしゅわの食感も楽しいクリームソーダだった。

浅沼さんが前に行っていた大崎広小路の桑原商店へ。開店直後に入って日本酒飲み比べ。もつ煮や珍味三種盛りもおいしい。また来よう。

最寄り駅に戻ってドトールで日記を書いて時間をつぶし、T氏と合流する。いつもの沖縄料理屋で飲んだ。

7月8日(土)

午前中は接客仕事で忙しく過ごす。
支給された弁当を食べてからだらだら仕事。全然やる気が出ず、今日中にここまではと思っていた分が終わらないまま埼玉県の霞ヶ関へ。つまずく書店・ホォルさんの「読んでいない本を堂々と読む会」に参加する。初めて二階を訪れた。みんなで大きなテーブルを囲んで座って互いを監視し合うように黙々と読書する図をイメージしていたけれど、机と椅子は参加者同士の視線がかち合わないようにばらばらに配置されていた。一階で購入した缶ビールを飲みながら一年以上積読していたルシア・ベルリン『すべての年、すべての月』を読む。

飲み終わって、今度は、大きなテーブルに用意されていたセルフサービス・投げ銭形式の日本酒をもらう。集中して二時間読んだけれどまだ半分くらい。読んでいるうちにだんだん日が暮れて部屋に満ちる光の加減が変わっていった。

終わってから参加者の方と交流会。管楽器のようなよく通る美しい声をした常連さんとおしゃべりする。話しているうちに、ホォルさんで買った私の本も読んでくれていたことがわかって感謝しかない。
斜め前の席に座っていた男性がマリヲ『世の人』を読んでいて気になっていたのだが、その人がなんと羽織虫さんだった。文フリでもご挨拶していたのにお互い全然気づいていなかった。
店主の深澤さんが、近隣のお店からパスタなど取り寄せできると教えてくれたので注文した。羽織虫さんはジェノベーゼを頼んでいて、私はおすすめしてもらったレモンクリームパスタ。給食みたいに並んで食べながら話す。給食と違うのは牛乳でなくロゼワインを飲んでいたことだ。パスタは完璧なおいしさで、ほろ酔いも相まって幸せな気持ちになる。

羽織虫さんの執筆途中の小説を読ませてもらう。酔っ払いなのにあれこれえらそうに話ってしまった気がして申し訳ない。

居心地がよすぎて閉店時間まで居座ってしまい、慌てて店を出る。店を出る前にアーリーバード・ブックスの松崎さんにご挨拶できた。
一瞬土砂降りの時間があったけれど、店を出たら雨はもう上がっていた。雨上がりの夜の空気はしっとりしていて、不思議とそれは嫌な感じではなかった。
羽織虫さんが川越駅まで車で送ってくれるというので、お言葉に甘えることに。
車で川越を案内してもらう。ガイドブックなどではよく見るけれど、私は川越に来たことがなかった。昭和通り、大正ロマン通り、小江戸商店街を車で通る。夜21時過ぎに初めての観光地を訪れているのはすごく不思議な感じがする。それも車で、ちゃんとしゃべるのが初めての人と!
通り過ぎる蔵はたぶん昼間に見る以上どっしり佇んでいる。
車を降りて時の鐘を間近で見た。

鐘をバックに大型のバイクを撮影しているカップルがいて、通りすがりにちょっと喋った。羽織虫さんが、この鐘は音が小さいんですよとか、ここの蔵のスタバは、自治体が誘致したんですよとか教えてくれてツアーガイドさんみたいだった。

また車に乗って走り始めてから、さっきのバイクのふたりとすれちがったので手を振った。観光スポットを過ぎると、もう普通に銀行やチェーン店や塾の入ったビルが立ち並ぶ、よくある東京近郊の大きな駅だった。
「私はたぶんこの先の人生で夜の国道を入る車に乗ることがない。私の移動手段はいつだって電車と徒歩だ」とこの日記に書いたのは、わずか5カ月前のことだ。こんなふうに人の車に乗せてもらってドライブする夜が自分の人生にあらわれるとは思わなかった。

7月9日(日)

午前中原稿。母のものだった紺地にピンクと紫の薔薇柄の浴衣を着て、グレーの夏の作り帯を締めて湯島に向かう。友人の文学兎ちゃんと待ち合わせて旧岩崎邸へ。外観は青い空に映えるクリーム色の洋館。庭に回って見たらビリヤード場用の棟が本棟と別にしつらえてあってびっくり。
洋館は部屋ごとにテーマが違ってどの部屋もすてきだった。壁紙やカーテンの色、暖炉の意匠も部屋によって全然違う。天井に施された刺繍や寄せ木の床模様などの職人仕事が圧巻。
和館に進んでいくと、洋館とは趣がまったく異なる渋すぎる建物だった。窓から青紅葉が見えて、庭の植物まで和洋で変えているんだ……と感動する。和室でいただいた冷たいお抹茶と和菓子、おいしかった。

それからゆしまホールで昼飲み!文学兎ちゃんとあれこれ話す。シャリキンのバイスを頼んだら、瓶がぶっささった形状で出てきて面白い。

壁のぎらぎらのネオンを浴びるピンクの飲み物!『三酒三様』に書いたいくらの天麩羅と感動の再会を果たした。

帰宅して仮眠。夜、原稿を見直して送った。

7月10日(月)

仕事を昼で終えて帰る。いつもの道を歩いていたら暑すぎて、チェーンの坦々麺の店に吸い込まれてランチする。
帰宅してコーヒーを自分で淹れて、池辺葵『ブランチライン』の最新刊を読む。オンデ代表の藤崎さんというキャラがすごい。新しい世代には新しい世代の課題がある。誰もが先人の土台の上に乗っかっている。成功をおさめてきたひとがそんなふうに言えるのは並大抵のことではないと思う。

夕方キックボクシングへ。小6男子と一緒にレッスンを受ける。
文フリで買ったけどしばらく読めないな、と思っていた植本一子『愛は時間がかかる』を読了。植本さんのトラウマ治療の描写を読んで自分がその治療を受けているような気持ちになり、似た経験をいくつかしていることもあって記憶の底に封じ込めてきたいくつかのことが次々よみがえってきてずっとじわじわ泣いてしまう。
書けないこと、書くべきでないとされていることがあまりに多い。そんな中であらゆることをアウトプットしてきて、書かないものを自分の中にうまく抱えていく術がよくわからなくなっていることに気づく。
カウンセリングや治療ではないけれど、お金を払って人に自分の話を聞いてもらう機会を持てることになった。今朝申し込みをしたのだけど、今こそまさに自分にそれが必要だ、という絶妙なタイミングだったと思う。申し込み後のメールのやりとりで、既にたくさん自分の話をさせてもらっている。
ふしぎちゃんにそのことを報告したら、「私たちは人の話を聞く仕事で、自分の話を聞いてもらう機会がないもんね」と言われて目から鱗。そういえば。
原稿の直しは、今日は手をつけられなかった。代わりにノートの切れ端に今抱えているもやもやを書き殴る。
認めたくないけど、とても大事に思っていた人が私を繰り返しないがしろにしてきたことに、私は傷ついてそして腹を立てている。

7月11日(火)

昼まで仕事。完全に開店休業モードだったのにいろいろイレギュラーな仕事が入ってきて、今週とるつもりだった有休もとれなさそう。悪態とため息を交互につく。
外が暑すぎる。暑い暑いと言いながら同僚女子とランチ飲みに行く。ビールとワイン。

そのあとさらに飲み。またビールとワイン。ふとした瞬間に仕事を辞めたくなるという話で盛り上がる。ずっと文章を書いてきて、自分の本が出ることを今日初めて話す。

帰ったら爆睡してしまった。水分をとってなくて熱中症っぽくなっていた。
22時頃起きて動き始める。風呂、洗濯、トイレ掃除、洗面所掃除。水回りのあまりの汚さに笑ってしまった。

7月12日(水)

去年買ったネックピローを家の中で紛失し、見つからないまま今年の夏が終わりそうだ。出勤時蒸し暑くてしんどい。
仕事。イレギュラーな仕事をひとまず終わらせる。無限にコーヒーが出てくる部屋に久々に行く。
クレーム対応についての研修を受ける。去年私が追い詰められていたような事例が山ほど。去年私が対応したあの人たち、ハードクレーマーに分類される人たちだったんだなー!

有楽町に出て銀座珈琲でランチ。がっつり食べたい気になってカツカレーを頼む。食後にコーヒーを飲みながら原稿の直しをやる。

斜め前の、私の位置からよく見える席の2人組が占い師と相談者で、声が丸聞こえなのでつい聞いていたら44歳女性の恋愛相談だった。まるで数年後の自分を見ているような気分になる。同族嫌悪なのか、え、その年になってまだそんなこと言ってるの?きっついなー。とか思ってしまう自分が最悪だと思う。

ヒューマントラストシネマに行って「青いカフタンの仕立て屋」を観る。

前作「モロッコ、彼女たちの朝」もよかったけれど、これはさらにすばらしかった。なめらかな青い布地に金糸の刺繍を施す指先、みかんをつまみ口に運ぶ指先、公衆浴場でそっと触れ合う指先。前作に続いて人々の手の動きが印象に残る。

映画が終わって劇場を出て、Twitterを開いて芸能人の訃報を知って、あ、だめだ、と思う。元々、それ関連の話題を見聞きするのが苦手だ(得意な人もいないだろうけど)。今のこのアンバランスな精神状態で、このニュースにまつわる人々の無根拠な憶測や無責任なお気持ち表明を見続けたら私は絶対にだめなことになる。Twitterで関連ワードをミュートにしてみたけれど、トレンドに出てきたり、それとわかる単語を出さずにその話をしている人もたくさんいて、あーもうしばらくTwitterから離れたほうがいいな、と思う。1日に平均して5時間以上Twitterに張り付いている私からしたらこれは大きな決断である。スマホのTwitterアプリのアイコン自体を見えないところに移動させた。気持ちと状況が少し落ち着いたらまた戻ります。


日記を読んでくださってありがとうございます。サポートは文学フリマ東京で頒布する同人誌の製作(+お酒とサウナ)に使わせていただきます。