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合唱曲「明日へ」「南風」「遙かな季節」作者、富岡博志先生と過ごした日々の思い出を小説形…

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合唱曲「明日へ」「南風」「遙かな季節」作者、富岡博志先生と過ごした日々の思い出を小説形式で書いております。

最近の記事

キミがいたから

2004年、11月だったろうか。いずれにしても当時は季節の変わり目で、風邪とインフルエンザが急に流行していて、学級閉鎖もちらほら出ていた。 その日、昼休みの音楽室には 私と富岡先生しかいなかった。 合唱部の部員や有志のメンバーの在籍学級も いくつか閉鎖になっていたり、そうでなくても 罹って休んでいる部員も沢山いたのだ。 その日は、富岡先生と合唱をした。富岡先生が 伴奏しながら歌って、私が富岡先生とは違う パートを歌って… 女子パートと男子パートを交代しながら歌った。 「

    • 暑中見舞と年賀状

      ある日、富岡先生は語ってくれた。 「俺はね、旅行が好きなんだ。特に北海道が好き。 景色が雄大で、本当に綺麗で。これまで、何回も何回も北海道に行って、何枚も写真を撮ってきたよ。 電車も色々写真を撮ってきたし、切手とか、 はがきとか、手紙も好きだね。 何年も前の教え子から暑中見舞が来たり、 年賀はがきが来たり。けど、そうしているうち やりとりの人数も増えちゃって。 今では暑中見舞も年賀状も百何十人分も書いてるから、もう大変なんだよ笑」 「!!!そんなに書いてるんスか?」 「だって

      • 第7話 Nコン(2004年)

        合唱部への正式な入部が決まった、私、Aくん、Yくん。 やがて男子が総勢5,6人になり、同学年(中2)の女子も元々在籍していたようだが、 さらに女子の新入部員も沢山増えて、 ソプラノ、アルトで総勢20人ほどになった。 林間学校での出来事が、2年生の心を動かして、 PR効果があったのかも知れない。 中3女子の6人の先輩たちが、 「スゴいよ、私達の合唱部もメンバー揃ってきた! これなら挑める、Nコンに!」 と言って喜んでいた。 確かにこれなら、人数規模的にライバル校に並べる。

        • 第6話 転機(林間学校)

          2004年、中2の初夏。ある昼休みのこと。 有志男声合唱団の時間のときに、 富岡先生が提案してきた。 「今度の林間学校のしおりを作ってるんだけど、 林間学校の中日(なかび)の夜の集会のとき、 「フレトイ再び」を2年生全員の前で歌ってみたら どうだろう?」 本気かよ?って思った。たった5人の男子が80人近くの前で歌う?普段教室で一緒に過ごす友達の前で? でも、強い反対の理由も見つからない。 その場ではやるかやらないかうやむやで 話が終わる。そして、また毎日の昼休みの、 「

        キミがいたから

          第5話 少しずつ、体制が整う。

          「こいつ、チェスそこそこできるんスよ」 「チェス?」 「囲碁部では、将棋とチェスもやるんス。頭使う ゲームならなんでもいいんで。」 「へぇ、そんな感じなんだ」 おい、Aくん、それバラすなよ… 顧問はそれ、隠してるかも知れないのに… 「な訳で人生ゲームとか、麻雀とか、花札…」 「待て!それはマズい!」急いで制止する。 「ああそっか…。えぇと、それに、基本はウチの学校全員部活やる感じだけど囲碁部なら幽霊部員okだし」 だから言うなよ〜 「だから、部活始まってるこんな時間になって

          第5話 少しずつ、体制が整う。

          第4話 自分の意志で

          実は前年、富岡先生は昼休みには 有志男声合唱団の練習を、 一方で放課後には少人数の女子だけから成る合唱部の練習を音楽室で行っていた。 富岡先生は、「ウチの学校には同好会がなくて、 部としての認定基準も甘いから、合唱部と名乗ってはいるけど、レベルは合唱同好会だよね…」 と言っていた気がする。 M部長:「3人とも、隠れて聞き耳たてるようなことしてごめんなさい。でも、折り入ってお願いがあるの!これは私の、いや、私たち6人のワガママなんだけど、 Nコンにどうしても出たいの!!!」

          第4話 自分の意志で

          第3話 代替わり

          中3の先輩達はやがて卒業し、 2004年4月、私は中2になった。 昼休みになっても、もう私と富岡先生だけ。 有志男声合唱団は実質の解散なのだろう。中3の先輩達に随分良くしてもらったので 寂しかったが、もう新たな時を刻んでいかねば ならない、と割り切ろうとしていた。 中1のときの音楽の選択授業を一緒に受けていた男子の同級生に、AくんとYくんがいた。 新学期になると私とAくん、Yくんはすぐに音楽室に呼び出された。 音楽室に着くと富岡先生がいて、何かを言いたそうにしているが、ど

          第3話 代替わり

          第2話 有志男声合唱団

          思い返してみると、2003年、中1の春、音楽の授業の歌のテストの日に欠席し、1人だけ別日に歌わされたような気がする。 そこで富岡先生は、私の歌声に何かを見出したようだった。 2学期になると選択授業というものが新たに設けられて、正規の時間割に加えて週に1時間だけ、音楽、美術、体育、家庭科などから選べる時間枠があった。 そのとき、迷わずに音楽を選んだ記憶がある。 富岡先生がとてもユニークで面白い人だったから。 音楽の授業では生徒一人一人に紙製の2穴ファイルが配布される。それを

          第2話 有志男声合唱団

          第1話 全てのはじまり

          2003年秋、中1のある日、音楽科の富岡博志先生に呼び出しを受けた。 「昼休みに音楽室にくるように」 給食を食べ終わると音楽室の防音扉を開ける。そこには、中3の男子の先輩達が2,30人はいただろうか。なに?いじめられるの?少しばかり怖く感じたが、富岡先生が音楽室にくる。 富岡先生は音楽室の使い方が少し変わっていて、生徒用の全ての机が取り払われ、ピアノを取り囲むように生徒用の椅子が整列している。 でも先輩達は座る様子ではなく、椅子よりもさらに近づいてピアノを取り囲んでいっ

          第1話 全てのはじまり