暑中見舞と年賀状

ある日、富岡先生は語ってくれた。
「俺はね、旅行が好きなんだ。特に北海道が好き。
景色が雄大で、本当に綺麗で。これまで、何回も何回も北海道に行って、何枚も写真を撮ってきたよ。
電車も色々写真を撮ってきたし、切手とか、
はがきとか、手紙も好きだね。
何年も前の教え子から暑中見舞が来たり、
年賀はがきが来たり。けど、そうしているうち
やりとりの人数も増えちゃって。
今では暑中見舞も年賀状も百何十人分も書いてるから、もう大変なんだよ笑」
「!!!そんなに書いてるんスか?」
「だって、返事が旅行中の北海道の消印で返って
きたら、みんな喜んでくれるかなって思って。」

年賀状なんて、絵柄が決まってるフォーマットが
沢山あるのに、ましてや(2004年の当時も)
メール一本あれば用件なんて伝わる時代なのに、富岡先生は一人一人違うメッセージを、
手書きで添えて返す。

暑中見舞、年賀状。いつも余白びっしりに
メッセージを書いて返事をくれる。
もう便箋にしちゃえば?って思ったりもしたけど。

富岡先生からのはがきには、いつも先生が撮った
北海道の写真がプリントされていて、
ただただ広い草原、日の入り、朝日、雄大な景色
だったり。いつもすごく凝った作りだった。


北海道をモチーフにした曲も、
「フレトイ」「フレトイ再び」と2曲もある。
アイヌ語の曲名が珍しくて興味を引いたし、
しかも2曲のテイストの違いが、
北海道の自然の様々な側面を、暗示しているような気がした。


2004年、中2の夏、私は富岡先生に暑中見舞を出してみた。
旅行先の物産店で見た、小さなうちわがついた
レターセット。
白地のうちわに、筆ペンでなぜか「友情」って書いた気がする。なんでだっけ笑その暑中見舞の返事もちゃんと届いて、
ただそれだけのことなんだけど、
とても嬉しかったんだよなぁ。
夏休みや冬休みで、部活が無くても、
どこかへ旅をしている富岡先生の存在を
感じられるような気がして。


実は、富岡先生の誕生日は9月3日で、これは
ドラえもんの誕生日と同じ日だから、
よく生徒たちには「ドラえもん」て仇名で
呼ばれていたそうな。
好んで、水色のワイシャツを着ていたのも、
ドラえもんを意識していたのかな。

「大変なんだよ」といいつつ、話す富岡先生は
満面の笑みを浮かべていた。
まん丸で、やさしそうな
その笑顔が、今でも心に焼き付いている。




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