第5話 少しずつ、体制が整う。

「こいつ、チェスそこそこできるんスよ」
「チェス?」
「囲碁部では、将棋とチェスもやるんス。頭使う
ゲームならなんでもいいんで。」
「へぇ、そんな感じなんだ」
おい、Aくん、それバラすなよ…
顧問はそれ、隠してるかも知れないのに…
「な訳で人生ゲームとか、麻雀とか、花札…」
「待て!それはマズい!」急いで制止する。
「ああそっか…。えぇと、それに、基本はウチの学校全員部活やる感じだけど囲碁部なら幽霊部員okだし」
だから言うなよ〜

「だから、部活始まってるこんな時間になっても
3人は音楽室にいてくれるんだ」
「ま、幽霊okっスからね」
「…てか私たち、囲碁部に負けてたんだ…」
先輩がボソッと言う。
合唱って勝ち負けじゃない気もするけど、
それもそうだよな…ハハハ…。

いずれにしても、籍を二重に置いていいものか、
きちんと確認しておかなければならなかった。



日を改めて、昼休み。音楽室には私と富岡先生の
他にAくん、Yくん、プラスあと2人の総勢で
5人くらいの合唱団が顔を並べた。
新生 有志男声合唱団が産声を上げたのだ。
女子パートは私が歌って残りのメンバーが
みんなで男子パートを歌う。

心奮わせる心地の良いハーモニーの刺激。

「南風」「フレトイ再び」「明日へ」
「ぼくらの世界」…富岡先生が作詞作曲した歌。
「ケサラ」「心の瞳」「懐かしい日々」…原曲も
有名ながら、富岡先生が有志向けに編曲した歌。
その他、数えきれない沢山の歌を、くる日もくる日も歌いまくっていた。
「サンタルチア」をイタリア語で挑戦してみたりもしていた。

昼休みの音楽室には、去年と同じように、
私たちだけの特別な時間が流れるようになった。



囲碁部顧問の先生を訪ねる3人。
「実は、合唱部からスカウトが来たんです。でも囲碁部もやめたくないです。二重で籍を置いてもいいですか?」
「いいよ。」
え…あっさりしすぎじゃない?
「そのかわり、たまーに音楽室にお邪魔して
3人の合唱の様子、見に行くから」
「やりたいこと、頑張ってな!」
「はい!」
こうして、合唱部の練習は幕を開けたのだ。

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