見出し画像

誰バス問題と、心理的安全性の話し

Goodな企業がGreatな企業に飛躍するには何が必要なのか?


その飛躍に必要な法則を探しだしたことで有名になった名著「ビジョナリーカンパニー2飛躍の法則」という本があります。偉大な企業には共通点があり、それを「弾み車の法則」と名付けました。その中の1つの法則が「誰をバスに乗せるか」です。いつかnoteでもビジョナリーカンパニーの本の紹介もしたいと思います。


本の中にあるあまりにも有名な一節がこちらです。

「適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、その後にどこに向かうべきかを決める。」

この有名な一節を知らない経営者はいないかと思います。何をやるかよりも、誰とやるかが何より重要だということを著者であるジム・コリンズは発見します。偉大な企業を研究すると、不適切な人をバスから降ろしてからどこに向かうかを選び、出発しているのです。


「このバスでどこに行くべきかは分らない。しかし、分っていることもある。適切な人がバスに乗り、適切な人がそれぞれふさわしい席につき、不適切な人がバスから降りれば、素晴らしい場所に行く方法を決められるはずだ」

解雇する権利が経営側にあるアメリカらしい理論ではありますが、日本の経営者もこの理論が大好きですね。これを通称「誰バス問題」とか、「誰バス理論」とかいいます。


多くの企業の経営者が「人」の部分で苦労していることが伺えます。
今日はこの「誰バス問題」と、現在の組織開発ブームで頻繁に聞くようになった「心理的安全性」について僕なりの意見を書いてみたいと思います。


集団凝集性と心理的安全性についての研究結果です。

キャプチャ

リクルートの組織開発をやってこられた大沢さんは著書の中でこう書かれています。

集団のメンバーをその集団に留まらせうる求心力的な力が働く強さのことを集団凝集性と呼びます。凝集性の高い集団では、その集団に属している人たちの心理的な帰属意識が高く、メンバー間の連帯感や仲間意識も強くなる。

参考:心理学的経営(著者:大沢武志)


図の通りなのですが、凝集性が高ければ高いほど、仕事上のストレスは軽減されています。僕は組織には凝集性は不可欠だと思っています。その凝集性が集団規範につながり企業文化を形成していきます。もし企業文化に良い悪いがあるとすれば、それは良い集団規範があるか、悪い集団規範があるかです。そして、その集団規範の出所は凝集性であり、凝集性を生み出すのはつまるところ「人」なのです。


ここで「誰バス問題」に戻ってきます。
組織に良い循環を生み出すか、悪い循環を生み出すかは、誰をバスに乗せ、誰をバスから降ろすかとほぼ同義だと僕は感じています。日本では企業に社員を解雇する権利は事実上ないので、バスから降ろすことは不可能です。ゆえにエントリーマネジメントが大事になってきます。


入社の段階でその企業が持っているMission・Vision・Valueに共感できるか、成長意欲は高いか、変化を前向きに捉えられるか、当事者意識はあるか、リーダーシップ体験は豊富か、学ぶクセはついているかなど、その企業にとって求めている人材であるかをしっかりと見極める必要があります。


ビジョナリーカンパニー2「誰バス理論」にのっとれば、求めている人材をしっかりと採用し、適切な場所に座らせることが大切です。行き先はその後でどうにでもなると書いてあります。


正直、立上げからMission・Vision・Valueが明確な企業なんてあるのか?なんて思いますし、ましてや事業の方向性がしっかりと定まっていない状況で求める人材像なんて決まるのか?なんて思います。そして、事業が立ち上がってない企業や、リソースの足りない中小企業で、この人材難の今、求める人材像なんていってられる余裕あるのか?なんてことも思ったりします。


ただ、適切な人がバスにのり、適切な場所に座れば、当初のプランが仮にうまくいかなかったとしてもピボットを繰り返しながら事業を軌道にのせていくことは可能だと僕も感じます。


今は第3次組織開発(OD)ブームと呼ばれています。ダニエル・キムが提唱した組織の成功循環モデルが再度盛り上がっています。心理的安全性と対話がバズっていると言っていい状況かと思います。

キャプチャ


最近僕が危惧しているのは、凝集性が高まっていない状況で心理的安全性を高めようという動きです。無秩序な多様性の取り入れは組織を混乱させ、ヒエラルキーを崩壊させます。結果として組織の戦略実行力が落ちることになるのです。


山口周さんが面白いtweetをしていました。

頭いい人は言うことが違うな~なんて思います。(笑)


凝集性という言葉は何か「縛られる」や「軍隊的な」や「カルトっぽい」などネガティブな印象を持たれがちだと感じています。しかし、凝集性の高い組織に育てることは企業にとっても、個人にとっても幸せなことは間違いがないのです。

企業は新興宗教ではないので社員を洗脳することとは違います。よくHR界隈で語られる「新入社員は染めやすい」みたいなのがありますが、僕はどうなんだろうと思います。Mission・Vision・Valueを軸に共感した社員が働いている会社は外からみるとカルトのように見えるのかもしれません。


もちろん合う「人」だけ集めれば凝集性の高い組織になるはずはありません。当然ですがそんな簡単な話しではありません。凝集性を高めるには4つの要因があります。

キャプチャfdfd

いわゆるメンバー同士の仲がいいというのは③ですが、それだけでは真の心理的安全(ストレス低減)は担保されないし、凝集性も高まりません。残りの3つがあることが何より重要です。


現在インナーブランディングに注目が集まっている理由も、この①②④を高めたいという要望に他なりません。①は集団の目標(Vision)が魅力的であることを、社員のコンテキストに沿って伝えることが大事になります。②は企業のありたい姿(Vision)が働く個人のなりたい姿に重なるように組織を開発していく必要があります。
特にこの①と②は組織の戦略実行力を高めていくのに非常に重要な要素になっています。


現在、多くの企業の組織で直面している課題は、②の集団目標が個人に受容されていない状況で、③の対人関係だけを良くしようと、目的からはずれた対話が繰り返されていることです。

健全なヒエラルキー構造が崩れ、上下関係の崩壊によるフラットな世界がそこには出現します。これは誰にとっても仕事がしずらい環境ですし、組織のパフォーマンスは上がりません。


まとめ

心理的安全という言葉は耳障りがいいのですが、チームの凝集性が高まっていない状況で、チーム内の対人関係ばかりをよくしようとしても限界があります。チーム内の対人関係は確かに大切ですが、それよりもチームの目標が魅力的か、チームの目標がスタッフに受容されているかの方がよっぽど大事です。この2つができていればチーム全体の凝集性が高まり、結果として個人の心理的安全も確保できると思っています。


多様性とか、ダイバーシティとかの言葉だけ踊っていますが、しっかりと凝集性を高めて、社員には心理的安全な状況で働いてもらいたいと思います。そして、組織の戦略実行力を高めていこうと思います。

こんにちは。最後までお読み頂きましてありがとうございます。このnoteは僕のつたない経営や、インナーブランディングを行う中でのつまづきや失敗からの学びです。少しでも何か皆様のお役に立てたら嬉しいです。サポートはより良い会社づくりのための社員に配るお菓子代に使わせていただきます!