「自分で考えなさい!」は、子どもを思考停止させる言葉
子どもがよく考えて自分で答えを出す大切さをこちらのnoteで
書いたところ、こんなご相談がありました。
「自分で考えなさい!」は親として言いがちな言葉ですね。この言葉、そもそも子どもはどう受け止めているのでしょうか? NGマンガから見てみましょう。
■「よく考えなさい!」と怒られた子どもは何を考える?
ご相談で多いのが、
・最初は優しく注意する
↓
・でも、子どもは行動に移さない
↓
・今、何をすべきなのか考えるように伝える
↓
・それでも、子どもは行動に移さない
↓
・結局怒ってしまって落ち込む
という悪いパターンになってしまうというもの。
何をすべきか答えを言わずに、子どもに考えさせようとして、マンガのお母さんも「やることあるでしょ」「発表会もうすぐだよ」とヒントを出していますね。
でも子どもがその言葉の意味を全然考えないので、とうとう最後には「よく考えなさい!」と怒ってしまっています。
ここで問題です。
「よく考えなさい!」と怒られた子どもは何を考えるでしょう?
正解は……
残念なことに、
「お母さんに怒られずに済むには、どうしたらいいだろう?」です。
自分がすべきことを考える子に育って欲しいのに、お母さんお父さんに怒られないことを基準に考える子に育ってしまうとしたら悲しいことです。
この言葉かけが上手くいかないのは、お母さんの中にすでに正解(この場合、今すぐにピアノの練習すべき)があって、そこに子どもを誘導しようとしている点です。
どうしたいのか決めるのを、子どもに任せる会話に変えてみましょう。OKマンガを見てください。
■親の言葉かけ次第で子どもは考える子になる
マンガでお姉ちゃんは、
「お城を完成させたらピアノの練習をする」
と言ってから、
「お腹すいたから、ご飯を先に食べてから練習する」
と自分の頭で考えて、答えを出せましたね。
答えを出せた理由は、
・自分が夢中になっている世界にお母さんも楽しそうに一緒にいたこと
・お母さんがタイミング(一息ついた時)を見計らって、提案(ピアノいつやる?)したこと
この2つです。
大人でもそうですよね。
真剣に何かに取り組んでいる時に、部外者から急に何か言われたら、「邪魔しないで…」とうるさく感じてしまいそうです。
一歩譲って大人なら「今ちょっといいですか」で気持ちを切り替えられるかもしれませんが、子どもにはまだ無理なので、親の視点を変えましょう。
「ピアノの練習をするかしないか」という親の視点から、「子どもが今、何を楽しんでいるのか」の視点に変えることで、言葉かけが変わります。すると子どもが考え始めます。
■考える子どもに導く4つのポイント
ポイントを4つに整理してみましょう。
1 まずは、子どもがしていることを「認める言葉」をかける
マンガの場合は「すてきね。楽しそうね。2人仲良くしてるね」という声かけです。
2 子どもの視点でみる
親がして欲しいことではなくて、子どもがしていることに興味を持ち、一緒にその面白さを共有することが大事です。マンガの場合は、ピアノの練習(親の視点)ではなく、ブロック遊び(子どもの視点)を一緒に楽しむことですね。
この視点がないお母さんお父さんがとても多くて、もったいないと思っています。「子どもが夢中になること=そこから多くを学んでいる」ことを発見できるはずだからです。
それを発見できると、親がやらせたいと思っていたこと(この場合はピアノ)よりも、子どもにとって大事なことが見えてくることもあるほどです。無理にやらせてやったとしても、あまり意味がないことはご存知の通りですね。
3 タイミングよく提案する
遊びが一区切りしたタイミングや集中力が途切れたタイミングなどを見計らって、忘れていること(この場合はピアノの練習)を思い出させる言葉をかけます。
4 子どもが決めやすいヒントを出す
「いつ?」「どこで?」「誰と?」など、子どもが考えやすいことから聞きましょう。年齢によっては、2つの選択肢を提案するのがいいですね。
「何時?」よりも「ご飯の前?後?」など、順番を決めることから始めると自分で考えられるようになっていきます。
決めるのは子どもです。親が考えたことに子どもを誘導するのは、考える子に育つわけではありません。気をつけたいですね。
時々、子どもが自分で決めたのに、やらない場合はどうしたらいいですか?というご相談を受けます。4、だけでは難しいです。ちゃんと1、2、3、のステップを親が踏めば、やる子に育ちます。お子さんを変える前に、親が変わりましょう。
マンガ:とげとげ。
執筆:天野ひかり
上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして 講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げた「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表理事、一般社団 法人グローバルキッズアカデミー主席研究員。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)や『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)などがある。