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【琴爪の一筆】

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読書の際に「琴線に触れた」を超えて「琴爪で弾かれた」一文一節を紹介しつつ、その私的な心象や思考を綴ります。心を鳴らす言葉に出会った時の、その音色を忘れないように。
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#読書論

【琴爪の一筆】#12『娼婦の本棚』鈴木涼美②

【琴爪の一筆】#12『娼婦の本棚』鈴木涼美②

大人は何でも意味づけしてしまいますよね。思い当たる節のない不安、踊り出すほどの歓喜、我慢しきれない嗚咽、何でそうなったのかなんて判りはしないものにも、無理矢理意味づけをする。そうやって、とりあえず良くも悪くも、自分の心を一旦は安定させる技を身につけて、心の揺れに身を任せることができなくなっていきます。

大人の行動には目的が必要とされ、直接それに向かっていない行動は、短絡的に無意味とみなされて軌道

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【琴爪の一筆】#11『娼婦の本棚』鈴木涼美①

【琴爪の一筆】#11『娼婦の本棚』鈴木涼美①

この【琴爪の一筆】を始めたきっかけだった気がします。

私の場合、ビビビッビッ!とまではいかずとも、ムムゥくらいの一文でもピックアップしていたり。なので後で読み返してみた際、ごく稀に「犯人(自分)はなぜこのページにドッグイヤーをつけたのか」という脳内地産地消ミステリーが起こります。周辺の数ページを入念に読み直したにもかかわらず、未解決のまま迷宮入りした場合は、「最初から事件なんてなかった」とドッグ

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