「無職底辺氷河期世代、身体が思うように動かない苦しみを味わう ②」

しばらく仕事に従事する日が続いて、自分なりに頑張ることにした。私の母も喜んでくれていた。

しかし実を言うと、採用される前から身体のあちこちに痒みが出て、掻きキズがたくさんできていた。それは持病のアトピーの痒みではなく、長年のアトピー治療に用いられる「ステロイド」という塗り薬による副作用から来ていることを知って驚愕した。ステロイドの副作用について知らぬ存ぜぬで使用していたことを後悔した。

ステロイドを使用して痒みやキズを抑えているうちはいいのだが、それを使い続けていると精神疾患や鬱病、眠剤の薬のように、それがないと生活ができなくなる薬物依存に陥る可能性が大きい。しかも使えば使うほど難治化するということを知ってステロイドをやめる決意をした。

「脱ステロイド・脱保湿」でステロイド依存を治すという情報も目にした。
ステロイドを断つ、そして保湿も一切しない。皮膚は乾燥させることで治っていくので、保湿をすると返って治りが遅くなり、ワセリンやクリームなど一切使わないほうがいいと書いてあった。Youtubeでも情報発信していた。しかし、これを成し遂げるにはかなりの覚悟が必要だということである。

昨年の秋頃からステロイドをやめた。どっちにしても皮膚科に通うカネもなかった。治らないのに薬代ばかりかかる。
ステロイドを塗っていた時は魔法のようにキズだらけの皮膚があっという間に綺麗になり、しばらくは痒みもなく快適ないつも通りの生活を送ることができた。しかし、肌が綺麗になってしばらくステロイドを使わなくなると、塗っていたところが何故かムズ痒くなってくる。ステロイドを塗っていたところをよく見ると、皮膚そのものも何かサランラップのように薄いような感じに見えた。皮膚が薄くて掻くとすぐに血が出てくる。

痒みがどんどん強くなってくると、寝ている間に無意識に掻きむしってキズだらけになり、下手すると血や滲出液が出てくるようになる。なぜか解らないけど、掻けば掻くほどあちこち痒くなり、あちこち掻くようになると、次第に皮膚がガサガサになって粉や皮膚の細かい屑(落屑)が落ちるようになった。細かいことを書くとキリがないし、汚ない話になるのでここでやめておく。

だんだんとあちこちを掻きむしってヒリヒリするようになり、手の甲も炎症から真っ赤になった。それでもまだ職場では手袋をはめれば仕事は何とかなっていた。足の甲からふくらはぎにかけてなぜか腫れ出してパンパンにむくむようになった。むくんだ足は靴に収まらなくなった。我慢して職場の厨房靴を履いて一日中動き回っていると、家に帰ってきた時には足が痛くて歩けないくらいになった。

ステロイドをやめてから、身体がどんどんおかしくなっているのを感じていた。痒い、痛い、辛い、それしかない。疲れているのに寝ている時も痒いのでずっと手は皮膚を掻いている。痒みから眠れなくなっていた。熟睡できないまま無理やり仕事に行く。疲れて帰ってくるがグッスリ眠れない。それの繰り返しになった。当然どこかで行き詰まるのは解っていた。

ある日から、仕事に行く日でも朝起きることができなくなった。痒くてぐっすり眠れず、明け方にウトウトするが、眠れそうになった頃に携帯のアラームが鳴る。当然起きれない。起きようと思って身体を起こして悲鳴を上げた。掻きキズだらけで身体がヒリヒリしてどうにもならない。全身をナイフで切り裂かれているような痛みだ。時間はどんどん経って家を出なければならない時間になっても、まだベッドの中でもがいていた。

どうしようもなく、職場の責任者に電話して休ませてもらった。しかし、これをきっかけに仕事を休みがちになった。朝になるとベッドが落屑(皮膚の掻き屑)だらけになるようになった。ベッドの下にもすごい量の落屑が散らばっている。仕事に行く前にそれを掃除しなければならなくなった。ストレスしかない。とにかく汚ない。自分が汚ないもののように思えた。

このストレスが引き金になって、仕事に行くのもストレスになってきた。仕事に行きたくない。痛いし痒いし、その辛さを背負って仕事に行くことじたいがストレスになった。当然、職場の人にも職場の責任者にも、その辛さは解ってもらえなかった。

仕事に行く時も、仕事を終わった後も、精神を病み、絶望を感じるようになった。私の中には既に仕事を続ける意欲はなくなり、辞めたい気持ちのほうがどんどん強くなっていた。