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ギリシャのイースター

今年も無事にイースター(復活祭)を終え、やれやれとひと息ついているところです。
私のうちは典型的なギリシャ人家庭のイースターを過ごすというわけではないのですが、記録としてちょっと書いておこうと思います。


ギリシャのイースターの祝い方

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アテネ、プラカ地区のレストランにて。子羊の丸焼きとココレッチ


まずはイースターとは何ぞや?ってとこからですが、日本でも知名度がかなり上がってきているようなので、キリストの復活を祝う行事だというのは皆さんご存知でしょう。イースターは毎年日付けが変わる移動祝日で、西方教会と東方教会では数え方が違うので違う日にお祝いします。今年、2021年の東方教会のイースターは5月2日でした。ちなみにギリシャ語ではイースターはパスハと呼ばれます。


こちらの記事でもちょっと触れましたが、イースターというのはギリシャではクリスマスよりも盛大に祝う一大イベントなので、それに向けた準備も大変です。敬虔な信者の方はイースターの前の長い期間節制生活を送ります。
そして、いよいよカウントダウンが始まるのが聖週間。イースターを前にした週のことで、さまざまな準備をしたり、教会のミサへ行く人も多いです。特に主婦はやることが多くて、家を綺麗に掃除したり、お菓子をいっぱい作ったりします。

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イースターのお菓子とイースターエッグ


お菓子などは聖木曜日に作るのが伝統で、この日は茹で卵を染めてイースターエッグを作り、クルラキァ(ビスケット)やチュレキ(菓子パン)を大量に焼きます。イースターエッグはいろんな色のが売っていますが、ギリシャの伝統的なイースターエッグは赤く染めたもの。専用の染料がスーパーなどで売られているので、それを使って自作するか、もしくはすでに染めてあるものを買います。私は玉ねぎの皮をいっぱい集めておいて、それと一緒に卵を煮て作ることが多いです。この時、卵にハーブなどの葉っぱをあててストッキングかガーゼでぴっちり包んでおくと模様つきのができます(上の写真、真ん中のもの)。

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どこの教会も多くの人が集まる

教会へは普段行かないような人でも、キリストを弔う聖金曜日の儀式や、復活を祝う聖土曜日の儀式は参加したりします。特に聖土曜日の深夜のミサは、どこの教会もかなりの人出となります。

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ろうそくの炎は消えないように大事に持ち帰る

真夜中になってキリストの復活を祝うとともに、はるばるエルサレムから空輸された聖なる炎を各自持参したろうそくに灯して持ち帰ります。

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マギリッツァ


持ち帰った炎で家に祝福を与えたあと、マギリッツァという羊の臓物スープを食べて断食を破ります。また、この食事やイースターサンデーの食事の時にはイースターエッグをぶつけ合うゲームのようなことをします。割れずに勝ち残った卵がラッキー。

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丸焼きを切り分けているところ。パリッと焼けた皮が美味しい


明けてイースターサンデーは、朝から炭火を起こし肉を焼き始めます。ギリシャでは仔羊や仔山羊を丸焼きにする伝統があり、これを作る場合は時間がかかるので早くから焼き始める必要があるのです。
他にもココレッチ(ラムレバーやハツなどの臓物を腸でぐるぐる巻きにしたもの)、コンドスブリ(大ぶりに切った肉を串に刺して焼いたもの)など焼いて肉三昧。ギリシャでは家族や親戚が集まって賑やかに過ごす場合が多いですが、大人数でも食べきれないほどのごちそうが並びます。

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ココレッチに似たガルドゥバ(手前)と、網脂で米やレバーを包んだジゲロサルマデス(奥)

パンデミック下のイースター

まだまだ新型コロナウイルスが猛威を奮っていますが、イースターなどの行事もその影響を受けています。


コロナ禍の2020年、教会へ行けなかったのでバルコニーでキリストの復活を祝う人々


去年はロックダウンでひっそりとしたイースターだったように記憶しています。得体の知れないウイルスへの恐怖もかなり強かった頃で、家族であっても別々に住んでる人とは会えずに寂しいイースターでした。教会の儀式も中止で、人々は教会で炎をもらってくる代わりに、各々でろうそくを灯してお祝いしました。花火は例年通り打ち上げられたので、ろうそくを手にみんなバルコニーへ出て眺めたのがちょっと懐かしいです。


パンデミック2年目の今年は、長く続いたロックダウンの規制を段階的に緩めているところ。人数制限つきで集まることができたり、教会へも行けるようになったので、割と普通にお祝いできたのではないでしょうか。大きな移動はまだ規制されててできないのですが、うまいこと田舎へ帰省した人もいたようです。


ちょっと面白かったのが、聖土曜日深夜の教会の儀式が前倒しになったこと。外出できる時間が制限されているのでそれにあわせてということなんでしょうけど、いつもより3時間早い夜の9時に「キリストは復活した!」とやるのですから、きっとキリストもびっくりしたことでしょう。
長く続いたロックダウンの鬱憤を晴らすかのように、今年は花火や爆竹も多めだったような?本来の時間である真夜中まで、ずっと音が聞こえていました。

我が家のミニマルイースター

ギリシャの典型的なイースターについて書きましたが、もちろん家庭や地方によって違います。羊や山羊の丸焼きではなくオーブン焼きなど他の料理が伝統というところもあるし、少人数の家庭や肉を食べない人など、当然ながらそれぞれ事情があります。

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イースターエッグをくわえたヘビや籠のような飾りビスケットは一部の島の伝統。シミ島ではアヴゴクーラと呼ばれる

私のうちはそもそも無宗教のようなものだし(家族はみんな幼い頃に洗礼を受けてますが)、親戚と集まったりもしないので、毎年ただそれっぽい料理を食べるだけという感じです。もしかしたら異教徒の私が一番張り切っているかもしれません。なんとなく、行事食は押さえておきたいんですよね。

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イースターのお菓子は卵や乳製品をふんだんに使う


一番手間をかけるのはお菓子部門で、これは毎回大量に作ります。というのも、夫と次女は羊や山羊の肉を好まないし、モツは私以外アウト。なのでみんなが楽しみにしているのはお菓子なんです。

チュレキという甘いパンは、イースター用には赤い卵を埋め込んで飾ったりするのですが、私が作るのは変わりチュレキなので卵の飾りなしで作ることが多いです。ドライサワーチェリーとチョコチップをたっぷり練りこんだチュレキが我が家の伝統。

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シミ島のクルラキァ・ブティレーニャ。これは普段からよく食べられるもの


ビスケットは昔知人のお母さんに教えてもらったスタンダードなイースタービスケット(バターと卵の風味がやさしいクッキーのような感じ)に加え、シミ島のクルラキァ(大きなリング型の甘くないイーストビスケット)も定番化しつつあります。

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ギリシャの基準からすると、かなり控えめな我が家のイースターメニュー


肉料理は毎年違うのを作るのですが、今年は換気扇が壊れているという事情もあり、クレフティコという紙包み焼きにしました。これは去年出版された私の著書でもレシピを紹介しているのですが、ハーブなどでマリネした肉(ラムでも豚でも)に野菜など加えてじっくり焼いたものです。春らしくアーティチョークをごろごろ入れて作ったら、期待どおりのおいしさでした。


本来の予定ではもうひとつ肉料理を作るつもりだったのだけど、材料の豚腸が手に入らず断念。イースター前って割とこういうことが起きるので、準備は早めにするのがベターですね。羊・山羊は一頭もしくは半頭売りとか、モモ肉は頭半分と抱き合わせ販売のみとか、そういうルールの店も多く、私と同じく困ってる人もちらほら見かけました。


こういったドタバタを経て、イースターあんまり好きじゃないな……といつも思うのだけど、それでもやっぱり次回も同じように準備するのでしょう。
Και του χρόνου!(また来年!)

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