見出し画像

星の王子さま ローズとフォックスとプレ新社会人

最近星の王子さまの音声を聴きながら寝ている。
abceedというアプリで聴いているため、音声は英語だ。

初めて星の王子さまを読んだのは、小学5年生~中学生のどこか。
鏡の国のアリスの本を買おうと本屋さんをうろついていたときに、たまたま目に入り、手に取った記憶がある。
立ち読みだったのでざっと目を通した。
誰かが会話しているところを読んだのだが、まともに言葉のキャッチボールができておらず、「大人はこんな本が好きなのか。意味が分からないし、もどかしいし、読んでて気が狂う!!」とすぐに棚に戻した。

その後、高校卒業の直前に図書館で星の王子さまの本を借りて読むと、ローズとフォックスのシーンがとても心に残り、好きな本の仲間入りを果たした。

そして、今や私は来年4月に入社を控えた大学4年生である。
義務教育も終え、好きなように生き、級友はみんな各々の人生を生きている。SNSがあるから近況を把握し合っている友人も多いが、今どのような人生を歩んでいるか全く分からないかつての級友も多い。
時たま疎遠になった友を思い出しては、なんだか切なくなる。
そんな酸いも甘いも経験した今、星の王子さまの音声を聴いて、何が心に響いたのか書き留めたい。

まずはじめに断りを入れておくと、大体のストーリーは把握しているものの、睡眠導入として英語の音声で聴いていたため、解釈違いがあるかもしれない。ご了承いただきたい。
また、前半部分の惑星で出会う人々のエピソードが有名かもしれないが、私はやはりローズとフォックスのエピソードが響いた。

王子さまは1本のローズを大切にし、ローズのわがままにも答えていた。
そして、ローズと3つの火山を所有していることを誇りに思っている。
ローズは王子さまに「私は唯一無二の存在よ。」と常々言っており、王子さまはそれを信じ、特別なローズを所有している自分はリッチであると思っていたのだ。

しかし地球に降り立った王子は、5000本のローズを見つけてしまうのだ!しかも1つの庭園に!
1つの場所に5000本もあるなら、他にもっともっとローズが存在することを王子さまは悟ってしまったのだ。

カタストロフィだ。
なんて可哀想なんだ。
back numberの「東京の夕焼け」を連想させる。

世界にひとつだけと握りしめたもの
この街ではどこにでも売っていて

https://www.uta-net.com/song/198828/
back number 東京の夕焼け 歌詞 - 歌ネット

まさにこの歌詞と同じ状況だ。
自分しか持っていないもの=宝物と思っていたものが、実はそうでなかった。そしてそれに気づいてしまうことは、どれだけつらいだろうか。
それまで誇りに思っていたはずなのに、そんなかつての自分すら途端に恥ずかしくなってしまうのではないか。
この絶望感を追体験させてくれるこのエピソードは、読むたびに胸がギュっと締め付けられるが、同時に懐かしさもあり、この絶望感を味わった昔の自分のことがなんだが恋しくなる。
しかし、星の王子さまのストーリーとしては、この場面のままではつらいだけだ。続けよう。

そしてその後、王子さまはフォックスに出会う。
一緒に遊ぼうと王子さまは誘うが、簡単に断られてしまう。
なぜなら'tame'ではないからだ。
tameは、飼いならされた(⇔wild)(形)と訳されるが、
フォックスは「tameとは、あまりに多くの人が忘れてしまったことだ。それは、絆を築くということだよ。」と言っている・・・。
沁みる!!

続けてフォックスは「今、僕にとって、君は他の何千人もの男の子のうちの1人に過ぎない。僕は君を必要としていないし、君もそうだろう。なぜなら、君にとっては私も、他の数千もののフォックスと何も変わらないからだ。」と言う。

確かにそうだ。外に出かけ、たくさんの人とすれ違っても、彼らは他人であり、特別な感情にはならない。そういうことか。

そして、フォックスは言う。
「でももし、僕をtameしたら、僕たちはお互いなくてはならない存在になる。僕にとって君は唯一無二の存在になり、この世界の他の誰とも全く異なった、特別な存在になる。そして、僕も君にとって唯一無二の存在になるんだ…!」

なるほど。先ほどの例に重ねて例えると、人混みに紛れていてもかつての級友とすれ違えば、パッと笑顔になり、声をかけ、再会できたことに感動するのではないだろうか。これがtameし合っている関係なのか・・・。

その後のフォックスとのやり取りも非常に胸に響くのだが割愛し、5000本のローズが咲く庭園に王子さまが戻ったところまで話を進めよう。

フォックスとの会話を通して、星の王子さまは気づいたのだ。
目の前に何千本のローズが咲いていようと、彼女(英語版で王子さまは自分のローズのことをshe,herと呼んでいる)と同じローズは1本もないということに。王子さまがお世話をして関係を築いてきたローズと目の前のローズでは全く別物だ。
なぜなら、彼女と王子さまは語り合い、彼女は唯一無二の存在であるから。


星の王子さまというお話は、日々の喧騒の中で忘れていた生きるうえで大切なことを再確認させてくれる。
このローズとの関係性以外にも、フォックスとの関係性や不時着した飛行士とエピソードやヘビによって星に還るエピソードなど切なくも核心を突く話ばかりだ。

コロナ渦で人との関りが希薄になり、少し寂しい、心細い想いをしている方。SNSで毎日どこかの誰かと誰かが誹謗中傷し合っている姿を見て、気疲れしている方。
ぜひ一度、読んでほしい。

ただ、日本語に訳されたものは分かりやすい日本語にしすぎていて、クサいセリフだと感じてしまうかもしれないので、可能であれば英語、もしくは原作のフランス語で書かれたものを読んでほしい。自分なりに訳すことで、さらに星の王子さまの世界観を味わえることだろう。

40度以上を記録した暑すぎる今年の夏は、既にサハラ砂漠に不時着したと言っても過言ではない。
さぁ、星の王子さまに会いに行きましょう。

ではまた。

この記事が参加している募集

#読書感想文

188,357件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?