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トラストソリトュード試し読み

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記事一覧

永遠の記憶 ※グロ注意

12のとき、
死んだツレの肉を喰った。

喰うもんに困ったわけじゃねぇ。
ただ…俺を庇って死んだヤツが、酷く愛おしかった。

死の瞬間は、酷く長かったように感じた。俺は動かないヤツを抱えて逃げた。国境の岩場の塒まで逃げた。

一心地ついてから、ヤツをまじまじと見た。目の前に横たわったそいつは赤黒い血にまみれ、生前の輝きを失った瞳は暗く濁り俺を映さない。移動中の失血で肌の色も人に有らざるものになって

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右手の中に

冬、指先が真っ赤にかじかんで…。

寒さは例外なくそこにも訪れる。
スラム街の奥深く。雪こそめったに降らないものの、割れた窓ガラスから吹き込む風は冷たく、コンクリート打ちっ放しの壁や床はしんしんと冷える。
そんな床に座布団を敷いて、編み物に没頭するリン。

『リン、どうでもいいけどそこに居ると邪魔だよ?歩いてたら蹴っちゃうんだけど。』

リンが座り込んでいるのはキッチン。

『だってランちゃん寒い

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偶然の必然

汚い街角のゴミバケツで寒さをしのいでたオレに差し伸べられたのは、意外な程優しい掌だった。

オレが六つのとき、空っ風を遮るにはうってつけのゴミバケツの底で丸まってた。そん時ゃまだ名前なんかねぇ、ただのイキモノ。しかも汚ぇし臭ぇし痩せっぽちで、役になんざ立たねぇ。同じスラムの連中からも、汚ぇから寄るなだことのクズだグズだことの言われて。
負けじと吠え立てて、牙を剥きながら、どこか寂しかった。

そん

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夜襲

高級住宅街の一角、広大な敷地の隅に佇む三つの影。長身痩躯の男、白く浮かび上がる影、そしてふんわりと鯨骨の傘の浮かぶスカート姿。

『良いな、確認でィ。あの通路に通じる排気孔から入る。俺が超音波放ったらハク、おまィは思い切り吠えろィ。それで人数がだいぶ減らァ。したらコク、おまィは正面入り口に向かって火焔を撒き散らせ、それで一掃だ。息のある奴らァ俺とハクで喰い千切る』

『了解』

『ん、OK』

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